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刑事弁護

山梨県迷惑行為防止条例第4条(卑わいな行為の禁止)の解説・痴漢・盗撮行為


2025年01月17日刑事弁護

下書きはchatGPTo1 proに作成してもらいました。加筆した部分を赤字にしています。

以下では、山梨県迷惑行為防止条例(以下「条例」という。)の第4条「卑わいな行為の禁止」について、その趣旨や規定のポイントを分かりやすく解説します。


1. 規定の趣旨

条例第4条は、いわゆる「痴漢」や「のぞき・盗撮」など、性的羞恥心を著しく害し、または不安を覚えさせるような卑わい行為を防止するための規定です。

  • 公共の場所・乗物における卑わい行為や、のぞき・盗撮といった行為を禁止することで、県民を含む社会全体で安全かつ平穏な生活環境を守ることが目的です。
  • さらに、住居・浴場・便所・更衣室など私的空間で衣服を着けない状況にある人に対するのぞき見・撮影も規制対象とします。

2. 第4条の構成

第4条は、大きく分けて下記のような構造になっています。

  1. 第1項
    • 公共の場所又は公共の乗物における「触れる行為」や「卑わいな言動」、「下着や身体をのぞき見・撮影する行為」を禁止。
  2. 第2項
    • 衣服を透かして見る機能を有する機器を用いて、公共の場所又は公共の乗物にいる人の下着等を見たり撮影したりする行為の禁止。
  3. 第3項
    • 学校・事務所・タクシー等(ただし公共の場所・乗物に該当しないもの)での下着等ののぞき見・撮影行為の禁止。
  4. 第4項
    • 住居・浴場・更衣室・便所等、人が通常衣服を着けていない状態にある空間でののぞき見・撮影行為の禁止。

いずれも、「正当な理由がないのに」「人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような方法で」という要件を満たす行為が禁止されます。


3. 第1項:公共の場所・乗物における卑わいな行為の禁止

(1) 規定の内容

第四条第1項
何人も、正当な理由がないのに、人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物において、直接に又は衣服等の上から、人の身体に触れること。
二 公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗つている人の衣服等で覆われている下着又は身体をのぞき見し、若しくは撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置すること。
三 前二号に掲げるもののほか、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。

A.身体に触れる行為(痴漢行為)

  • 「衣服等の上から」「直接」のいずれかでも処罰対象。
  • 被害者が著しく羞恥や不安を感じる痴漢、軽度なボディタッチでも、相手に与える被害が大きい場合は禁止されます。

B.のぞき見・撮影行為

  • 公共の場所・乗物で、他人の下着や身体を覗き込む行為や撮影行為を禁止。
  • 撮影が完了しなくても「撮影を目的として写真機等を向ける・設置する」だけで該当。

C.卑わいな言動

  • 性的な言葉で相手を辱める・不快にさせる行為等が含まれます。

4. 第2項:透視機能を用いた撮影行為の禁止

第四条第2項
何人も、正当な理由がないのに、人の衣服等を透かして下着等の映像を表示する機能を有する機器を使用して、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗つている人の下着等の映像を見、又は撮影してはならない。

  • 近年の技術発達で、赤外線等を用いて服の下を透かし見る機器が登場しており、そうした機器を使ってのぞき見る・撮影する行為も禁止されています。
  • 公共の場所・乗物において、透視する技術で他人の下着等を見たり記録したりする行為が処罰対象です。

5. 第3項:学校・事務所・タクシー等でののぞき見・撮影の禁止

第四条第3項
何人も、正当な理由がないのに、人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような方法で、学校、事務所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所にいる人又は乗物に乗つている人の下着等をのぞき見し、若しくは撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。

  • 上項(2項)が「公共の場所・乗物」での規定だったのに対し、学校・事務所・タクシー等(公共性はあるが「公共の場所・乗物」に該当しないケース)でも、同様に「正当な理由がない」「卑わいな目的の覗き見・撮影」は禁止されます。
  • 学校や会社、病院など多くの人が利用・出入りする場所でも、のぞき・盗撮行為を未然に防ぐ規定と言えます。

6. 第4項:住居・浴場・更衣室等でののぞき見・撮影の禁止

第四条第4項
何人も、正当な理由がないのに、人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような方法で、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人の姿態をのぞき見し、若しくは撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。

  • **プライバシー度合いの特に高い空間(住居・浴場・更衣室・トイレ等)**で、裸や下着のままの姿態を覗く・盗撮する行為を禁止。
  • 実際に撮影完了していなくとも「撮影を目的としてカメラを向ける」行為だけで違反となります。
  • 住居など私的空間での「のぞき見」を条例で規制できるかは一つの論点です。

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第23回 軽犯罪法1条23号(軽犯罪法、刑事弁護)

【判例時報賞応募論文】「性的盗撮規制の最前線-軽犯罪法の窃視罪と,迷惑防止条例の相克-」(2019年2月)


7. 本条が禁止する行為の特徴

  1. “正当な理由がないのに”
    • 防犯目的、医療行為等、社会通念上正当な理由が認められる場合を除外するための要件です。
    • 行為者の独善的な理由は認められにくい点に留意。
  2. “人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような方法”
    • 痴漢や盗撮など、相手に性的被害・恐怖・羞恥を与える態様。
    • 被害者側の感じ方も重視され、必ずしも物理的被害に限りません。
  3. “のぞき見”や“撮影”だけでなく、“カメラ向け・設置”行為も禁止
    • 実際に撮影データを得ていなくても、カメラを仕掛けたり向けたりするだけで違反になり得ます。
    • 盗撮行為の未遂段階から規制対象。
  4. 公共の場所や乗物だけでなく、学校・事務所・タクシー、住居・浴場等にも拡張
    • 卑わい行為が行われる可能性のあるあらゆる空間で規制が及ぶことを明示。
    • 特に私的空間(浴場等)でののぞき見・撮影はより深刻とみなされ、禁止対象となる。

8. 罰則との関係

  • 本条違反に対する主な罰則は、第14条第1項・第2項が中心となります。
    • (1) 下着や裸などを実際に撮影した場合:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
    • (2) それ以外の卑わいな行為の場合:6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
  • また、常習として違反する場合は、さらに重い刑罰(2年又は1年以下の懲役など)が科される可能性があります(14条6~9項)。

9. まとめ

  • 第4条は、人の性的プライバシーを侵害する卑わい行為全般を禁止し、その具体態様(触る、卑わい言動、のぞき・撮影、機器設置など)を列挙しています。
  • この規定により、痴漢・盗撮・のぞきなどを幅広く取り締まり、県民や滞在者の安全・平穏を守る仕組みが整備されています。
  • 罰則規定(第14条)も比較的重い刑事罰を定めており、違反行為は厳しく処罰され得ることに留意が必要です。

以上が、山梨県迷惑行為防止条例第4条に関する詳細な解説です。他者の性的尊厳やプライバシーを損なう行為は厳格に禁止され、みだりに行えば処罰対象となる点に注意が必要となります。

下着盗撮事件弁護要領(性的姿態等撮影罪・迷惑防止条例)

不同意わいせつ罪と、痴漢(迷惑行為防止条例違反)との分水嶺(痴漢、刑事弁護)

性的姿態等撮影罪(未遂)と、迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)、軽犯罪法違反(つきまとい)の分水嶺

山梨県迷惑行為防止条例

https://www.pref.yamanashi.jp/police/p_anzen/p_seian/meiwakubousijoureikaisei.html

(卑わいな行為の禁止)

第四条 何人も、正当な理由がないのに、人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。

一 公共の場所又は公共の乗物において、直接に又は衣服その他の身に着ける物(次号及び次項において「衣服等」という。)の上から、人の身体に触れること。

二 公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗つている人の衣服等で覆われている下着又は身体(次項及び第三項において「下着等」という。)をのぞき見し、若しくは撮影し、又は撮影する目的で写真機、ビデオカメラその他の撮影する機能を有する機器(第三項及び第四項において「写真機等」という。)を向け、若しくは設置すること。

三 前二号に掲げるもののほか、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。

2 何人も、正当な理由がないのに、人の衣服等を透かして下着等の映像を表示する機能を有する機器を使用して、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗つている人の下着等の映像を見、又は撮影してはならない。

3 何人も、正当な理由がないのに、人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような方法で、学校、事務所、タクシーその他の不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所にいる人又は乗物に乗つている人の下着等をのぞき見し、若しくは撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。

4 何人も、正当な理由がないのに、人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような方法で、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人の姿態をのぞき見し、若しくは撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。

(令二条例二八・追加)