神奈川県迷惑行為防止条例第3条(痴漢行為等の禁止)の解説・痴漢・盗撮行為
2025年01月19日刑事弁護
下書きはchatGPTo1 proに作成してもらいました。加筆した部分を赤字にしています。
以下では、神奈川県迷惑行為防止条例第3条（卑わい行為の禁止）について、条文の趣旨や条文構成、各段落（項）ごとの詳細な解説を行います。第3条がどのような行為を規制しているか、どのような空間で適用されるか、そして具体的に何が禁止されるかなどを整理しながら、条文の狙いを明らかにします。
1. 第3条の概要と趣旨
神奈川県迷惑行為防止条例第3条は、いわゆる「痴漢」「のぞき」「盗撮」などの性的な迷惑行為を総合的に禁止する規定です。公共空間や乗物での卑わいな接触行為、衣服の下をのぞき見る行為、下着・身体を撮影する行為など、人に深刻な羞恥心や不安を与える性質の迷惑行為を取り締まる目的で設けられています。
1.1 「卑わい行為等」への強い規制
- 公共の場での性的迷惑行為は、被害者に身体的・心理的苦痛を与えるだけでなく、周囲の公衆にも強い不安を与える。
- のぞき見や盗撮は、プライバシーを侵害し、不特定多数の利用者が安心して公共空間を使えない状況を生む。
- そこで条例は、第3条で細かく「どの空間で」「どのような行為が」禁止されるかを明確に規定し、取締りの根拠を与えています。
2. 第3条第1項：公共の場所・乗物での卑わい行為禁止
第3条第1項
何人も、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗っている人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
(１) 衣服等の上から、又は直接に人の身体に触れること。
(２) 人の下着若しくは身体(衣服等で覆われている部分に限る。)を見、又は下着等を見、若しくはその映像を記録する目的で写真機等を設置し、若しくは人に向けること。
(３) 前各号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2.1 規制対象となる空間
- 「公共の場所」：道路、公園、駅、空港、ふ頭、興行場、飲食店、遊技場など、公衆が出入りできる空間。
- 「公共の乗物」：電車、バス、船舶、航空機等、大勢が利用する交通手段。
条例においては、公共空間や公共交通手段を利用する際に起こりやすい痴漢や盗撮行為を強く規制することが大きな眼目となっています。
2.2 第1項が禁止する行為類型
- (１) 衣服等の上から、又は直接身体に触れること
- いわゆる「痴漢行為」。
- 衣服越しであっても、被害者の意思に反して卑わいな接触をする行為が該当。
- 「卑わいな意図での身体接触」はもちろん、第3条では「人を著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような方法」に限定されるが、公共空間では通常の社会通念を逸脱する接触は規制対象になり得る。
- (２) 下着等を見たり、撮影準備をする行為
- (a) 下着や身体をのぞき見る
例えば、スカート内をわざと覗き込む、衣服をめくる等が想定される。 - (b) 撮影する目的で写真機等を設置・向ける
まだ撮っていないとしても、カメラを構える、スマートフォンをスカートに差し向ける等、撮影準備の段階でアウト。 - いわゆる盗撮・のぞき行為を広くカバーし、未然に防ぐ仕組み。
- (a) 下着や身体をのぞき見る
- (３) 前各号に掲げるもののほか、卑わいな言動
- 性的に卑猥な言葉を発するなどの卑わいなコミュニケーション行為。
- 周囲や相手に著しい羞恥心や不安感を与える発言、しつような性的発言なども該当し得る。
3. 第3条第2項：公共空間以外（不特定多数が利用する場所・乗物）での「のぞき・撮影」行為
第3条第2項
何人も、集会場、事務所、学校その他の不特定若しくは多数の者が利用する場所…にいる人又は貸切バス、タクシーその他の不特定若しくは多数の者が利用する乗物…に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で…第1項第2号に掲げる行為をしてはならない。
3.1 対象空間
- **「不特定又は多数の者が利用する場所」**で、公共の場所に含まれない空間。 例: 集会場、事務所、学校、タクシー、貸切バスなど。
- 公共の乗物から外れた形態の車両（タクシー等）や「準公共的空間」での同種行為を追加的に規制。
3.2 禁止行為の内容
- 「第1項第2号」に相当する行為、すなわち**「下着や身体をのぞき見」または「撮影する目的でカメラを向ける・設置する」**行為。
- この規定により、たとえ公共空間ではなくても、多数の人が利用・出入りする場所や乗物での盗撮・のぞきが処罰対象となる。
4. 第3条第3項：住居・浴場・更衣場・便所等でののぞき・撮影
第3条第3項
何人も、人を著しく羞恥させ、若しくは人に不安を覚えさせるような方法で住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服等の全部又は一部を着けないでいるような場所にいる人の姿態を見…又は…(中略)…写真機等を設置し…人に向けてはならない。
4.1 規制対象場所
- 「住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいる場所」
→ 銭湯、温泉、プールの更衣室、トイレ、自宅の浴室等。 - プライバシーが非常に高い空間で、かつ裸体になる可能性のある場所を幅広く想定。
4.2 禁止行為
- 姿態を見ること（のぞき見）
- 盗撮だけでなく、視線で覗くだけでもNG。
- 神奈川県警察本部神奈川県迷惑行為防止条例改正プロジェクト「神奈川県迷惑行為防止条例逐条解説(第3条・第11条)(全46頁)」(2014年6月)16頁「堂々と見る、のぞき見る、磯器鞭用して見るなど、全て見る行為が本号の対象行為となりその手段に限定はない。」
- さらに、衣服を着ている状態の人であっても、「見る行為」を規制していることが特色です。多くの自治体では実際に衣服の一部または全部をつけていないことを要件にしていますが、神奈川県では兵庫県同様に衣服を着ていても対象としており、さらに、「撮影行為」や「撮影準備行為」だけでなく、「見る」行為を規制しています。例えば、住居でソファーに座って読書している人を見た場合でも、「人を著しく羞恥させ、若しくは人に不安を覚えさせるような方法」とされれば迷惑行為防止条例違反が成立します。もっとも、この場合に処罰することができるかどうかは重大な論点になるでしょう。
- そもそも、私的空間での「のぞき見」を条例で規制できるかは一つの論点です。
- 写真機等を設置・向けること
- 撮影準備行為そのものを禁止。
- 正当な理由がないのに…
- 医療・介助など正当業務上の理由なく行うのは違反。
4.3 規制の狙い
- 住居等の「完全なプライベート空間」における盗撮・のぞきは特に深刻な被害を生むため、条例としても明確に違反行為と規定。
5. 総合的な解説：第3条がカバーする内容
- 痴漢（身体へのわいせつ接触）:
- 第1項(1) で公共空間にいる人への接触を全面禁止。
- のぞき見や盗撮:
- 第1項(2) により公共空間での下着・身体ののぞき・撮影を禁止。
- 第2項により公共空間でなくても「不特定多数が利用する場所・乗物」内でも同様に規制。
- 第3項により、住居・浴場・更衣室等でも人を著しく羞恥させるようなのぞき・撮影を禁止。
- 卑わいな言動:
- 第1項(3) によって卑猥な言葉・行為・ジェスチャー等の言動も規制される。
また「正当な理由のない」行為が前提であり、医療行為や保安検査等の社会的に妥当とされる身体接触・撮影行為が直ちに違反になるわけではありません。
6. 違反した場合の罰則
- 第3条違反は、条例第15条第1項において**「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」**に処される可能性がある。
- さらに同条例第16条に規定の常習犯となれば、より重い刑が科される(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金など)。
- 一度撮影を完成させたか否かを問わず、カメラを「向けただけ」「設置しただけ」でも違反が成立し得る点に注意が必要。
7. まとめと留意点
7.1 第3条の役割
- 公共の場所や乗物で起こりやすい「痴漢」「下着ののぞき」「盗撮」「卑わいな言動」を広く対象とする中心的な条文。
- さらに準公共的空間（集会所、学校、タクシー等）や、住居・更衣室などのプライベート空間まで幅広く網をかけている。
7.2 執行面の意義
- 条例違反として取り締まることで、被害者保護や迷惑行為の未然防止を可能とする。
- 第3条は「撮影準備（写真機を向ける・設置する）」段階、覗き見行為のみでも違反が成立するなど、強い抑止力がある規定。
7.3 「正当な理由がないのに」という要件
- 社会通念上「やむを得ない・正当と評価される場面」を除外する文言。
- 神奈川県警察本部神奈川県迷惑行為防止条例改正プロジェクト「神奈川県迷惑行為防止条例逐条解説(第3条・第11条)(全46頁)」(2014年6月)18頁【「健全な社会常識から判断して正当視されないもの。」という意味である。】
- 逆に言えば、ほとんどの盗撮や痴漢行為には「正当な理由」が存在しないため、広く規制可能。
8. 結論
神奈川県迷惑行為防止条例第3条（卑わい行為の禁止）は、公衆への性的迷惑行為の主要な取り締まり根拠として、以下のような特徴があります。
- 公共空間・乗物における痴漢行為、のぞき・盗撮、卑わいな言動を全面禁止。
- 公共空間以外（集会場・学校等）や住居・浴場・更衣室といったプライバシー性の高い場所でも、のぞき・盗撮を厳しく取り締まる仕組みを整備。
- 「カメラを向ける・設置する」段階で未遂のままでも規制が及ぶ。
- 違反時には罰則が科される上、常習犯への加重規定もあり再犯を防ぐ。
こうした規定により、性犯罪や迷惑行為を深刻に受け止め、被害者保護と公共の安全確保を図っているのが第3条の大きな狙いとなっています。
神奈川県迷惑行為防止条例
第３条 何人も、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗つている人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
(１) 衣服その他の身に着ける物（以下「衣服等」という。）の上から、又は直接に人の身体に触れること。
(２) 人の下着若しくは身体（これらのうち衣服等で覆われている部分に限る。以下「下着等」という。）を見、又は人の下着等を見、若しくはその映像を記録する目的で写真機その他これに類する機器（以下「写真機等」という。）を設置し、若しくは人に向けること。
(３) 前各号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
２ 何人も、集会場、事務所、学校その他の不特定若しくは多数の者が利用する場所（公共の場所を除く。）にいる人又は貸切バス、タクシーその他の不特定若しくは多数の者が利用する乗物（公共の乗物を除く。）に乗つている人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、前項第２号に掲げる行為をしてはならない。
３ 何人も、人を著しく羞恥させ、若しくは人に不安を覚えさせるような方法で住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服等の全部若しくは一部を着けないでいるような場所にいる人の姿態を見、又は、正当な理由がないのに、衣服等の全部若しくは一部を着けないで当該場所にいる人の姿態を見、若しくはその映像を記録する目的で、写真機等を設置し、若しくは人に向けてはならない。
全部改正〔平成18年条例89号〕、一部改正〔平成26年条例32号・令和２年65号〕