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薬院法律事務所

刑事弁護

違法薬物所持・自己使用事件で勤務先に知られたくない場合の対応


2026年06月17日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は福岡市内の会社に勤務している30代の会社員です。

先日、警察から電話があり、違法薬物の所持・使用の件で話を聞きたいと言われました。大麻リキッドのようなものを持っていたことがあり、友人関係から警察に名前が出たのではないかと思っています。

まだ逮捕はされておらず、警察からは「任意で話を聞きたい」と言われています。ただ、尿検査や家宅捜索になるのではないか、逮捕されるのではないかと不安です。

私が一番心配しているのは、勤務先に知られることです。会社に知られたら、懲戒処分や退職になるかもしれません。家族にもまだ話していません。

違法なことをしてしまった可能性があることは反省していますが、勤務先にはできる限り知られたくありません。

警察は会社に連絡するのでしょうか。勤務先に知られないようにするためには、どう対応すればよいでしょうか。

A、違法薬物の所持・自己使用事件であっても、警察が必ず勤務先に連絡するわけではありません。

特に、職場が事件と無関係であり、在宅事件として任意の取調べが進む場合には、勤務先に知られないまま刑事手続が進むこともあります。

もっとも、勤務先に知られる危険はあります。

典型的には、

・逮捕、勾留されて出勤できなくなる
・実名報道される
・職場や社宅で家宅捜索が行われる
・警察が勤務先に身上確認や所在確認をする
・職場の同僚や取引先が事件関係者である
・職場内で薬物を所持、使用、譲渡していた
・会社支給のスマートフォンやパソコンが捜査対象になる
・欠勤理由の説明から発覚する

といった場合です。

したがって、勤務先に知られたくない場合に最も重要なのは、逮捕・勾留を避け、在宅事件として処理される可能性を高めることです。

そのためには、警察から連絡が来た段階で、取調べ前に弁護士へ相談し、出頭日時、供述方針、尿検査への対応、所持品の提出、家族への説明、身元引受体制、再発防止策を整理する必要があります。

「会社に知られたくないから警察からの連絡を無視する」
「薬物や関係資料を捨てる」
「スマートフォンの履歴を消す」
「友人に口裏合わせを頼む」
「会社に虚偽の説明をする」

といった対応は、かえって逮捕・勾留や証拠隠滅の疑いを強めることがあります。絶対に避けるべきです。

勤務先に知られたくない場合ほど、早めに弁護士を入れて、適法に発覚リスクを下げる対応をとることが重要です。

 

【解説】

 

1 違法薬物所持・自己使用事件は、勤務先に知られると大きな不利益が生じます

 

違法薬物事件は、一般の刑事事件の中でも、勤務先への影響が大きい類型です。

会社員の場合、就業規則上の懲戒処分、配置転換、退職勧奨、信用低下、人事評価への影響が問題になります。

公務員、教員、医療職、士業、金融機関勤務者、警備業、運送業、上場企業の役職者などの場合には、より深刻です。職種によっては、懲戒処分、資格・登録への影響、報道、職場内での信用喪失が重大な問題になります。

薬物事件では、被害者との示談で解決するという形が取りにくいことも特徴です。

万引きや暴行事件であれば、被害弁償や示談が処分に影響することがあります。しかし、薬物所持・自己使用事件では、直接の被害者がいないため、処分を軽くするためには、反省、再発防止、治療・相談、生活環境の改善、薬物関係者との関係遮断などを具体的に示す必要があります。

勤務先に知られたくない場合でも、単に隠すのではなく、刑事処分を軽くするための準備を進めることが重要です。

 

2 違法薬物事件で勤務先に知られる主な経路

 

薬物事件で勤務先に知られる経路は、いくつかあります。

第一に、逮捕・勾留です。

逮捕されると、警察署の留置施設に入れられます。その後、勾留されると、原則として最大20日間、身体拘束が続くことがあります。

そうなると、出勤できません。会社から本人に電話をしてもつながらず、家族や警察、弁護士に連絡が行き、事件が発覚する可能性が高くなります。

第二に、報道です。

薬物事件は、地域や職業、事件内容によっては実名報道されることがあります。特に、公務員、教員、医療職、会社役員、有名企業勤務者、職場内での薬物事件、複数人が関与する事件などでは、報道リスクが高まります。

第三に、警察から勤務先への照会です。

警察が勤務先に必ず連絡するわけではありません。しかし、本人の身上確認、所在確認、職場での行動確認、勤務シフトの確認、会社支給端末の確認、職場関係者からの事情聴取などが必要と判断されれば、勤務先に連絡が行くことがあります。

第四に、家宅捜索です。

自宅だけでなく、職場、社宅、車両、ロッカー、会社支給のスマートフォンやパソコンが捜索対象になることがあります。職場で薬物を保管していた、職場関係者と薬物のやり取りをしていた、会社支給端末で薬物の連絡をしていた、といった事情があると、勤務先発覚のリスクは高くなります。

第五に、欠勤理由の説明です。

逮捕されていなくても、取調べ、家宅捜索、検察庁への呼出し、裁判対応などで仕事を休む必要が出ることがあります。その際、会社への説明が不自然になると、事件が発覚することがあります。

 

3 警察が必ず勤務先に連絡するわけではありません

 

勤務先に知られたくない方から、よく「警察は会社に連絡しますか」と聞かれます。

答えは、「必ず連絡するわけではないが、事案によっては連絡されることがある」というものです。

たとえば、薬物を自宅で所持していた、自己使用のみで、職場とは関係がない、会社支給端末も使っていない、本人が警察の呼出しに応じている、証拠隠滅や逃亡のおそれが低いという場合には、勤務先に連絡せずに捜査が進むこともあります。

他方で、次のような場合には、勤務先に知られる可能性が高くなります。

・職場で薬物を所持、使用していた
・勤務中に薬物を使用していた疑いがある
・職場の同僚が共犯者、譲渡人、譲受人である
・会社支給のスマートフォンで薬物のやり取りをしていた
・職場のロッカーや車両に薬物がある疑いがある
・警察からの呼出しを無視している
・住所不定、連絡不通、逃亡のおそれがある
・身元引受人がいない
・本人確認や勤務実態確認が必要と判断された

つまり、勤務先に知られたくない場合には、警察に対して、本人が逃げずに対応すること、証拠隠滅をしないこと、連絡が確実に取れること、生活基盤が安定していることを示す必要があります。

 

4 最も大事なのは、逮捕・勾留を避けることです

 

勤務先に知られたくない場合、最大のリスクは逮捕・勾留です。

薬物事件では、証拠隠滅のおそれ、関係者との口裏合わせのおそれ、薬物入手ルートの解明の必要性などを理由に、逮捕・勾留されることがあります。

特に、覚醒剤の使用・所持、大麻の所持・使用、麻薬、指定薬物、複数人が関与する事件、譲渡・譲受が絡む事件では、身体拘束のリスクを軽く見るべきではありません。

逮捕・勾留を避けるためには、次のような準備が重要です。

・警察からの連絡を無視しない
・出頭日時を弁護士と調整する
・住所、勤務先、家族関係などの身上関係を整理する
・家族など身元引受人を用意する
・薬物関係者との連絡を断つ
・証拠隠滅と疑われる行動をしない
・所持品や資料の扱いを弁護士に相談する
・再発防止策を具体化する
・必要に応じて弁護士から意見書を提出する

警察から連絡が来た後に、慌ててスマートフォンの履歴を消したり、薬物を捨てたり、関係者に連絡したりすると、逮捕・勾留のリスクが上がります。

勤務先に知られたくないのであれば、まず在宅事件として進める可能性を高めることが重要です。

 

5 取調べ前に整理すべきこと

 

警察の取調べでは、主に次のような点が聞かれます。

・薬物の種類
・入手先
・入手時期
・所持場所
・使用の有無
・使用時期
・使用頻度
・使用方法
・関係者
・スマートフォン内のやり取り
・代金の支払い方法
・勤務先や職場関係者との関係
・再発防止の意思

ここで重要なのは、勤務先を巻き込む必要がある事案なのかどうかを見極めることです。

職場と事件が無関係であるにもかかわらず、あいまいな供述をしてしまうと、警察が勤務先に確認する必要があると判断する可能性があります。

たとえば、

「会社でも使ったかもしれません」
「同僚にも話したかもしれません」
「会社のスマホで連絡したかもしれません」
「職場のロッカーに何か残っているかもしれません」

といった曖昧な供述は、事実と違うのであれば避けるべきです。

もちろん、嘘をついてはいけません。実際に職場で所持・使用していた、会社支給端末を使っていた、同僚が関与していた場合には、その事実を前提に対応を考える必要があります。

しかし、記憶が曖昧なまま、推測で不利な供述をする必要はありません。

取調べ前に、事実関係を整理し、自分が何を知っていて、何を知らないのか、何を覚えていて、何を覚えていないのかを確認しておくべきです。

 

6 会社への説明は慎重にすべきです

 

勤務先に知られたくない場合、会社への説明も重要です。

在宅事件であれば、取調べの日程を休日、有給休暇、半休などに合わせることで、会社に詳しい事情を説明せずに済むことがあります。

ただし、会社に虚偽の説明をすることは避けるべきです。

たとえば、逮捕されているのに「病気で入院している」と説明したり、警察対応なのに虚偽の診断書を出したり、会社からの確認に対して事実と異なる説明を繰り返したりすると、後に発覚した場合、刑事事件そのものとは別に、会社との信頼関係を大きく損ないます。

会社への説明は、必要最小限にとどめるべきです。

たとえば、在宅で任意の取調べを受ける段階であれば、会社に事件の詳細を説明する義務が当然にあるとは限りません。まずは、就業規則、職種、欠勤の有無、会社への報告義務の有無を確認する必要があります。

他方で、公務員、教員、医療職、士業、運転業務、警備業、金融機関勤務など、職務内容や内部規程上、一定の報告が必要になることもあります。

会社に報告するかどうか、報告するとしてどの範囲で説明するかは、弁護士に相談して決めるべきです。

 

7 報道を避けるための対応

 

薬物事件では、報道されるかどうかも大きな問題です。

報道を完全に防ぐことはできません。警察が事件を広報するか、報道機関が実名報道するかは、弁護士が必ずコントロールできるものではありません。

もっとも、報道リスクを下げるためにできることはあります。

まず、逮捕を避けることです。逮捕されると、報道リスクは高まります。特に、職業や社会的地位、事件の特殊性がある場合には注意が必要です。

次に、事件を大きくしないことです。関係者への口裏合わせ、証拠隠滅、警察からの呼出し無視、逃亡的行動は、事件を悪質に見せます。

また、早期に弁護士が入り、在宅捜査で十分であること、勤務先と事件が無関係であること、本人が出頭に応じること、再発防止策を取っていることを捜査機関に伝えることも考えられます。

報道を避けたい場合も、結局は、逮捕・勾留を避けることが重要です。

 

8 薬物の種類によって処分の見通しは変わります

 

違法薬物事件といっても、薬物の種類によって処分の見通しは変わります。

覚醒剤の所持・使用は、法定刑が重く、初犯でも正式裁判となることが多い類型です。罰金で終わる事件ではありません。初犯であれば執行猶予付き判決が見込まれることもありますが、起訴されれば公開法廷での裁判になります。

大麻については、法改正により、所持だけでなく使用も処罰対象になりました。大麻は軽いと考えている方もいますが、現在は他の規制薬物と同様に重大な刑事事件として扱われます。

指定薬物、いわゆる危険ドラッグについても、所持・使用・購入・譲受け等が処罰対象になります。合法と称して販売されていた製品でも、指定薬物を含む場合には刑事事件化することがあります。

CBD関連製品についても、製品中のTHC残留限度値や指定薬物該当性が問題になることがあります。

このように、薬物の種類、量、入手経路、使用頻度、前科前歴、営利目的の有無、譲渡・譲受の有無によって、処分の見通しは大きく変わります。

 

9 不起訴・執行猶予を目指すために必要なこと

 

勤務先に知られたくない場合でも、刑事処分を軽くするための準備を怠ってはいけません。

薬物事件では、単に「反省しています」と述べるだけでは不十分です。

具体的には、次のような対応が重要です。

・薬物関係者との関係を断つ
・売人、使用仲間、SNSアカウントを整理する
・家族に事情を説明し、監督体制を作る
・薬物依存に関する相談機関、医療機関を利用する
・再発防止計画を作成する
・尿検査や治療プログラムへの参加を検討する
・仕事、生活、交友関係の問題点を整理する
・二度と薬物を使用しない具体的な仕組みを作る

自己使用事件では、「もう使いません」という言葉だけでは説得力がありません。

どのようなきっかけで使用したのか、なぜ断れなかったのか、どの関係を断つのか、今後どのようにストレスを処理するのかを、具体的に示す必要があります。

弁護士は、これらの事情を整理し、検察官や裁判所に対して意見書や資料として提出することがあります。

 

10 警察から連絡が来た段階でしてはいけないこと

 

勤務先に知られたくないという気持ちが強いと、焦って不適切な行動をしてしまうことがあります。

しかし、次の行動は避けるべきです。

・警察からの電話を無視する
・出頭要請を無断で欠席する
・薬物を捨てる
・スマートフォンの履歴を消す
・関係者に口裏合わせを頼む
・売人や使用仲間に連絡する
・会社に虚偽の説明をする
・家族に虚偽の説明をして協力させる
・SNSに事件のことを書く
・弁護士に事実を隠す

これらの行動は、勤務先に知られることを防ぐどころか、逮捕・勾留、報道、職場照会のリスクを高めることがあります。

勤務先に知られたくない場合ほど、落ち着いて、適法な対応を取る必要があります。

 

11 弁護士ができること

 

弁護士は、違法薬物所持・自己使用事件で、勤務先に知られたくないという方について、次のような対応を行います。

・警察への出頭前相談
・取調べ対応の助言
・黙秘権、供述調書作成時の注意点の説明
・逮捕・勾留を避けるための意見書作成
・身元引受人の準備
・家族への説明方法の整理
・薬物関係者との関係遮断の助言
・再発防止策の作成
・検察官への不起訴意見書の提出
・起訴された場合の執行猶予を目指す弁護活動
・勤務先への説明方針の検討
・報道リスクへの対応

特に重要なのは、警察から連絡が来た直後の段階です。

この段階で適切に対応できれば、在宅事件として進められる可能性が高まり、勤務先に知られるリスクを下げられることがあります。

逆に、警察対応を誤り、逮捕・勾留されてしまうと、勤務先に知られないまま解決することは非常に難しくなります。

 

まとめ

 

違法薬物所持・自己使用事件であっても、警察が必ず勤務先に連絡するわけではありません。

しかし、逮捕・勾留、実名報道、職場への捜索、警察からの照会、欠勤理由の説明などによって、勤務先に知られるリスクはあります。

勤務先に知られたくない場合に重要なのは、違法な隠蔽ではありません。

重要なのは、警察からの連絡を無視せず、証拠隠滅と疑われる行動を避け、弁護士を通じて在宅事件として処理される可能性を高め、再発防止策を具体的に示すことです。

薬院法律事務所では、違法薬物所持・自己使用事件について、警察対応、取調べ前の助言、逮捕・勾留回避、不起訴・執行猶予を目指す弁護活動、勤務先への発覚リスクを踏まえた対応について相談を受けています。

「警察から薬物事件で連絡が来た」
「勤務先に知られたくない」
「逮捕されるのか不安」
「尿検査や家宅捜索を受けるかもしれない」
「会社にどう説明すればよいか分からない」

という場合には、早めにご相談ください。

大麻所持・自己使用事件弁護要領