取り調べではどういうことが聞かれるのかという相談(盗撮、万引き、交通事故、大麻所持、横領等)
2021年08月15日違法薬物問題
【相談】
Q、私は、盗撮をしてしまい、警察に呼ばれています。警察の取調べは初めてでどんなことを訊かれるのか不安です。近くの弁護士事務所に相談にいったら「事件のことを訊かれるけど、正直に答えればいいし、言いたくないことは黙秘権があるから」といった抽象的なことしかいわれず、不安です。どうすればいいでしょうか。
A、取調べでは、共通して訊かれることと、それぞれの犯罪類型に応じて訊かれることがあります。これらは詳しい弁護士でないとわかっていないことが多いです。詳しい弁護士に再相談すべきと思います。
【解説】
取調べで警察官が訊く内容は、それぞれの犯罪類型について異なります。
とはいえ、共通する部分もありますので、まず確認しておくべきことは犯罪捜査規範です。
犯罪捜査規範
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332M50400000002
(供述調書)
第百七十七条 取調べを行つたときは、特に必要がないと認められる場合を除き、被疑者供述調書又は参考人供述調書を作成しなければならない。
2 被疑者その他の関係者が、手記、上申書、始末書等の書面を提出した場合においても、必要があると認めるときは、被疑者供述調書又は参考人供述調書を作成しなければならない。
(供述調書の記載事項)
第百七十八条 被疑者供述調書には、おおむね次の事項を明らかにしておかなければならない。
一 本籍、住居、職業、氏名、生年月日、年齢及び出生地(被疑者が法人であるときは名称又は商号、主たる事務所又は本店の所在地並びに代表者の氏名及び住居、被疑者が法人でない団体であるときは名称、主たる事務所の所在地並びに代表者、管理人又は主幹者の氏名及び住居)
二 旧氏名、変名、偽名、通称及びあだ名
三 位記、勲章、褒賞、記章、恩給又は年金の有無(もしあるときは、その種類及び等級)
四 前科の有無(もしあるときは、その罪名、刑名、刑期、罰金又は科料の金額、刑の執行猶予の言渡し及び保護観察に付されたことの有無、犯罪事実の概要並びに裁判をした裁判所の名称及びその年月日)
五 刑の執行停止、仮釈放、仮出所、恩赦による刑の減免又は刑の消滅の有無
六 起訴猶予又は微罪処分の有無(もしあるときは、犯罪事実の概要、処分をした庁名及び処分年月日)
七 保護処分を受けたことの有無(もしあるときは、その処分の内容、処分をした庁名及び処分年月日)
八 現に他の警察署その他の捜査機関において捜査中の事件の有無(もしあるときは、その罪名、犯罪事実の概要及び当該捜査機関の名称)
九 現に裁判所に係属中の事件の有無(もしあるときは、その罪名、犯罪事実の概要、起訴の年月日及び当該裁判所の名称)
十 学歴、経歴、資産、家族、生活状態及び交友関係
十一 被害者との親族又は同居関係の有無(もし親族関係のあるときは、その続柄)
十二 犯罪の年月日時、場所、方法、動機又は原因並びに犯行の状況、被害の状況及び犯罪後の行動
十三 盗品等に関する罪の被疑者については、本犯と親族又は同居の関係の有無(もし親族関係があるときは、その続柄)
十四 犯行後、国外にいた場合には、その始期及び終期
十五 未成年者、成年被後見人又は被保佐人であるときは、その法定代理人又は保佐人の氏名及び住居(法定代理人又は保佐人が法人であるときは名称又は商号、主たる事務所又は本店の所在地並びに代表者の氏名及び住居)
2 参考人供述調書については、捜査上必要な事項を明らかにするとともに、被疑者との関係をも記載しておかなければならない。
3 刑訴法第六十条の勾留の原因たるべき事項又は同法第八十九条に規定する保釈に関し除外理由たるべき事項があるときは、被疑者供述調書又は参考人供述調書に、その状況を明らかにしておかなければならない。
(供述調書作成についての注意)
第百七十九条 供述調書を作成するに当たつては、次に掲げる事項に注意しなければならない。
一 形式に流れることなく、推測又は誇張を排除し、不必要な重複又は冗長な記載は避け、分かりやすい表現を用いること。
二 犯意、着手の方法、実行行為の態様、未遂既遂の別、共謀の事実等犯罪構成に関する事項については、特に明確に記載するとともに、事件の性質に応じて必要と認められる場合には、主題ごと又は場面ごとの供述調書を作成するなどの工夫を行うこと。
三 必要があるときは、問答の形式をとり、又は供述者の供述する際の態度を記入し、供述の内容のみならず供述したときの状況をも明らかにすること。
四 供述者が略語、方言、隠語等を用いた場合において、供述の真実性を確保するために必要があるときは、これをそのまま記載し、適当な注を付しておく等の方法を講ずること。
2 供述を録取したときは、これを供述者に閲覧させ、又は供述者が明らかにこれを聞き取り得るように読み聞かせるとともに、供述者に対して増減変更を申し立てる機会を十分に与えなければならない。
3 被疑者の供述について前項の規定による措置を講ずる場合において、被疑者が調書(司法警察職員捜査書類基本書式例による調書に限る。以下この項において同じ。)の毎葉の記載内容を確認したときは、それを証するため調書毎葉の欄外に署名又は押印を求めるものとする。
これらは、共通して訊かれることです。
それ以外の内容については犯罪ごとに異なります。供述調書の例を見ると色々とイメージがつかめます。現在市販されているものもありますのでご紹介しますが、警察官専売書籍が多く、そちらにしか掲載されていない類型もあります。詳しい弁護士でないとわからない分野ですので、詳しい弁護士にご相談されてください。
〔改訂版〕供述調書作成の実務 刑法犯
http://net-kindai.com/index16.html
交通事故・事件,交通違反供述調書記載例集 検察官から見た交通捜査の要点解説 第6版
https://ssl.tachibanashobo.co.jp/products/detail.php?product_id=3702
【参考文献】
私が、現在(2024/9/21)所持している、供述調書作成に関する文献の一部を紹介します。
私は、これらを参考に取調のシミュレーションを行っています。★印は特に参考にしている文献です。
★地域・刑事実務研究会編『供述調書作成実務必携〔第2版〕』(立花書房,2021年2月)
★捜査研究会編『必携取調べチャートー刑法・特別刑法一【第2版】』(東京法令出版.2017年9月)
★江崎澄孝ほか『取調べ・職質・相談業務に使えるヒント集 人のウソを見抜く。人の話を傾聴する。』(東京法令出版,2024年8月)
★山田昌弘『録音録画時代の取調べの技術』(東京法令出版,2021年9月)
★小黒和明ほか『-改訂版-供述調書作成の実務 刑法犯』(実務法規,2020年2月)
★神奈川県警察本部刑事部刑事総務課編『3訂版 供述調書~基本的な作成要領~』(東京法令出版,2008年4月)
司法研修所検察教官室『捜査書類全集第四巻〔取調べ〕』(立花書房,1990年8月)
法務省刑事局法令研究会編著『証拠収集の実際-全訂 証拠の集め方・考え方-』(東京法令出版,1997年11月)
捜査実務研究会編『供述調書プロフェッショナルガイド』(東京法令出版,2000年8月)
栗田啓二『新訂版捜査書類作成の基礎1供述調書編』(東京法令出版,2001年3月)
捜査実務研究会編『新版 供述調書記載要領』(立花書房,2001年10月)
田中豊『新供述調書の書き方-刑法犯-』(日世社,2003年2月)
小黒和明ほか『供述調書作成の実務 刑法犯』(近代警察社,2003年6月)
捜査実務研究会編『供述調書プロフェッショナルガイド[特別刑法編]』(東京法令出版,2004年7月)
森山栄一ほか『供述調書作成の実務 特別法犯Ⅱ-改訂版-』(近代警察社,2005年11月)
梶木壽ほか編著『新捜査書類全集 第4巻 取調べ』(立花書房,2006年2月)
森山英一ほか『供述調書作成の実務 特別刑法Ⅰ-改訂版-』(近代警察社,2006年7月)
宮田正之編著『新供述調書記載要領』(立花書房,2010年1月)
水野谷幸夫・城祐一郎『Q&A 実例取調の実際』(立花書房,2011年3月)
宮田正之編著『供述調書記載例集』(立花書房,2011年12月)
城祐一郎『取調べハンドブック』(立花書房,2019年2月)
※参考記事