兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第3条の2(卑わいな行為の禁止)の解説・痴漢・盗撮行為
2025年01月15日刑事弁護
下書きはchatGPTo1 proに作成してもらいました。加筆した部分を赤字にしています。
以下では、兵庫県迷惑行為防止条例 第3条の2(卑わいな行為等の禁止)について、これまでの条例解説スタイルを踏襲しながら詳細かつ分量多めに説明します。本条は、公共空間や半公共的空間、さらには衣服を脱ぐ可能性の高い空間で行われる盗撮・痴漢などの性犯罪的迷惑行為を幅広く取り締まるための中心規定となっています。
1. 第3条の2(卑わいな行為等の禁止)の位置づけと目的
(1) 条例全体における意義
- 兵庫県の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(昭和38年7月5日条例第66号)は、県内での暴力的不良行為や迷惑行為を防止し、県民および滞在者の安全を守ることを目的としています(第1条)。
- その中でも第3条の2は、痴漢・盗撮・卑わいな言動など、いわゆる性犯罪的な迷惑行為を包括的に規制し、被害が広範囲に及びやすい公共空間や半公共空間での安全を確保するために設けられた重要規定です。
(2) 保護法益
- 第3条の2が規制する行為はいずれも被害者に著しい羞恥や不安・嫌悪感をもたらし、プライバシーや身体的自由を深刻に侵害します。
- 公共交通機関や商業施設、浴場、更衣室など人の目が届きにくいシチュエーションで生じる可能性が高いため、条例レベルでの広範な取り締まりが必要とされています。
2. 第3条の2 第1項
(第3条の2 第1項)
「何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
(2) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を撮影する目的で写真機等を設置する行為」
(1) 規制対象となる場所
- 公共の場所: 道路、公園、広場、駅、空港、埠頭、興行場、飲食店など不特定・多数の人が出入り可能な空間。
- 公共の乗物: 汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機など、不特定・多数が利用する乗り物。
(2) 禁止行為
- (1) 卑わいな言動
- 具体的には、公共の場で他人に対し強い嫌悪感・恐怖心を与える猥褻な言語や身振りなどが典型例。
- 性的侮蔑やわいせつ発言、公共の面前での卑猥な行動などが規制対象。
- (2) 正当な理由なく人の下着や身体を撮影する目的で写真機等を「設置」する行為
- いわゆる盗撮準備行為を明確に取り締まる条項。
- カメラを差し向けるのではなく、「設置」する段階で摘発可能とすることで、被害が発生する前に警察が対処できる仕組みを整えています。
(3) 「正当な理由がないのに」
- 医療行為や正当業務に伴う撮影等は除外されるが、痴漢・盗撮を目的とする行為は「正当な理由」には当たらない。
- 事実上ほぼすべての盗撮や卑わい言動が対象になると考えられます。
(4) 典型事例
- 公共交通機関や商業施設で他人に卑猥な言葉・ジェスチャーを発し、著しい羞恥や嫌悪感を与える
- 公共のトイレや駅構内などで小型カメラを設置し、のぞき・盗撮しようとする
3. 第3条の2 第2項
(第3条の2 第2項)
「何人も、集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所(公共の場所を除く。)又は乗物(公共の乗物を除く。)において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 正当な理由がないのに、人の通常衣服で隠されている身体又は下着を写真機等を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向ける行為
(2) 前項第2号に掲げる行為」
(1) 規制対象となる場所・乗物
- 公共の場所や公共の乗物を除くが、「集会所、事業所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用するような場所又は乗物」が対象。
- すなわち、半公共的空間・乗物における盗撮行為を取り締まる条項。
- 例:会社のオフィスや学校の教室、貸切バスやタクシーなど。
(2) 禁止行為
- (1) 正当な理由なく人の下着や身体を写真機等で撮影、またはその目的でカメラ等を向ける行為
- いわゆる盗撮や盗撮準備行為。
- 公共空間だけでなく、職場や学校、タクシーなど「特定or多数の者が利用する場」でも盗撮が起こりうるため、条例が明示的に規制。
- (2) 第1項第2号に掲げる行為
- 上述の「人の下着等を撮影する目的で写真機等を設置する行為」を、この2項の対象空間にも及ぼす。
- これにより、カメラを“設置”する準備行為も禁止される。
(3) 典型事例
- 会社オフィスや学校の教室で同僚や生徒のスカート内を盗撮しようとスマホを向ける
- タクシー車内に隠しカメラを設置し、乗客の撮影を狙う
4. 第3条の2 第3項
(第3条の2 第3項)
「何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。」
(1) 衣服を脱ぐ可能性の高い場所
- 浴場、更衣室、便所など、人が裸や半裸になる可能性が高い空間での撮影行為を厳しく禁止。
- これらの空間はプライバシー度合いが極めて高く、被害者が盗撮された場合のダメージも深刻であるため、条例が特に強く規制しています。
(2) 禁止行為
- **「撮影」**に限らず「撮影目的でカメラを向ける・設置する」行為も対象として、未然に摘発可能。
- 兵庫県の条例の特殊性として「住居」を規制範囲から外していること、「3 何人も、正当な理由がないのに、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。」と衣服を着ている状態の人であっても、撮影行為や、撮影準備行為を規制していることがあります。例えば、トイレ掃除をしている人を撮影した場合でも、「正当な理由」がなければ迷惑行為防止条例違反に該当します。もっとも、この場合に処罰することができるかどうかは重大な論点になるでしょう。なお、神奈川県では「見る」行為まで規制しています。
- 兵庫県警察本部生活安全部「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の解説(全115頁)」(2016年9月)32頁
- 【7 「にいる人」とは、人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を指し、
○トイレの個室に立ち入り清掃している女性
〇住居の風呂掃除をしている男性
を盗撮する、盗撮目的で写真機等を向ける、又は盗撮目的で写真機等を設置する場合であっても、当該場所が「人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような状態」になっ
ていれば、本項違反が成立する。
これは、当該行為が、衣服の全部又は一部を着けないでいる者の姿態を撮影しようとするといった明らかに法益侵害の著しい行為であり、当該場所を利用する者の具体的危険を防止し行動意思の自由を保護する必要があることから、衣服を脱いでいない者が在していた場合であっても規制するものである。】 - 浴場でののぞきや隠しカメラ設置などが典型例。
- 上記のchatGPTの解説は誤りで、「のぞき」行為については兵庫県は意図的に規制対象から外しています。住居など私的空間での「のぞき見」を条例で規制できるかは一つの論点です。
- 兵庫県警察本部?「平成28年1月l3日(水)神戸地方検察庁改正迷防条例協議(全2頁)」(2016年1月13日)
- 【地検:神戸地方検察庁総務部青野仁検事
警察:(略)
[神戸地方検察庁意見概要】
〇改正条例中
第3条の2第3項
何人も、正当な理由がないのに、浴湯、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人の姿態を見、写真機等を用いて撮影し、撮影する目的で写真機等を向け、又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。
0「人の姿態を見る」規制は、軽犯罪法第1条第23号の「のぞき見」と重複している。この重複は、法で規定される刑罰に対して、条例で上乗せの刑罰となっており、当該上乗せに必要性又は合理性は認められない。
従って、神戸地検としては、この重複部分について削除する若しくはこの改正条項について公衆の場所に限定するなどの修正を図られたい。
[地検修正案]
A案「姿態を見、」をトル。
B案規制する湯所を、公衆の場所等に変更(限定)する。ただし、今回の改正の趣旨とそぐわない案であるとは理解している。
[結論]
検察庁の修正案に対して、人の姿態を見る上乗せの合理性を疎明する立法事実に乏しい。従って、A案が妥当と解される。】
(3) 典型事例
- 温泉・銭湯での脱衣所や浴室に隠しカメラを置き、撮影する
- 更衣室やトイレの上からスマホを差し込み、録画しようとする
5. 全体的な特徴
- **公共空間(第1項)だけでなく、半公共的空間(第2項)や衣服を脱ぐ私的空間(第3項)**における卑猥行為を多面的に規制。
- **のぞき見・盗撮・撮影準備行為(カメラを向ける・設置)**を網羅的に取り締まり、被害が発生する前の段階で警察が介入できる。
- 下着や身体の盗撮のみならず、卑わいな言動(言葉による性的侮辱・嫌悪を与える発言など)も禁止。
- 近年増えている半公共空間(オフィス、学校、タクシー等)での盗撮や、透かし撮りを想定した条項も含まれ、技術進歩に対応。
6. 罰則
- 本条に違反した場合の罰則は主に第15条(6月以下の懲役又は50万円以下の罰金、常習なら1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)に規定。
- 「設置」などの準備行為や、複数回にわたる常習的盗撮・痴漢行為などの場合、刑事処分が科されるため、条例違反でも前科が付く可能性があります。
7. まとめ
- 兵庫県迷惑行為防止条例 第3条の2は、性犯罪的要素を有する迷惑行為(痴漢・盗撮・卑わいな言動)を広範囲に規制する中核条文。
- 第1項では、公共の場所・乗物における「卑わいな言動」や「盗撮準備行為」を、
第2項では、集会所・事業所・タクシー等(公共空間以外で不特定又は多数が利用する空間・乗物)における「盗撮・準備行為」を、
第3項では「浴場・更衣室・便所」等、衣服を脱ぐ場所での撮影をそれぞれ規制し、さまざまなシチュエーションでの被害を防ぐ。 - 撮影行為だけでなく、撮影目的のカメラ設置やカメラを向ける準備段階で取り締まれるため、被害拡大を未然に防止する効果が大きい。
- 罰則は最大6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(常習で1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)など比較的厳しく、本条例違反でも前科が付き得る重大性を持つ。
- 国の刑法や「性的姿態等撮影罪」(令和5年施行)などの一般法の補完として、より軽微・未遂段階にも対応できる点に大きな意味がある。
以上のように、第3条の2は公共空間から半公共空間、さらに衣服を脱いだ状態の私的空間に至るまで、幅広い場面での性犯罪的迷惑行為を取り締まり、兵庫県の住民や滞在者の安心安全を確保するために機能しています。
兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
【参考文献】※情報公開で入手した資料は一部マスキング有
兵庫県警察本部生活経済課情報係「検察庁に対する迷惑防止条例改正検討会議の結果について(報告)(全2頁)」(2015年11月19日)
兵庫県警察本部?「平成28年1月13日(水)神戸地方検察庁改正迷防条例協議(全2頁)」(2016年1月13日)
兵庫県警察本部?「平成28年1月14日(木)兵庫県文書課改正迷惑防止条例協議(全1頁)」(2016年1月14日)
執筆者不明「迷防条例改正における検察庁協議について(個人メモ)(全2頁)」(2016年1月22日)
兵庫県警察本部生活安全特別捜査隊「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例のQ&A(卑わいな行為)(全24頁)」(2016年6月)
兵庫県警察本部生活安全特別捜査隊「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(卑わいな行為)逐条解説 犯罪事実記載例(全12頁)」(2016年6月)
兵庫県警察本部生活安全部「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の解説(全115頁)」(2016年9月)