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薬院法律事務所

刑事弁護

犯罪を行った加害者の氏名や住所は被害者に伝えられるのか


2021年08月31日読書メモ

解決事例にも書いたことがある話なのですが、別記事として作成いたします。

まず、逮捕された被疑者の氏名や顔写真については、被害者に対して開示されることが多いです。これは、被疑者と被害者が顔見知りではないかといった確認のために行われるものです。住所についても伝えられることがあるようですが、その区分はわかりません。おそらく、捜査の必要性とプライバシーの個別考慮によるのでしょう。

その他にも、被害者側の場合、犯罪捜査規範10条の3に基づいて、加害者の住所氏名を知ることができる場合があります。必ず開示されるわけではなく、開示の目的や必要性、事件の進捗状況などを考慮した上で開示が行われます。そこで、弁護人としては、あらかじめ窓口を弁護人にすることや、住所氏名を教えないように申し入れます。これも弁護人をつける意義の一つです。犯罪捜査規範で言うところの(住所氏名の開示が)「被害者の救済に資する」をなくします。事例によっては、警察に対して、(住所氏名の開示が)「関係者の名誉その他の権利を不当に侵害する」ことも指摘します。盗撮事件だと、少なくとも早期であれば、氏名も開示されていないという印象です。
※参考
刑事法令研究会編『全訂版 逐条解説犯罪捜査規範』(東京法令出版,2013年7月)33頁
「(被害者等に対する通知)
第十条の三
捜査を行うに当たっては、被害者等に対し、刑事手続の概要を説明するとともに、当該事件の捜査の経過その他被害者等の救済又は不安の解消に資すると認められる事項を通知しなければならない。
ただし、捜査その他の警察の事務若しくは公判に支障を及ぼし、又は関係者の名誉その他の権利を不当に侵害するおそれのある場合は、この限りでない。
〔平二国公委規八・追加〕一
被害者等の「救済」に資すると認められる事項その他の事件の内容 には、
○犯罪被害給付制度、損害賠償謂求制度等の概要
○警察やカウンセリング機関等の各種相談窓口
○捜査により明らかになった被疑者の氏名及び住居その他事件の内容等が含まれる。
このように、事件の内容を被害者等に通知することにより、被害者等は捜査が適正に遂行されていること等を知り その精神的打撃の軽減に資することとなる。」

兵庫県弁護士会「実践 犯罪被害者支援と刑事弁護」出版委員会 編著『実践 犯罪被害者支援と刑事弁護』(民事法研究会,2015年7月)21頁
「警察段階では「被害者連絡制度」を利用して、捜査状況や検挙状況を確認することができます(平成18年12月7日付け警察庁丙刑企発第53号ほか)。捜査が進捗していない場合には、本制度で照会することが督促的な意味も持ちます。
また、民事賠償の請求先を特定するため、犯罪捜査規範10条の3を根拠に加害者情報(氏名・連絡先等)を知らせてもらうことも可能です。同規定に基づく照会は、捜査終了後は断られることがありますので、捜査中に行っておく必要があります。」。

あくまで加害者の氏名や住居についての情報提供となりますので、加害者親族の氏名や住居については、原則として通知の対象となりません。

なお、弁護士から問い合わせても答えず、被害者かその親族にのみ直接通知するという取扱いをするところもあるようです。