非接触事故でもひき逃げになるか(交通事故、道路交通法違反)
2025年12月12日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、先日、車を運転して左折しようとしたところ、私の後方から路側帯を走っていたバイクが転倒しました。「あっ」と思って曲がったところで停車したのですが、バイクの運転手の人はすぐバイクを引き起こしていたので、大丈夫だろうと考えてそのまま現場を立ち去りました。ところが、翌日に警察から連絡があり、ひき逃げといわれています。接触していないのにひき逃げになるのでしょうか。
A、非接触事故でも、運転行為と怪我との間に相当因果関係があれば過失運転致傷罪は成立しますし、救護・報告義務違反も成立します。ひき逃げとされた場合には、軽傷でも罰金刑や運転免許取消処分が予想されますので、早期に弁護士に相談されることです。
【解説】
交通事故の典型例は、車両が人や他の車両に衝突した事例ですが、接触していないからといって交通事故にならないわけではありません。運転行為と物の損壊や人の死傷の結果に相当因果関係(危険の現実化)があれば、交通事故になります。もっとも、非接触事故については、たとえば車両が歩道上に進入し、歩行者のごく近くに接近したことで、驚愕した歩行者が転倒した事例など、容易に運転行為との因果関係を認められるものもありますが、すべての事故が当然に運転行為との相当因果関係が認められるものではありません。
最判昭和47年5月30日は「ところで、不法行為において、車両の運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係があるとされる場合は、車両が被害者に直接接触したり、または車両が衝突した物体等がさらに被害者に接触したりするときが普通であるが、これに限られるものではなく、このような接触がないときであっても、車両の運行が被害者の予測を裏切るような常軌を逸したものであつて、歩行者がこれによって危難を避けるべき方法を見失い転倒して受傷するなど、衝突にも比すべき事態によって傷害が生じた場合には、その運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係を認めるのが相当である。」と判示しているところです。これは、道路交通法72条1項の定める「交通事故(車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊(道路交通法67条2項)」の「交通による」の解釈においてもあてはまる基準とされています(道路交通執務研究会編著『執務資料道路交通法解説(19訂版)』(東京法令出版、2024年1月)778頁)。
本件の場合、仮に、後続車両が車間距離を十分に保持しておらず、あるいは交差点前で本来禁止されている追い越し行為を行おうとして転倒したといった場合は、それは「車両の運行が被害者の予測を裏切るような常軌を逸したもの」で「衝突に比すべき事態」によって事故が生じたとはいえない、と主張する余地があります。
※最判昭和47年5月30日
https://www.courts.go.jp/hanrei/52040/detail2/index.html
【裁判要旨
加害車両の運行が被害者たる歩行者の予測を裏切るような常軌を逸したものであつて、歩行者が、これによつて危難を避けるべき方法を見失い転倒して受傷するなど、衝突にも比すべき事態によつて傷害を受けた場合には、車両が歩行者に接触しなくても、車両の運行と歩行者の受傷との間に相当因果関係があると解すべきである。】
※道路交通法
(危険防止の措置)
第六十七条
2前項に定めるもののほか、警察官は、車両等の運転者が車両等の運転に関しこの法律(第六十四条第一項、第六十五条第一項、第六十六条、第七十一条の四第四項から第七項まで及び第八十五条第五項から第七項(第二号を除く。)までを除く。)若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこの法律の規定に基づく処分に違反し、又は車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊(以下「交通事故」という。)を起こした場合において、当該車両等の運転者に引き続き当該車両等を運転させることができるかどうかを確認するため必要があると認めるときは、当該車両等の運転者に対し、第九十二条第一項の運転免許証又は第百七条の二の国際運転免許証若しくは外国運転免許証の提示を求めることができる。
https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105#Mp-Ch_4-Se_1-At_67


