load

薬院法律事務所

刑事弁護

自転車の酒気帯び運転で警察から検挙された場合の対応


2026年06月14日刑事弁護

令和6年11月1日から、道路交通法の改正により、自転車の酒気帯び運転にも罰則が設けられました。

「自転車だから大丈夫だと思っていた」
「車ではなく自転車で帰っただけなのに、警察に検挙された」
「事故も起こしていないのに、前科がつくのか」

このような相談が増えています。

結論からいえば、自転車の酒気帯び運転は、現在では刑事事件です。前科前歴がなく、事故を起こしていない場合でも、警察で取調べを受けた後、検察庁から呼出しを受け、略式起訴により罰金となることが少なくありません。

万引きなどの事件では、初犯で被害弁償や示談ができれば不起訴となることもよくあります。しかし、自転車の酒気帯び運転については、事故を起こしていなくても、いきなり罰金となる運用が多く見られます。

この記事では、自転車の酒気帯び運転で検挙された場合の流れ、罰金・前科の問題、不起訴を求める場合の考え方について説明します。

 

自転車の酒気帯び運転とは

 

道路交通法上、自転車は「軽車両」です。つまり、自転車は歩行者ではなく、道路交通法上は車両の一種として扱われます。

酒気帯び運転とは、身体に一定量以上のアルコールを保有した状態で車両を運転することです。一般的には、呼気1リットル中0.15ミリグラム以上のアルコールが検出された場合に、酒気帯び運転として問題になります。

自転車についても、以前から飲酒運転自体は禁止されていました。ただし、改正前は、処罰対象となるのは主に「酒酔い運転」、つまりアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態での運転でした。

現在は、自転車の酒気帯び運転自体が罰則の対象となっています。

自転車の酒気帯び運転の法定刑は、3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。自転車の提供者、酒類の提供者、同乗者についても、一定の場合には罰則の対象になります。

検挙された後の一般的な流れ

前科前歴がなく、事故を起こしておらず、事実関係にも争いがない場合、警察での取調べは、検挙された当日に一通り終わることが多いです。

その場又は警察署で、飲酒量、飲酒場所、飲酒後に自転車に乗った経緯、走行距離、呼気検査の結果、認否などを確認されます。その後、供述調書が作成されることがあります。

その後、すぐに何も連絡がないこともありますが、それで事件が終わったわけではありません。

多くの場合、1か月前後して、検察庁から呼出しの手紙が届きます。検察庁で検察官から事情を聞かれ、事実関係に争いがなければ、略式手続に同意するかどうかを確認されることがあります。

略式手続に同意し、検察官が略式起訴をすると、裁判所が書面審理で略式命令を出します。その後、罰金の納付書が届き、罰金を納付することで刑事手続は終了します。

初犯で事故がない事案では、罰金額は10万円から20万円程度となることが多い印象です。ただし、アルコール濃度、運転態様、事故や危険発生の有無、前科前歴、地域の運用などによって変わります。

 

略式罰金でも前科になります

 

「罰金を払えば終わり」と考える方もいます。

確かに、略式手続は、正式な公開法廷を開かずに事件を終わらせる手続です。出廷の負担は小さく、手続も比較的簡単です。

しかし、略式命令による罰金も刑罰です。罰金刑が確定すれば、いわゆる前科になります。

自転車の酒気帯び運転で特に注意すべきなのは、本人が「自転車だから軽い違反」と考えている一方で、法的には刑事事件として処理されるという点です。

会社員、公務員、教員、医療職、士業、運転を仕事にしている人などは、罰金前科が勤務先、資格、懲戒処分、信用に影響し得ます。検察庁で略式手続への同意を求められた場合、「早く終わらせたい」という気持ちだけで署名する前に、前科となることの意味を確認する必要があります。

自転車酒気帯び運転では不起訴は期待しにくい

刑事事件では、犯罪の成立が認められる場合でも、検察官が起訴猶予として不起訴にすることがあります。

たとえば、万引き事件では、初犯で被害額が小さく、被害弁償や示談ができ、本人が反省して再発防止策を取っている場合、不起訴となることがあります。

しかし、自転車の酒気帯び運転については、万引き事件と同じ感覚で「初犯だから不起訴になるだろう」と考えるのは危険です。

実務上、自転車の酒気帯び運転は、前科前歴がなく、事故を起こしていなくても、略式起訴され、罰金となることが少なくありません。むしろ、自転車酒気帯び運転については、原則として不起訴は簡単ではないと考えておくべきです。

飲酒運転は、事故が起きてからでは遅い類型の犯罪です。自動車より速度や重量が小さいとはいえ、自転車でも歩行者に衝突すれば重大な傷害結果が生じ得ます。その意味で、警察・検察が厳しく対応すること自体には理由があります。

 

それでも「初犯・事故なしでいきなり罰金」には疑問がある

 

もっとも、弁護士の立場から見ると、自転車の酒気帯び運転について、前科前歴がなく、事故もなく、具体的な危険も発生していない事案まで、当然のように略式起訴・罰金とする運用には疑問があります。

国会での議論を見ると、自転車に対する交通反則通告制度、いわゆる青切符制度の導入にあたって、自転車の交通違反について実効性ある責任追及を可能にする必要性が説明されています。また、飲酒運転については、反社会性・危険性が高く、青切符による処理になじまないため、赤切符、つまり刑事手続で扱うという説明もされています。

一方で、警察庁の説明や有識者検討会の議論では、自転車の取締りについて、悪質性・危険性の高い違反を重点的に取り締まるという考え方も示されています。交通事故の原因となるような危険な違反、警察官の警告に従わず違反を継続した場合、通行車両や歩行者に具体的危険を生じさせた場合などが典型例として挙げられています。

そうすると、少なくとも、

前科前歴がない
事故を起こしていない
歩行者や車両に具体的な危険を生じさせていない
警察官の警告を無視して運転を続けた事案ではない
飲酒後に自転車に乗ったことを真摯に反省している
再発防止策が具体的に用意されている

という事案についてまで、機械的に略式起訴して罰金前科を付けることが、立法の趣旨に照らして相当なのかは問題になります。

自転車の酒気帯び運転を処罰対象にした趣旨は、交通事故を防ぐこと、危険な運転を抑止すること、自転車利用者の行動を改善することにあるはずです。

そうであれば、初犯で事故も具体的危険もない事案においては、罰金前科を付けることが本当に必要なのか、厳重注意、再発防止策、家族や職場による監督、飲酒後に自転車を利用しない具体的な仕組みづくりなどによって目的を達成できないのか、検察官に検討を求める余地があります。

特に、万引きのように具体的な被害者がいる事件であっても、初犯で被害回復がされれば不起訴となることがある一方、自転車酒気帯び運転では、事故も被害者もいない事案でいきなり罰金前科となることがあります。

これは、起訴基準として本当に均衡が取れているのかという問題です。

もちろん、「事故を起こしていないから悪くない」という話ではありません。飲酒後に自転車に乗ること自体が危険であり、違法です。

しかし、刑事処分は、行為の危険性、結果の有無、本人の属性、前科前歴、再発可能性、処分によって生じる不利益を踏まえて、個別に判断されるべきものです。初犯・事故なしの事案を一律に罰金前科化するような運用には、なお弁護人として争う余地があります。

 

不起訴を求める場合に必要なこと

 

自転車の酒気帯び運転で不起訴を求める場合、単に「反省しています」と述べるだけでは足りません。

検察官に対しては、具体的な事情を整理して、不起訴が相当であることを意見書で伝える必要があります。

たとえば、次のような事情を検討します。

飲酒量、飲酒から運転までの時間
呼気検査の数値
走行距離、走行場所、時間帯
歩行者や車両への具体的危険の有無
事故の有無
警察官の警告を無視した事情の有無
前科前歴の有無
職業、資格、勤務先への影響
家族の監督体制
今後、飲酒後に自転車を使わないための具体策
自転車を処分する、又は飲酒時に使用できない状態にする措置
タクシー、公共交通機関、徒歩で帰宅するルールの作成

また、そもそも事実関係に争いがある場合もあります。

自転車を押して歩いていただけではないか、実際に運転したといえるのか、呼気検査の手続や数値に問題がないか、道路交通法上の「道路」といえる場所だったのか、警察官の認識に誤りがないかなどは、事案によって確認が必要です。

事実関係に争いがあるのに、よく分からないまま略式手続に同意することは避けるべきです。

 

検察庁から呼出しが来たらどうすべきか

 

検察庁から呼出しの手紙が来た場合、無視してはいけません。

呼出しを無視すると、手続上不利になるだけでなく、場合によっては身柄拘束のリスクが高まることもあります。指定された日時に行けない場合は、事前に検察庁へ連絡し、日程調整をする必要があります。

もっとも、検察庁で略式手続への同意を求められる可能性があるため、呼出しを受けた段階で、弁護士に相談することをお勧めします。

特に、次のような方は、略式起訴に同意する前に相談すべきです。

公務員、教員、医療職、士業である
勤務先に知られることを強く心配している
前科がつくと資格や仕事に影響する
事故はないのに罰金前科となることに納得できない
呼気検査の数値や運転の事実に争いがある
警察で作成された調書の内容に不安がある
不起訴を求める意見書を出したい

検察庁で略式手続に同意した後でも、正式裁判を求める制度はあります。しかし、実際には、略式に同意する前の段階で方針を決める方が重要です。

 

薬院法律事務所でできること

 

薬院法律事務所では、自転車の酒気帯び運転で検挙された方について、事案の内容を確認したうえで、今後の見通しを説明します。

事実関係に争いがない場合でも、前科前歴がないこと、事故がないこと、具体的な危険が生じていないこと、再発防止策が取られていることなどを整理し、検察官に対して不起訴又は寛大な処分を求める意見書を提出することがあります。

また、略式起訴となる可能性が高い事案でも、罰金額、勤務先対応、資格への影響、家族への説明、今後の再発防止策について、事前に整理することができます。

自転車の酒気帯び運転は、「自転車だから軽い」と考えると危険です。現在は、罰金前科が現実に問題となる刑事事件です。

他方で、初犯・事故なし・具体的危険なしの事案まで、当然に罰金前科でよいのかについては、なお検討の余地があります。

警察で検挙された段階、又は検察庁から呼出しが来た段階で、早めにご相談ください。

 

自転車の酒気帯び運転(初犯)で不起訴処分を獲得する方法(刑事弁護、道路交通法違反)