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薬院法律事務所

刑事弁護

大麻の所持事件、大麻の入手先を黙秘すると保釈が認められないか


2026年01月20日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は、福岡市に住む女性です。先日、夫が大麻を自宅に所持していたということで逮捕されました。国選弁護人では不安だったので、ネットで調べた私選弁護人の依頼をしました。弁護士さんの話では大麻の入手先について黙秘しているそうです。接見禁止ということで面会ができていないので詳細はわかりませんが、おそらく友人からもらったのだと思います。弁護士さんは、準抗告ということで裁判所に釈放を求めているということですが認められず、このままではずっと警察署に捕まったままになるのではないかと不安です。弁護士さんに訊いても「やってみないと分かりません」としか説明してくれません。

A、一般論として、違法薬物の入手先を黙秘しているということは捜査段階での勾留理由として認められやすいです。もっとも、起訴後の保釈請求については、単純な所持事件であり、前科がなく、本人も違法薬物を所持していたことを認めているのであれば、違法薬物の入手先を黙秘していても保釈が認められる可能性は高いでしょう。

 

【解説】

 

捜査段階において、勾留理由とされやすいものとして「被告人(被疑者)が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」というものがあります(刑事訴訟法60条1項2号)。覚醒剤自己使用事件が典型例ですが、違法薬物の入手先を黙秘しているといったことは、「重要な情状事実」について罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとして勾留されることが多いです。

もっとも、起訴後の段階においては、既に十分な証拠が集められているということから、特に初犯の場合は、入手先を黙秘していても保釈請求が認められるということはしばしばあります。設例は大麻の所持事案ですが、営利目的が疑われるような大量の大麻を所持していたとか、大麻であることの認識を否認しているといった事情がなければ、保釈が認められることは多いでしょう。

 

※刑事訴訟法

第六十条 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まつた住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える拘禁刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の拘禁刑に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131#Mp-Pa_1-Ch_8-At_89

 

【参考文献】

 

田中康郎監修『令状実務詳解〔補訂版〕』(立花書房,2023年4月)464-465頁

高橋康明「「罪証隠滅のおそれ」という概念の異同及びその具体的な判断方法」

【被疑者勾留の段階と起訴された後の段階について比較すると、例えば、覚醒剤の自己使用の事案で、被疑者が覚醒剤の入手先を秘匿していたり、あるいは供述していたとしても、その供述が曖昧であったり不自然であったりする場合には、こうした覚醒剤の人手先に関する事情は、いわゆる情状に関する事実に当たり、罪証隠滅のおそれがあると認められて勾留されたとしても(注4) 、罪体の立証に必要な証拠が収集されて捜査が終了し起訴された以降だと、これが末端使用者として起訴されたものであり、使用の犯行自体認めており、かつ、初犯であるような場合には、覚醒剤の入手先が明らかになっていなくとも、通常は、最終的な量刑判断にさほど影響はない。そのため、この点について被告人が秘匿するなどしていても、保釈請求がなされた際には、第1回公判期日の前であっても、罪証隠滅のおそれなし、あるいは、罪証隠滅のおそれはあるがその程度は低く裁量保釈相当と判断されて、保釈が許可されることは少なくない。】

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