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薬院法律事務所

刑事弁護

大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第6条(卑わいな行為の禁止)の解説・痴漢・盗撮行為


2025年01月15日刑事弁護

下書きはchatGPTo1 proに作成してもらいました。加筆した部分を赤字にしています。

以下では、大阪府迷惑行為防止条例 第6条(卑わいな行為の禁止)について、これまでの解説スタイルを踏襲しながら詳細かつ分量多めに説明します。第6条は、いわゆる痴漢行為や盗撮行為等の性犯罪的迷惑行為を幅広く規制し、公共空間や人が衣服を脱ぐ空間での被害を防止するための重要条文です。


1. 第6条(卑わいな行為の禁止)の位置づけと目的

(1) 条例全体における意義

  • 本条例(昭和37年12月24日条例第44号)は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等」を防止し、府民や滞在者の平穏な生活を保持することを目的としており(第1条)、公共空間や公共の乗物で発生しやすい多様な迷惑行為を取り締まります。
  • 中でも第6条は、痴漢・盗撮・のぞき見等の「卑わいな行為」に着目し、人々のプライバシーや身体的自由が侵害されやすい分野を重点的に規制する核心的規定となっています。

(2) 保護法益

  • 第6条で禁止される行為はいずれも、被害者の性的プライバシーや身体的平穏に深刻なダメージを与えます。
  • 「痴漢」「盗撮」「卑猥な言動」など、条文が列挙的に規定している行為を厳しく取り締まり、公共の場や半公共空間での性犯罪的被害を抑止する意義が大きいです。

2. 第6条 第1項

(第6条 第1項)
「何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影すること。
二 みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。」

(1) 規制対象となる行為

  1. (一) 人の身体又は下着を「のぞき見・撮影」する行為
    • 衣服で覆われている内側を直接覗く、カメラ等で撮影する(いわゆる盗撮行為)。
    • 「著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような方法」であれば、たとえ軽微な覗き込みでも対象になります。
  2. (二) いわゆる**“透かして見る”**行為
    • 赤外線フィルター等の機材を用いて衣服越しに身体を映し出す「透かし撮り」を明示的に規制。
    • 「みだりに」「写真機等を使用して透かして見る方法」によって、隠されている身体や下着を見・撮影する行為を禁止。

(2) 共通点

  • いずれも**「正当な理由」**が認められない限り、禁止されます。医療行為などの正当業務を除き、盗撮・覗き込みは当然正当化されません。
  • 被害者の性的プライバシーを保護し、盗撮や透かし撮りなど巧妙化する手口にも対応していることが特徴です。
  • 大阪府条例の特徴として、下着の盗撮行為、のぞき見行為について「場所の限定」がないことがあります。この点については、後述の大阪府警察本部府民安全対策課「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例改正に伴う大阪地方検察庁の審査結果について(報告)(全14頁)」(2020年12月17日)をご覧下さい。

(3) 典型事例

  • カメラ付き携帯や小型カメラを使ったスカート内の盗撮行為
  • 赤外線フィルターなどを用いて衣服を透かし、下着・身体を撮影・観察する行為
  • 椅子の下やバッグなどに隠しカメラを仕込む
  • “背後から覗き込み”などで身体を隠し撮りする

3. 第6条 第2項

(第6条 第2項)
「何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。
二 前号に掲げるもののほか、人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること(前項又は第四項の規定に違反する行為を除く。)。」

(1) 公共の場所又は公共の乗物における“痴漢・卑猥言動”禁止

  1. (一) 痴漢行為(身体接触)
    • 衣服の上から、あるいは直接に被害者の身体に触れる行為が典型例。
    • 満員電車やバスなどでの臀部や胸への接触などを想定。
  2. (二) その他の卑猥な言動
    • 公衆の場で強い嫌悪や羞恥を抱かせる卑猥発言、卑猥行動など。
    • “前項又は第四項の規定に違反する行為を除く”とは、第1項にある“のぞき・盗撮”や、第4項にある“撮影目的のカメラ向け等”と重ならない場合を想定し、重複適用を調整しているものと考えられます。

(2) 典型事例

  • 満員電車で他人の身体をわいせつ目的で触る(痴漢)
  • 駅や商業施設などで卑猥な言葉・ジェスチャーを行い、周囲に強い羞恥・嫌悪感を与える

4. 第6条 第3項

(第6条 第3項)
「何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、姿態を見ること。
二 みだりに、姿態を撮影すること。」

(1) 衣服を脱ぐ可能性の高い場所でののぞき・盗撮禁止

  • 「住居、浴場、便所、更衣室など」は、被害者のプライバシー度合いが非常に高く、裸や下着姿になっているケースが多い。
  • こうした場面での「のぞき見(姿態を見る)」「撮影(又はその目的でカメラを向ける・設置する)」行為を厳しく禁止。
  • 私的空間での「のぞき見」行為を条例で規制できるかはひとつの論点です。
  • 大阪府警察本部府民安全対策課「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例改正に伴う大阪地方検察庁の審査結果について(報告)(全14頁)」(2020年12月17日)によれば、法務省刑事局とは協議済みであえて私的空間の「のぞき見」まで規制しているようです。
  • 【1 審査結果回答日
    令和2年12月14日
    2 審査事項
    大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第6条の改正案の適否について
    3 審査担当
    大阪地方検察庁
    (担当一庄野啓子検察官)
    4 審査結果(口頭回答)
    (1) 新条例第6条第3項の規制の適否について
    ア結論
    問題はない。
    イ内容
    衣服の全部又は一部を着けない状態(以下「全裸、半裸状態」という。)にある人の姿態を見、又は撮影する行為につき、新条例は、第6条第3項柱書で、公衆浴場等のみならず、「住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」とし、場所的要件を拡充した上、同項第1号で「全裸、半裸状態にある人の姿態を見ること」を、同項第2号で「全裸、半裸状態にある人の姿態を撮影すること」をそれぞれ規制する。
    本規定について、法律に違反して無効ではないかが問題となるが、検討の結果、軽犯罪法の規定の意図する目的と効果を何ら阻害することがないと考えられ、法令と条例との間にはなんらの矛盾抵触はなく、改正案による規制は法律の範囲内であると思料する。
    (2)新条例第6条第1項の規制の適否について
  • ア、結論
    問題はない。
    イ内容
    衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影する行為(写真機等を使用して透かして見る方法を含む)につき、新条例は、第6条第1項第1号及び同項第2号で、場所を限定することなく規制する。
    本規定について、規制の合理性、必要性は認められる上、明確性にも問題はない。
    その他の意見
    5 補足
    本改正案の審査については、大阪地方検察庁が法務省刑事局と協議済みである。
    以上】
  • 大阪府警察本部生活安全部府民安全対策課迷惑防止条例改正PT「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例改正の修正案(全1頁)」(2016年12月)では【住居等における盗撮又は見る行為の規制は、軽犯罪法23号と保護法益が重複しており、法益が重複している場合は、法律の先占事項となり、当該規制が違法のそしりを受ける可能性がある【法務省指摘】ので、追加を断念する。◆現行条例第6条第1項第4号(公衆浴場等盗撮)を改正案に盛り込む。】と記載されており、法務省の見解が変更されたのではないかと推測される。

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第23回 軽犯罪法1条23号(軽犯罪法、刑事弁護)

【判例時報賞応募論文】「性的盗撮規制の最前線-軽犯罪法の窃視罪と,迷惑防止条例の相克-」(2019年2月)

(2) 典型事例

  • 銭湯や温泉で入浴客を盗撮する
  • 更衣室やトイレの上からスマホを差し込み、録画する
  • 自宅の窓から半裸の姿を覗くなど

5. 第6条 第4項

(第6条 第4項)
「何人も、第一項各号又は前項第二号の規定による撮影の目的で、写真機等を人に向け、又は設置してはならない。」

(1) 「撮影の目的でカメラ等を向け・設置する」準備行為の禁止

  • 第1項各号や第3項第2号が規定する**“撮影行為”**を行う目的で、カメラ等を“差し向ける”“設置する”段階から取り締まります。
  • 盗撮被害が発生する前の段階での摘発を可能にし、被害の未然防止を図る。

(2) 実務的意義

  • 盗撮では、カメラ設置や撮影準備中に「被害がまだ生じていない」として、処罰を逃れるケースが問題化していました。
  • 本条例第4項により、「カメラを設置した瞬間」や「差し向けただけ」の場合でも、目的が盗撮(卑猥行為)であると認められれば処罰対象になりうるため、警察が早期に対応できるメリットがあります。

6. 全体的な特色

  1. 公共空間から住居・浴場・更衣室等の私的空間に至るまで、卑わいな行為(痴漢・盗撮・のぞき見・卑猥言動)を幅広くカバー。
  2. “透かして見る”行為(赤外線フィルター等)や“撮影準備行為”(カメラを差し向け・設置する行為)まで規制対象とし、技術の進歩による新手の盗撮に対応。
  3. 第2項では、公共の場所・乗物限定で身体接触型の痴漢・卑猥言動を、第3項では衣服を脱ぐ状況がある場所でののぞき・盗撮を、それぞれ規定することで、シチュエーションごとに明確な対応を取っています。
  4. 同条文内で、被害者を「著しく羞恥させ」「不安を覚えさせる」という表現を用い、加害行為の客観的・主観的要素を考慮している。

7. 罰則

  • 第6条違反行為の罰則は、第15条第1項や第17条第1項などで規定。
    • 「撮影行為」を行った場合(のぞき見・盗撮を実際に実行)には1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(常習で2年以下の懲役)。
    • 「卑わいな言動」「痴漢行為」「のぞき見」など撮影以外の部分は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(常習で1年以下の懲役など)となります(第17条参照。ただし改正により細かく区分があり得る)。
  • 盗撮行為などは条例違反だけでなく、刑法の「住居侵入」「暴行・わいせつ」「軽犯罪法」などが適用されうる場合もあるが、本条例はより細やかな場面や未遂段階にまで対応できるため、意義は大きいとされています。

8. まとめ

  1. 大阪府迷惑行為防止条例 第6条は、公共空間や人が衣服を脱ぐ空間における「痴漢・盗撮・のぞき行為・卑猥な言動」を広範囲に規制する中心規定。
  2. 第1項で「下着や身体ののぞき見・撮影」、「透かし撮り」を明示的に禁止し、技術進化による巧妙な盗撮もカバー。
  3. 第2項で公共空間における「身体接触型の痴漢」や「卑猥言動」を禁止し、周囲に羞恥・不安を与える性犯罪的行為を取り締まる。
  4. 第3項で、住居や浴場、更衣室といった人が衣服を脱ぐ可能性が高い場所での「のぞき・盗撮」を取り締まり、プライバシー保護を強化。
  5. 第4項で「撮影目的でカメラを向け・設置する」行為、すなわち盗撮の準備行為自体を禁止し、発生前に摘発できる仕組みを整備。
  6. 罰則は最大で「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」等と比較的重く、条例違反でも前科が付く可能性があるため、社会的影響は重大。
  7. 刑法などの一般法ではカバーしきれない場面(準備行為や未遂段階)も条例で広く規制することにより、被害者の性的プライバシーを強力に保護する姿勢を示している。

このように、第6条は痴漢・盗撮にまつわる多様な行為を階層的に整理・規制することで、大阪府内の公共空間や公共の乗物での性犯罪的迷惑行為を包括的に抑止する中心的条文として機能しています。

 

不同意わいせつ罪と、痴漢(迷惑行為防止条例違反)との分水嶺(痴漢、刑事弁護)

性的姿態等撮影罪(未遂)と、迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)、軽犯罪法違反(つきまとい)の分水嶺

下着盗撮事件弁護要領(性的姿態等撮影罪・迷惑防止条例)

大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例

https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010100/reiki/reiki_honbun/k501RG00001267.html

(卑わいな行為の禁止)

第六条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。

 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影すること。

 みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。

2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。

 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。

 前号に掲げるもののほか、人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること(前項又は第四項の規定に違反する行為を除く。)

3 何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し、次に掲げる行為をしてはならない。

 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、姿態を見ること。

 みだりに、姿態を撮影すること。

4 何人も、第一項各号又は前項第二号の規定による撮影の目的で、写真機等を人に向け、又は設置してはならない。

(平一四条例一〇六・追加、平二九条例五八・令三条例三七・一部改正)

 

 

【参考文献】※情報公開で入手した資料は一部マスキング有

 

大阪府警察本部生活安全部府民安全対策課迷惑防止条例改正P「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例改正の修正案(全1頁)」(2016年12月)

大阪府警察本部生活安全部府民安全対策課迷惑防止条例改正PT「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例改正案修正経過(全1頁)」(2016年12月6日)

大阪府警察本部「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例改正に対する大阪地方検察庁の審査結果について(報告)(全6頁)」(2016年12月13日)

大阪府警察本部生活安全部府民安全対策課「質疑メモ(全2頁)」(2017年1月5日)

大阪府警察本部生活安全部府民安全対策課「迷惑防止条例・軽犯罪法違反取扱要領(全46頁)」(2017年4月)

警視庁迷防条例改正PT「大阪府からの聴取メモ(全1頁)」(2017年4月3日)

大阪府警察本部「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の解釈及び運用について(全17頁)」(2017年6月30日)

大阪府警察本部府民安全対策課「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例改正に伴う大阪地方検察庁の審査結果について(報告)(全14頁)」(2020年12月17日)

大阪府警察本部府民安全対策課「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等に関する条例と軽犯罪法の関係性について(全7頁)」(2020年8月)

大阪府警察本部「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の解釈及び運用について(全17頁)」(2021年3月29日)

大阪府警察本部生活安全部府民安全対策課「迷惑防止条例・軽犯罪法違反取扱要領(全59頁)」(2021年4月)

「迷惑防止条例6条の改正概要と盗撮事犯の初動捜査要領」(KOSUZO OSAKA 2022年4月号 大阪論文セレクト 令和4年度昇任試験対応)