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薬院法律事務所

刑事弁護

子どもが警察から呼び出された場合、親はどう対応すべきか


2026年06月18日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は福岡市内に住む40代の母親です。高校生の息子について、警察から電話がありました。

警察官からは、「息子さんに話を聞きたいことがあるので、警察署に来てほしい」と言われました。詳しく聞くと、息子が友人と一緒に万引きをした疑いがあるとのことでした。

息子に確認したところ、「自分は見ていただけ」「友達がやっただけ」「警察に大げさに言われている」と言っています。ただ、話が曖昧で、本当のことを言っているのか分かりません。

警察からは、親も一緒に来てほしいと言われています。

このような場合、親としてどう対応すればよいのでしょうか。警察にはそのまま行けばよいのでしょうか。学校には報告すべきでしょうか。息子を厳しく叱って、本当のことを話させた方がよいのでしょうか。

A、まず、警察からの呼出しを無視してはいけません。指定された日時に行けない場合でも、必ず警察に連絡し、日程調整をする必要があります。

もっとも、何の準備もせずに警察署へ行き、その場の流れで子どもに供述させることは危険です。

少年事件では、警察での話だけで終わるとは限りません。事件はその後、検察庁や家庭裁判所に送られ、家庭裁判所調査官による調査、少年審判、保護処分の可能性があります。

親が最初にすべきことは、子どもを頭ごなしに叱ることではありません。

まず、

・警察から何の事件で呼ばれているのか
・任意の呼出しなのか、逮捕の可能性があるのか
・被害者がいる事件なのか
・子ども本人が何を認め、何を争っているのか
・共犯者や友人関係があるのか
・学校への影響があるのか
・家庭裁判所に送られた場合に何が問題になるのか

を整理する必要があります。

特に、子どもが「やっていない」「見ていただけ」と言っている場合、親が「正直に謝りなさい」と迫ることで、本当は争うべき事件で不利な供述をしてしまうことがあります。

逆に、子どもが本当に非行をしている場合に、親が「うちの子は悪くない」と決めつけて事実から目をそらすと、家庭裁判所での評価は悪くなります。

親に求められるのは、子どもをかばって嘘をつくことではありません。また、子どもを追い詰めて形だけの反省をさせることでもありません。

事実を正確に確認し、必要な弁護活動を行い、再発防止のための家庭の体制を整えることです。

警察から子どもが呼び出された段階で、少年事件に対応している弁護士に早めに相談することをお勧めします。

 

【解説】

 

1 少年事件では、警察対応だけで終わらないことがあります

 

未成年の子どもが警察から呼び出された場合、親は「警察で注意されて終わるのではないか」と考えがちです。

しかし、少年事件では、成人の刑事事件とは異なる手続が進みます。

少年法上、少年とは20歳に満たない者をいいます。民法上の成年年齢は18歳に引き下げられていますが、少年法では、18歳、19歳も「特定少年」として、なお少年法の対象になります。

少年事件には、大きく分けて次のような類型があります。

・14歳以上で罪を犯した犯罪少年
・14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした触法少年
・犯罪には至っていないが、将来罪を犯すおそれがあるぐ犯少年

高校生や大学生であっても、20歳未満であれば、原則として少年事件として扱われます。

警察で取調べを受けた後、事件は検察庁や家庭裁判所に送られます。家庭裁判所では、事件そのものだけでなく、少年の性格、生活環境、家庭環境、学校生活、交友関係、保護者の監督状況などが調査されます。

つまり、少年事件では、「やったか、やっていないか」だけでなく、「今後どう立ち直らせるか」が重要になります。

 

2 警察から呼び出されたときに確認すべきこと

 

警察から電話があった場合、慌ててはいけません。

まず、次の事項を確認してください。

・担当警察署
・担当警察官の氏名
・連絡先
・呼出しの日時
・何の事件で呼ばれているのか
・子ども本人だけでよいのか、保護者も同行するのか
・任意の呼出しなのか
・逮捕の可能性があると言われているのか
・被害者がいる事件なのか
・持参すべきものがあるのか

警察からの呼出しは、基本的には無視しない方がよいです。無断で行かなかったり、連絡を絶ったりすると、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると見られる可能性があります。

他方で、警察から呼ばれたからといって、何も準備せずにすぐ出頭すればよいというものでもありません。

特に、子ども本人が事実を争っている場合、共犯者がいる場合、被害者がいる場合、学校や進学に大きな影響が出る場合には、取調べ前に弁護士へ相談すべきです。

 

3 親が子どもを問い詰めすぎることの危険

 

警察から呼出しがあると、親は動揺します。

「本当のことを言いなさい」
「嘘をつくな」
「友達のせいにするな」
「警察で全部正直に話しなさい」

と言いたくなるのは自然です。

しかし、親が子どもを問い詰めすぎると、かえって事実が分からなくなることがあります。

子どもは、親に怒られたくない、失望されたくない、学校に知られたくない、友人をかばいたい、自分でも何が犯罪になるのか分からない、という状態で話していることがあります。

そのため、親の顔色を見て、事実と違うことを言うことがあります。

また、子どもが本当は「やっていない」「見ていただけ」「途中で止めようとした」と言っているのに、親が「反省しなさい」と強く迫ることで、警察で不利な供述をしてしまうこともあります。

少年事件では、反省は重要です。しかし、事実と違う反省は危険です。

まずは、落ち着いて、

・いつ
・どこで
・誰と
・何があったのか
・自分は何をしたのか
・友人は何をしたのか
・被害者はいるのか
・警察に何を聞かれているのか

を確認してください。

親がその場で結論を出す必要はありません。

 

4 親がしてはいけないこと

 

子どもが警察から呼び出された場合、親がしてはいけないことがあります。

第一に、子どもに嘘をつかせることです。

「それは友達がやったことにしなさい」
「自分は知らなかったと言いなさい」
「学校に知られたくないから、警察には余計なことを言うな」

という指示は、絶対にしてはいけません。

第二に、証拠を隠すことです。

スマートフォンの履歴を消す、盗品を捨てる、服やバッグを処分する、SNSの投稿を削除する、友人とのやり取りを消す、といった行動は、証拠隠滅と見られる可能性があります。

第三に、共犯者や友人に連絡して口裏合わせをすることです。

親が相手の親に連絡し、「うちの子の名前を出さないでほしい」「話を合わせてほしい」などと言うと、事件を悪化させます。

第四に、被害者に直接強く連絡することです。

謝罪や弁償は大事ですが、親が焦って被害者に直接連絡し、許しを求めたり、被害届の取下げを求めたりすると、被害者に圧力をかけたと受け取られることがあります。

第五に、学校に急いで全部話すことです。

学校への報告が必要な場合はあります。学校内の事件、被害者が同じ学校の生徒、欠席が必要になる事件、校則上の報告義務がある事件では、学校対応を避けられないこともあります。

しかし、警察に呼ばれた段階で、事実関係も整理しないまま学校に詳しく話すと、必要以上に問題が広がることがあります。学校への報告は、事案の内容とタイミングを慎重に検討すべきです。

 

5 子どもに伝えるべきこと

 

警察に行く前に、親から子どもに伝えるべきことがあります。

それは、次のようなことです。

「嘘をついてはいけない」
「分からないことを分かると言ってはいけない」
「覚えていないことを想像で話してはいけない」
「友達をかばうために、自分がやっていないことまで認めてはいけない」
「警察官に言われたからといって、違うと思う調書に署名してはいけない」
「困ったら、弁護士や親に相談してよい」
「あなたを見捨てるためではなく、正しく対応するために動いている」

子どもは、警察署という場所で大人から質問されると、強い圧力を感じます。

警察官が怒鳴っていなくても、子どもにとっては怖いものです。早く終わらせたくて、よく分からないまま「はい」と答えてしまうこともあります。

特に、共犯事件では注意が必要です。

友人が先に供述している場合、警察から「友達はこう言っている」と言われることがあります。そのとき、子どもが混乱して、実際にはしていないことまで認めることがあります。

事実を正確に話すことと、警察の見立てに合わせて話すことは違います。

 

6 親は取調べに同席できるのか

 

警察での取調べに、親は原則として同席できません。

警察が、親の同席によって子どもが自由に話せなくなると考える場合もあります。

親としては、同席できるかを警察に確認することはできます。

しかし、同席できない場合も想定して、取調べ前に子どもと話し、必要であれば弁護士から取調べ対応の助言を受けておくことが重要です。

また、子どもが不安が強い、発達特性がある、知的能力に不安がある、精神的に不安定である、警察官の質問を正確に理解できない可能性がある場合には、その事情を警察に伝える必要があります。

必要に応じて、弁護士から警察に対し、取調べ方法について配慮を求めることも考えられます。

 

7 被害者がいる事件では、謝罪と弁償をどう進めるか

 

万引き、傷害、暴行、器物損壊、盗撮、交通事故など、被害者がいる事件では、謝罪と被害弁償が重要になります。

少年事件では、被害者対応は、単に処分を軽くするためだけのものではありません。子どもに、自分の行為が他人に与えた影響を理解させる意味もあります。

もっとも、親が直接被害者に連絡することにはリスクがあります。

被害者が怒っている場合、親の言葉が逆効果になることがあります。また、被害届の取下げや許しを求める言い方をすると、圧力と受け取られることもあります。

被害者対応では、

・事実関係がどこまで確認できているか
・子どもが認めているのか、争っているのか
・謝罪文を書くべきか
・弁償額をどうするか
・示談書を作成するか
・被害者の連絡先をどう扱うか
・学校関係者を通すべきか
・弁護士を通すべきか

を検討する必要があります。

特に、性犯罪、いじめ、学校内事件、共犯事件では、直接連絡は慎重にすべきです。

 

8 学校への報告はどうするべきか

 

子どもの事件で、親が悩むのが学校への報告です。

学校に知られれば、停学、退学、指導、進学への影響、部活動への影響、同級生への広がりなどが心配になります。

一方で、学校内で起きた事件、被害者が同じ学校にいる事件、学校の物を壊した事件、いじめや暴行事件、長期間の欠席が必要になる事件では、学校と連携せざるを得ないことがあります。

学校への報告については、次の点を検討します。

・学校内の事件か、学校外の事件か
・被害者が同じ学校の生徒か
・警察から学校に連絡が行く可能性があるか
・欠席や遅刻が必要になるか
・校則上の報告義務があるか
・学校の処分が刑事・少年手続に影響するか
・子どもの居場所や再発防止に学校の協力が必要か

学校に報告する場合でも、すべてを感情的に話す必要はありません。

事実関係、現在の手続、家庭での対応、再発防止策、学校に求める配慮を整理して伝えるべきです。

 

9 家庭裁判所を見据えた準備

 

少年事件では、警察・検察だけでなく、家庭裁判所での対応が重要です。

家庭裁判所では、家庭裁判所調査官が、少年本人や保護者と面接し、生活状況、家庭環境、学校生活、交友関係、非行に至った原因、今後の監督体制などを調査します。

ここで親が問われるのは、「子どもを叱ったか」だけではありません。

むしろ、

・事件の原因を親がどう理解しているか
・家庭内で何を改善するか
・交友関係をどう見直すか
・スマートフォンやSNSの利用をどう管理するか
・門限、金銭管理、外泊、アルバイトをどうするか
・学校とどう連携するか
・被害者への対応をどうするか
・再発防止策を現実的に実行できるか

が見られます。

親が「本人が反省しています」「二度としませんと言っています」と述べるだけでは不十分です。

なぜ事件が起きたのか、今後どう防ぐのかを、家庭として具体化する必要があります。

 

10 家庭裁判所での処分

 

家庭裁判所では、事案に応じて、審判不開始、不処分、保護観察、児童自立支援施設等送致、少年院送致などの処分が考えられます。

審判不開始や不処分を目指す場合でも、「何もしなくてよい」という意味ではありません。

むしろ、警察に呼ばれた初期段階から、被害弁償、謝罪、学校対応、家庭内の監督、交友関係の整理、再発防止策を積み重ねることで、家庭裁判所に対して、在宅での更生が可能であることを示す必要があります。

また、事件が重い場合や、家庭環境に問題がある場合、再非行のおそれが高い場合には、観護措置として少年鑑別所に収容されることもあります。

観護措置となると、学校や生活への影響は非常に大きくなります。

そのため、警察から呼び出された段階で、「まだ家庭裁判所ではないから大丈夫」と考えるのではなく、最初から家庭裁判所を見据えた対応を取る必要があります。

 

11 18歳・19歳の特定少年は特に注意が必要です

 

18歳、19歳の子どもについては、「もう成人だから親は関係ない」と考える方もいます。

しかし、少年法上は、18歳、19歳も特定少年として少年法の対象になります。

もっとも、特定少年については、17歳以下の少年とは異なる扱いがあります。重大事件では、家庭裁判所から検察官に送致され、刑事裁判になる可能性が広がっています。また、起訴された場合には、実名報道の問題も生じ得ます。

大学生、専門学校生、社会人になったばかりの18歳、19歳の事件では、処分によって進学、就職、資格、勤務先、家族関係に大きな影響が出ます。

「未成年だから軽く済むだろう」と考えるのは危険です。

 

12 弁護士ができること

 

少年事件で弁護士ができることは、警察での取調べ対応だけではありません。

具体的には、次のような対応をします。

・警察からの呼出し前の相談
・取調べ対応の助言
・子ども本人との面談
・保護者への助言
・事実関係の整理
・被害者への謝罪、被害弁償、示談交渉
・学校への報告方針の検討
・家庭裁判所調査官への対応準備
・保護者の監督計画の作成
・再発防止策の整理
・審判不開始、不処分、保護観察回避を求める意見書作成
・観護措置回避のための意見書作成
・少年審判への付添人活動

少年事件では、子ども本人だけでなく、親の対応が結果に大きく影響します。

親が冷静に事実を見つめ、必要な監督体制を整え、被害者対応を進め、家庭裁判所に対して具体的な改善策を示せるかどうかが重要です。

 

まとめ

 

子どもが警察から呼び出された場合、親は強い不安を感じます。

しかし、そこで大切なのは、慌てて叱ることでも、子どもを無条件にかばうことでもありません。

まず、警察から何の事件で呼ばれているのかを確認し、子どもから落ち着いて事情を聞き、証拠隠滅や口裏合わせを避け、必要に応じて弁護士に相談することです。

少年事件では、警察対応の先に、家庭裁判所での調査や審判があります。

家庭裁判所では、事件そのものだけでなく、家庭環境、学校生活、交友関係、保護者の監督体制、再発防止策が見られます。

親は、子どもを守るために、事実を歪めてはいけません。

子どもを立ち直らせるために、事実を正確に見つめ、被害者への対応を行い、家庭として再発防止の仕組みを作る必要があります。

薬院法律事務所では、少年事件について、警察からの呼出し段階、逮捕後、家庭裁判所送致後、調査官調査、少年審判まで、子ども本人と保護者の相談を受けています。

「子どもが警察から呼び出された」
「親として何をしてよいか分からない」
「学校に知られるのが不安」
「家庭裁判所に送られるのか心配」
「子どもはやっていないと言っている」
「被害者にどう謝罪すればよいか分からない」

という場合には、早めにご相談ください。

 

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