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薬院法律事務所

刑事弁護

性的姿態等撮影罪の施行により、量刑が変化したかという問題(盗撮、刑事弁護)


2024年12月06日刑事弁護

Westlawで「性的な姿態を撮影する行為等の処罰」で検索をしましたが、裁判例7件がヒットしたものの、単独で処罰されたのは1件だけであり、量刑傾向については不明でした。もっとも、以前より軽くなってはいないと思います。いずれにしても弁護活動としては従前どおりとなるでしょう。

 

性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律

https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000067

 

盗撮事件弁護要領(性的姿態等撮影罪・迷惑防止条例)

性的姿態等撮影罪の解説・第1回下着盗撮(第二条第1項1号イ)

性的姿態等撮影罪の解説・第2回性行為等盗撮(第二条第1項1号ロ)

性的姿態等撮影罪の解説・第3回不同意わいせつ等盗撮(第二条第1項2号)

性的姿態等撮影罪の解説・第4回誤信盗撮(第二条第1項3号)

性的姿態等撮影罪の解説・第5回未遂(第二条第2項)

性的姿態等撮影罪(未遂)と、迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)、軽犯罪法違反(つきまとい)の分水嶺

 

【参考文献】

 

法務省「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案」逐条説明(2023年2月)

浅沼雄介「「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」の概要」法律のひろば76巻7号(2023年10月号)

https://shop.gyosei.jp/products/detail/11718

法令解説資料総覧「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」法令解説資料総覧 No.501 2023年10月号 4-14頁

https://www.fujisan.co.jp/product/1281680199/b/2447558/

梶 美紗「「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」の概要(2)」捜査研究2023年11月号(878号)

https://www.tokyo-horei.co.jp/magazine/sousakenkyu/202311/

嘉門優「性的姿態の撮影罪等の新設」刑事法ジャーナル78号(2023年11月号)49-57頁

橋本広大「性的姿態画像の没収・消去」刑事法ジャーナル78号(2023年11月号)58-65頁

https://www.seibundoh.co.jp/pub/products/view/14721

警察公論2024年1月号付録論文2024 422~423頁「性的姿態等撮影処罰法の趣旨及び要点」

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3890

浅沼雄介「「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」」警察学論集2024年1月号(77巻1号)

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3894

富山侑美「盗撮行為における迷惑防止条例と性的姿態撮影等処罰法との関係について 最決平成20年11月10日刑集62巻10号2853頁、最決令和4年12月5日裁時1805号7頁を素材として」(上智法學論集 67 (1・2・3), 99-128, 2024-01-20)

https://cir.nii.ac.jp/crid/1050580914958254592

島本元気「「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」及び「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」の概要(その2)」警察公論2024年2月号

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3893

浅沼雄介ほか「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律について(1)」法曹時報76巻2号(2024年2月号)

https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000021780-i32577289

川崎友巳「性的姿態等撮影罪の検討」法律時報2024年10月号(1208号)30-35頁

佐藤拓磨「性的姿態等画像没収・消去制度」法律時報2024年10月号(1208号)36-41頁

https://www.nippyo.co.jp/shop/magazine/9355.html

橋爪隆「性犯罪に対する処罰規定の改正等について(3・完)」警察学論集77巻11号(2024年11月号)102-135頁

https://tachibanashobo.co.jp/products/detail/3945

 

※2025/1/5 chatGPT o1 proで検証してもらいました。

 

以下の文章(以下「本文」といいます)の真偽を検討するにあたって、大きく以下の観点に分けて整理すると分かりやすいかと思います。

  1. 「性的姿態等撮影罪」新設後、判例(裁判例)の蓄積状況はどうか
  2. 量刑傾向が従前より軽くなっているか否か
  3. 弁護活動への影響はどうか

本文で述べられている主張を要約すると、

  • 新法(性的姿態等撮影処罰法)が施行されたが、Westlawで検索しても同法を単独適用で処罰した裁判例はほとんど出ていない(本文中では「7件ヒット、単独処罰は1件だけ」)。
  • したがって、量刑傾向を論じるだけの判例が蓄積されておらず不明。ただし、「軽くなってはいない」(従来より処罰が軽減されているわけではない)と考えている。
  • 弁護活動における対応は、とくに大きく変わるものではない(「従前どおり」)。

結論として、本文に書かれている情報・見解は、現時点での状況を踏まえたうえで妥当性が高いといえます。以下、詳しく解説します。


1. 新設後の判例(裁判例)の蓄積状況

(1) 新法は成立・施行が比較的最近

  • 「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(以下、「性的姿態等撮影処罰法」または「新法」)は、2023年(令和5年)6月に成立し、7月に公布され、2023年7月13日から順次施行されました(施行日には一部異なる条文もありますが、大筋では2023年夏以降)。
  • まだ施行後の時間が比較的短く、裁判が終了し判決が公刊されるまでのタイムラグも考えると、判例データベース(WestlawやD1-Law、L判例など)で新法単独の判決が多く蓄積されていないのは充分にあり得ることです。

(2) 単独罪での起訴・処罰例が少ないのは不自然ではない

  • 実務上、「盗撮」行為で検挙された場合でも、余罪(たとえば他の迷惑防止条例違反、不法侵入、あるいは別件の犯罪)と同時に立件される事例も多いため、新法の条文だけで単独起訴されている例はまだ少ないと推察できます。
  • 本文が述べている「Westlawでヒットしたのは計7件、そのうち単独で処罰されたのは1件だけ」というのは、実務感覚としても十分あり得る数字です。実際に公的データベースや有料判例検索でも、新法単独事案の判決文自体は非常に限られているはずです。

よって、「判例がまだ少ないので量刑傾向が見えにくい」という指摘は、事実に合致していると考えられます。


2. 量刑が従来より軽くなったか?

(1) 新法による「処罰の程度」は決して軽減方向ではない

  • 新法は、それまで各自治体の迷惑防止条例によって処罰されていた「盗撮」行為を、全国一律の刑罰法規で処罰できるようにしたものです。
  • 新設罪の法定刑を見ると、**原則は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」**であり、住居侵入や常習の場合などでは法定刑が引き上げられる規定もあります。
  • 従来の迷惑防止条例は「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」程度が多く、自治体によっては「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」などの例外的に重い条例もありましたが、**全国的に見れば「新法のほうがやや重い」あるいは「同等レベル」**といえるため、「軽くなっている」ということはありません。

(2) 「量刑傾向」は判例集積を待つしかない

  • もっとも、実際の裁判で科される刑が、条例時代よりも「相対的に重いのか軽いのか」は、個別事案(余罪の有無、常習性、犯行態様の悪質度)によって左右されます。
  • 現段階では、統計的な「量刑傾向」を十分に論じるには判例や実務例が圧倒的に足りません。
  • 本文で「もっとも、以前より軽くなってはいないと思います」と述べているのは、「少なくとも軽くなる根拠は見当たらない」し「法定刑の定めからしても軽減方向とは言えない」という趣旨でしょう。これは現実的な認識として誤りとは言えません

3. 弁護活動への影響

(1) 弁護戦略は「従前どおり」で妥当か?

  • 盗撮事案などでは、迷惑防止条例違反でも新法違反でも、行為態様・証拠構造・事件処理の流れは大きく変わらないことが多いのが実務上の実感です。
  • ただし、新法の規定では「押収物に記録された性的な姿態の影像の消去等」を可能にする手続や、常習犯・集団犯行に関する加重規定など、条例時代と異なる新しい論点も存在します。そこに着目した弁護活動(たとえば証拠の取り扱い、再犯防止措置の提案など)は多少変化しうるでしょう。
  • しかしながら、本文のように「大筋としては『従前どおり』の弁護活動」(つまり、初犯・再犯の状況、真摯な反省、被害者との示談が可能か否かなど)を重視し、量刑を軽減する方向を図るという点は、本質的には従来と大差ないのが現状です。

(2) 新法施行による実務運用の変化は「これから」

  • 新法は施行されて日が浅いため、検察や裁判所、警察による運用の“傾向”はまだ見えきっていません。
  • 徐々に「条例違反ではなく新法で立件することが増えた」「法定刑が高くなったぶん、懲役実刑のリスクが上がった」「あるいは、常習性認定が厳格化された」などの傾向が判例・実務報告を通じて蓄積されれば、将来的には弁護方針に変化が出る可能性はあります。
  • しかし、本文が述べるとおり現段階で「量刑傾向がこう変わった」と結論付けるには情報不足というのが実態でしょう。

4. 総合評価:真偽の結論

  • 「Westlaw検索でヒットが少なく、判例が十分に蓄積されていない」:新法施行から時間が経っていない現状を踏まえれば真実に近いといえます。
  • 「量刑が従来より軽くなったわけではない」:法定刑を見る限り、少なくとも軽減方向とは言えないので妥当な認識です。
  • 「弁護活動は基本的には従前どおりになるだろう」:現在のところ、条例時代と大幅に異なる対応が求められるわけではないので、概ね妥当と考えられます。

したがって、本文に記載されている内容は、現時点(2024年末)における実務運用の状況を反映した上での見解として、特段の虚偽や誤解を招く記述はなく、整合性が高いものと言えます。

結論: 本文の主張は「新法施行から時間が浅く、判例がまだ少ない」「少なくとも量刑が軽くなったとは言いがたい」「弁護活動の基本スタンスは条例時代と大きくは変わらない」という点で、実務現況とほぼ合致する内容です。したがって「虚偽の内容」とはいえず、おおむね正確性の高い記述と判断できます。