合法なCBD製品を購入したら、法改正で規制対象品になっていたという相談
2026年06月15日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、私は30代の会社員です。
数年前から、リラックス目的でCBDオイルやCBDリキッドを購入していました。購入した当時は、販売店のホームページにも「合法」「THCフリー」「国内基準適合」などと書かれていましたし、違法な薬物を買っているという認識はまったくありませんでした。
ところが、最近になって、CBD製品に関する法律が変わり、製品中のTHCの残留限度値を超えるものや、CBNを含む製品が規制対象になるという話を知りました。
自宅に以前購入したCBD製品が残っていたので不安になっていたところ、警察から連絡がありました。販売店の関係で購入者として名前が出てきたようで、「あなたが持っている製品が規制対象になっている可能性がある」と言われました。
私は、違法なものだと知って買ったわけではありません。購入時は合法だと思っていましたし、法改正で規制対象になっていたことも知りませんでした。
このような場合でも、麻薬や指定薬物の所持として処罰されるのでしょうか。警察にはどう対応すればよいでしょうか。
A、まず、現在手元にある製品を使用したり、他人に譲ったり、販売店に送り返したり、勝手に処分したりすることは避けてください。
CBD製品については、近時、法規制が大きく変化しています。CBDそのものが直ちに違法というわけではありませんが、製品中に残留するΔ9-THCが一定の限度値を超える場合には、麻薬に該当する可能性があります。また、CBNを含有する製品についても、指定薬物として規制対象となりました。
そのため、「購入した当時は合法だった」「販売店が合法と言っていた」という事情があっても、現在の所持がまったく問題にならないとは限りません。
もっとも、刑事事件として処罰されるためには、規制対象となる薬物を所持していたことについての故意が問題になります。
この種の事案では、
・購入時期
・購入当時の販売ページの表示
・成分表示
・検査証明書の有無
・販売店からの説明
・法改正を知っていたか
・規制対象になったことを知った後の対応
・使用、譲渡、販売、隠匿の有無
・自発的に警察や関係機関に相談・提出したか
といった事情が重要になります。
過去にも、購入時には合法なリラックス商品として入手したものが、本人の知らないうちに規制対象となり、警察の取調べや書類送検を受けたものの、不起訴処分(起訴猶予)となった事案があります。その事案では、最初の警察対応から弁護士の助言を受け、自発的に警察へ提出し、一貫して「違法なものと知って所持していたわけではない」と主張したことが、最終的な処分に影響したと考えられます。
本件でも、単に「知らなかった」と言うだけでは足りません。購入時から現在までの事情を客観的資料で整理し、違法なものを所持している認識がなかったこと、規制対象と知ってからは使用・譲渡・隠匿をしていないことを、警察や検察に対して適切に説明する必要があります。
警察から連絡が来た段階で、できるだけ早く違法薬物事件に詳しい弁護士に相談してください。
【解説】
1 CBD製品は「CBDだから常に合法」というわけではありません
CBD、すなわちカンナビジオール自体は、一般に、いわゆる陶酔作用をもたらすTHCとは異なる成分として説明されています。
しかし、CBD製品として販売されているオイル、リキッド、ワックス、グミ、カプセル、食品、電子タバコ用製品などには、製造過程や原料の関係で、微量のTHCその他のカンナビノイド成分が含まれていることがあります。
近時の法改正により、製品中に残留するΔ9-THCについて残留限度値が定められました。この限度値を超えるΔ9-THCを含有する製品は、麻薬に該当する可能性があります。
つまり、問題は「CBDと書いてあるか」ではありません。
実際には、
・どの成分が含まれているか
・Δ9-THCが残留限度値を超えていないか
・CBNなど、指定薬物となった成分を含んでいないか
・製品の形状がオイル、粉末、水溶液、固形物、ワックス、食品などのどれに当たるか
・いつ購入し、いつ所持していたか
が問題になります。
「CBD製品だから大丈夫」と考えるのは危険です。
2 購入時は合法でも、後から違法になることがあります
薬物規制の分野では、ある時点では合法に販売されていた製品が、その後の法改正や指定薬物への指定によって、所持・使用・販売等が禁止されることがあります。
特にカンナビノイド関連製品は、法規制の変化が速い分野です。
購入した当時に販売店が「合法」と説明していたとしても、その後に規制が変われば、現在も同じように所持・使用できるとは限りません。
この点で重要なのは、「購入時に合法だったこと」と「現在の所持が刑事事件として処罰されるか」は、分けて考える必要があるということです。
購入時に合法だったことは、少なくとも、違法薬物を入手する目的で購入したわけではないことを示す重要な事情です。
しかし、規制対象になったことを知った後も使用を続けたり、他人に譲ったり、隠したり、販売店に返送したりすれば、別の問題が生じます。
3 「法律が変わったことを知らなかった」で済むのか
刑事法では、一般に「法律を知らなかった」というだけで当然に処罰を免れるわけではありません。
いわゆる「法律の不知は赦さず」という考え方があります。
そのため、「法改正を知らなかった」という説明だけで、必ず不起訴になる、無罪になる、ということではありません。
もっとも、規制薬物事件では、故意の有無が問題になります。
たとえば、本人が、購入時から一貫して合法なCBD製品だと認識していた、販売店も合法品として販売していた、成分表示や検査証明書からも規制対象成分の含有を認識できなかった、規制対象になったことを知ってからは使用せず、警察や関係機関に相談した、という事情があれば、違法な薬物を所持している認識がなかったという主張には意味があります。
逆に、次のような事情があると不利になります。
・規制対象になったことを知りながら使用を続けた
・警察に見つかる前に隠した
・友人に譲った
・販売店に送り返した
・SNSで販売した
・成分や規制について警告表示を見ていた
・違法性を疑いながら購入、所持、使用していた
・警察に虚偽の説明をした
したがって、この種の事件では、「知らなかった」という一言ではなく、何を、いつ、どこまで認識していたのかを、具体的に整理する必要があります。
4 警察から連絡が来た場合にしてはいけないこと
警察から連絡が来ると、多くの方は慌てます。
しかし、焦って動くと、かえって不利になることがあります。
まず、製品を使用してはいけません。規制対象品であれば、使用自体が別の問題になります。
次に、製品を捨ててはいけません。証拠を隠した、処分したと見られる可能性があります。
また、友人に預けたり、販売店に返送したり、家族に持たせたりすることも避けるべきです。譲渡、譲受、輸送、隠匿などの問題が生じるおそれがあります。
警察に連絡する前に、SNSや販売店のレビュー欄などに不用意な投稿をすることも避けてください。「やばいものを持っていた」「規制されたらしいが使い切る」などの投稿は、後で不利な証拠になる可能性があります。
やるべきことは、まず製品を使用せず、そのまま保管し、購入経緯に関する資料を保存することです。
5 保存しておくべき資料
この種の事件では、客観的資料が非常に重要です。
保存すべき資料としては、次のようなものがあります。
・製品本体
・外箱、ラベル、成分表示
・購入時の領収書
・クレジットカード明細
・注文確認メール
・販売ページのスクリーンショット
・販売店の「合法」「THCフリー」などの説明
・検査証明書、COA
・販売店とのメール、LINE、問い合わせ履歴
・購入日、使用日、保管場所のメモ
・規制対象と知った日付が分かる資料
・警察から連絡があった日時と内容のメモ
特に、販売ページは削除されることがあります。購入当時の表示が残っている場合は、早めにスクリーンショットやPDFで保存してください。
「合法と信じた理由」を後から説明できるかどうかが重要です。
6 自発的に提出する場合も、事前準備が必要です
規制対象になった可能性がある製品を持っている場合、自発的に警察や麻薬取締部に相談・提出することが、事案によっては有利な事情になることがあります。
実際に、過去の解決事例でも、警察対応の初期段階から弁護士の助言を受け、自発的に警察に提出し、その後の取調べでも一貫して違法性の認識を否定したことにより、不起訴処分となったものがあります。
もっとも、自発的提出は、何も考えずに製品を持って警察署へ行けばよいというものではありません。
規制対象品であれば、警察署へ持参する過程の所持や運搬も問題にされる可能性があります。また、提出時の説明内容が不十分だと、「違法なものだと分かっていたから持ってきたのではないか」と誤解されることもあります。
そのため、自発的に提出する場合でも、
・事前に弁護士に相談する
・購入経緯を整理する
・所持していた理由を説明できるようにする
・規制対象と知った後は使用していないことを明確にする
・提出方法について警察や関係機関と調整する
・必要に応じて弁護士から意見書を提出する
といった準備が必要です。
7 取調べで問題になるポイント
警察の取調べでは、主に次のような点が確認されます。
第一に、どこで購入したかです。
国内店舗、インターネット通販、海外サイト、個人間取引、SNS経由など、購入経路が問題になります。海外サイトから個人輸入している場合は、輸入の問題も出てきます。
第二に、購入時に何を認識していたかです。
合法品だと思っていたのか、規制薬物に近いものだと分かっていたのか、販売店の説明をどのように読んだのかが問われます。
第三に、成分について何を知っていたかです。
THCフリーと表示されていたのか、微量THC含有と表示されていたのか、CBN、CBG、HHC系成分などの記載があったのかが重要です。
第四に、法改正や規制対象化をいつ知ったかです。
ニュース、販売店からの連絡、厚生労働省の注意喚起、警察からの連絡など、どの時点で知ったのかが問題になります。
第五に、知った後に何をしたかです。
使用をやめたのか、廃棄したのか、隠したのか、誰かに渡したのか、警察や弁護士に相談したのかが確認されます。
この部分の供述が曖昧になると、故意の有無について不利に扱われる可能性があります。
8 「違法なものと知って所持していたわけではない」という主張
この種の事件で重要なのは、「違法なものと知って所持していたわけではない」という主張です。
ただし、この主張は、単なる言い訳ではなく、客観的事情に裏付けられている必要があります。
たとえば、
・購入当時は販売店が合法品として販売していた
・購入者は一般の会社員であり、薬物常習者ではない
・販売ページにはTHCフリーなどの表示があった
・製品の外観も一般的なCBD製品であった
・規制対象成分の含有を示す表示はなかった
・規制対象になったことを知ってからは使用していない
・警察から連絡が来る前後に、製品を隠したり処分したりしていない
・自発的に提出又は相談している
・営利目的や他人への譲渡がない
・少量であり、自己使用目的の保管にとどまる
といった事情があれば、故意を否定する方向の事情になります。
他方で、規制対象となる可能性を知りながら、「まだ使える」「もったいない」「ばれなければ大丈夫」と考えて使用や保管を続けた場合には、不利になります。
9 不起訴を求めるための弁護活動
弁護士が介入する場合には、まず製品の内容、購入経緯、法改正の時期、規制対象となった時期を確認します。
そのうえで、必要に応じて、警察や検察官に対して意見書を提出します。
意見書では、たとえば次のような事情を整理します。
・購入時には合法品として流通していたこと
・本人が違法薬物として購入したものではないこと
・販売店の表示から規制対象品と認識することが困難だったこと
・規制対象と知った後に使用、譲渡、隠匿をしていないこと
・自発的に相談、提出していること
・本人に薬物乱用歴や同種前科がないこと
・営利目的や拡散目的がないこと
・家族、勤務先、社会生活への影響が大きいこと
・再発防止のため、今後CBD関連製品を購入しないなどの具体策を取っていること
薬物事件では、警察段階での供述調書が極めて重要です。最初の説明が不正確だと、後から修正することが難しくなります。
特に、「違法かもしれないと思ったが持っていた」「規制されたことは知っていたが使わなければ大丈夫だと思った」といった表現は、文脈によっては故意を認めたように扱われる可能性があります。
もちろん、嘘をついてはいけません。しかし、自分の認識を正確に表現することが重要です。
10 薬院法律事務所でできること
薬院法律事務所では、購入時は合法とされていた薬物・リラックス商品・CBD関連製品が、後の法改正や指定薬物化により問題となった事件について、相談を受けています。
この種の事件では、単に薬物事件一般の知識だけでは足りません。
法改正の時期、指定薬物化の時期、製品の成分、販売店の表示、購入者の認識、警察への提出方法、取調べでの説明内容を、細かく検討する必要があります。
過去にも、購入時は合法なリラックス商品として入手したものが、本人の知らないうちに規制対象となり、警察の取調べと書類送検を受けたものの、最終的に不起訴処分となった事案があります。
このような事案では、最初の対応が重要です。
警察から連絡が来た後に慌てて説明するのではなく、製品、購入資料、販売ページ、成分表示、警察からの連絡内容を整理したうえで、取調べに臨む必要があります。
「合法なCBD製品だと思って購入した」
「法改正で規制対象になっていたことを知らなかった」
「警察から連絡が来て不安になっている」
「自宅に製品が残っているが、どうすればよいか分からない」
という方は、使用、廃棄、返送、譲渡をする前に、早めにご相談ください。
感謝の声
https://www.bengo4.com/fukuoka/a_40130/g_40133/l_137175/voice/
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依頼から解決までのケース
犯罪・刑事事件
2024年4月に解決
60代男性
鐘ケ江先生本当にありがとうございました。
購入した時には合法なリラックス商品が、自分が知らないうちに規制対象になっていて、警察から取り調べを受け、書類送検になりましたが、最終的には不起訴処分となりました。
最初の警察との対応の仕方からアドバイスを頂き、自発的に警察に提出して、その後も逐一鐘ヶ江先生に報告しながらアドバイスに従いに動きました。そのため警察の取り調べも緊張して受けることになったのですが、それほど厳しいものではなかったような気がします。取り調べの前後でもずっと気にかけていただき、もし警察の動きがおかしいと感じたらいつでも呼んでくださいとおっしゃっられてとても不安だった気持ちが和らぎました。ひとつひとつのアドバイスが的確で力強くとても頼りになりました。書類送検にはなったものの一貫して違法なものと知って所持していたわけではないと出張して、最終的には1年ほどかかりましたが不起訴処分となりました。これも鐘ケ江先生のおかげです。ありがとうございました。
まとめ
CBD製品については、近時、法規制が大きく変化しています。
CBDそのものが直ちに違法というわけではありませんが、製品中のΔ9-THCが残留限度値を超える場合や、CBNなど指定薬物となった成分を含む場合には、所持・使用・販売等が刑事事件化する可能性があります。
購入時は合法だったとしても、法改正後も同じように所持・使用できるとは限りません。
一方で、購入時の表示、成分表示、本人の認識、法改正を知った時期、知った後の対応によっては、違法なものと知って所持していたわけではないとして、故意を否定し、不起訴を求める余地があります。
重要なのは、慌てて使用しないこと、捨てないこと、他人に渡さないこと、販売店に送り返さないこと、そして警察対応の前に資料を整理することです。
薬院法律事務所では、違法薬物、指定薬物、CBD関連製品に関する刑事事件について、警察対応、取調べ前の助言、意見書作成、不起訴を目指す弁護活動を行っています。
早めにご相談ください。
【参考文献】
加藤経将「刑事判例研究[476] 規制薬物を購入・所持した者が合法的な物質だと思っていた旨の弁解をして故意の認定が問題となった事案において、無罪を言い渡した原判決を、経験則に照らして不合理な前提に立脚した結果、間接事実の評価を誤ったとして破棄した事例〔大阪高等裁判所平成27年7月30日判決・研修第813号.69頁〕」警察学論集69巻5号(2016年5月号)163-176頁
【近年、規制薬物等に化学構造を似せて作られ、規制薬物等と同様の薬理作用を有する物質を含有する物資や、合法と称しながら実際には規制薬物等を含有する物質が、いわゆる「危険ドラッグ」として多数流通しており、ある物質を規制しても、すぐ、に化学構造が類似した別の未規制物質が流通し、後追いで法的規制がなされる状況にあり、かつ、そのことが広く知られている現状では、被疑者・被告人が「いまだ規制されていない合法的な薬物だと思っていた。」旨の弁解をして故意を否認する例が少なくない。
特に、このような弁解が、法的規制の有無を調べる方法を当然知っているはずの販売業者や売人ではなく、それらの者から自己使用分を買うだけの末端使用者からなされた場合、あるいは、問題となっている規制薬物等が比較的新しく規制薬物等に指定された薬物である場合には、このような弁解が一見信想性を帯びる場合があり、規制薬物等であることの認識をいかに立証するかが大きな課題となることがある。
本判決の事案も、個人が、通称a-PVPと呼ばれる比較的新しく麻薬に指定された物質2)を単純所持していた事案であり、「規制されていない合法的な物質だと聞いていた。」旨の弁解をどう評価するかが問題となった。】(169頁)
染谷武宣「54 薬物事犯における「薬物の認識」」植村立郎編『刑事事実認定重要判決50選(下)《第3版》』(立花書房,2020年3月)187-205頁
【新たな物質の登場と規制の「イタチごっこ」という危険ドラッグの特徴とこれに対する規制の強化は,現在は規制されていない物質でも近い将来に規制される可能性があることを意味するものであり34), 行為者がこのことを認識した上で35), その薬理作用(中枢神経系への興奮又は抑制等の作用)を求めて,インターネットを通じて得体の知れない販売業者等から危険ドラッグを購入して所持ないし使用したという場合には.行為者は,当該物質が規制薬物又は指定薬物として規制されていることを具体的に認識していなかったとしても.規制されている可能性を認識し.それでも構わないと考えていた
(あるいは.規制の有無自体に無関心であった)ものと評価することができる。このような場合においては,販売業者側に規制の有無を確認して合法との回答を得ていたとしても(そもそも,商品を販売したい業者側が違法であると回答することは考え難い。),その回答が信用できる状況にあったとはいえず.規制の有無に関する疑いが解消されたとはいえないであろう。】(204頁)
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