秋田県迷惑行為等防止条例第4条(卑わいな行為の禁止)の解説・痴漢・盗撮行為
2025年01月19日刑事弁護
下書きはchatGPTo1 proに作成してもらいました。加筆した部分を赤字にしています。
以下では、秋田県迷惑行為防止条例 第4条（卑わいな行為の禁止） の条文内容を中心に、その趣旨・具体的内容・他条との関係や実務上の留意点を詳細に解説します。なお、本条例は秋田県における公衆に著しく迷惑をかける行為を取り締まり、県民の平穏な生活を守る目的で制定されたものであり、第4条は、痴漢や盗撮といった卑わいな行為を規制する主要な条文となります。
1. 条文の趣旨と全体像
第4条は、「卑わいな行為の禁止」と題して、公共の場所や公共の乗物など、不特定多数が利用する空間を中心に、痴漢行為や盗撮行為をはじめとした性的な迷惑行為を広範に禁止しています。具体的には、
- 身体への不当な接触（痴漢行為）
- 他人の下着や身体をのぞき見・撮影する行為（盗撮行為）
- それらをしようとする目的でカメラ等を向け、設置する行為
- その他の卑わいな言動
といった行為を禁止対象とし、これに違反した場合は、本条例の罰則規定に基づき処罰されます。
1.1 制定背景
- 社会問題化している痴漢行為・盗撮行為への対応強化が要請されてきたことが背景にある。
- 刑法で処罰できる行為（強制わいせつ等）に至らない行為であっても、本条例により早期に取り締まることで被害を防止する。
1.2 条文の位置づけ
- 第3条が“公共の場所での粗暴行為等”を禁止するのに対し、第4条は“卑わいな行為”を軸に規制する。
- とりわけ、性的羞恥心の侵害を中心に据えている点が特徴的。
2. 第4条第1項
「何人も、正当な理由がないのに、公共の場所又は公共の乗物において、人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。」
一 人の身体に、衣服その他の身に着ける物の上から接触し、又は直接接触すること。
二 衣服等で覆われている人の下着又は身体をのぞき見すること。
三 前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2.1 規制対象となる場所
- 「公共の場所又は公共の乗物」 が対象。
- 具体例：道路、公園、駅、興行場、飲食店、映画館などのほか、電車、バス、船舶、航空機など。不特定又は多数の者が利用・出入りできる場所が含まれる。
2.2 禁止される行為
- 身体への接触（痴漢行為）
- 衣服の上から触るだけでも違反となるほか、直接触る行為も当然禁止。
- 満員電車等でのわいせつ行為、通りすがりに身体を触るなどが典型例。
- 下着等ののぞき見（覗き行為）
- スカート内や衣服の隙間を覗き込む行為などを明確に禁止。
- カメラや鏡等を使わずに直接肉眼で覗き見する行為も当項で違反となる。
- その他卑わいな言動
- 性的に卑猥な言葉をかけるなどのセクハラ発言や、露骨な挑発行為が該当。
- 被害者が強い羞恥心や恐怖を感じるような言動が対象。
2.3 「正当な理由がないのに」の趣旨
- 医療行為や救護行為のように、正当かつ必要不可欠な場合は適用されない。
- プライベートな同意が明確にある場合は除外されるが、行き過ぎた行為であれば依然として処罰の対象になりうる。
2.4 「人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような」
- 被害者が女性・男性・子どもを問わず、主観的にも客観的にも性的な嫌悪や恐怖を抱かせる行為を狙い撃ちする。
- 「著しく害し」は、一般人の感覚でも卑猥だと認められる行為が対象となる。
3. 第4条第2項
「何人も、正当な理由がないのに、次に掲げる場所又は乗物において、下着等を撮影し、又は撮影しようとして写真機その他の機器を人に向け、若しくは設置してはならない。」
一 公共の場所又は公共の乗物
二 事務所、教室、貸切バスその他の特定かつ多数の人が集まる場所又は利用する乗物
3.1 趣旨
- 第1項が“のぞき見・卑わいな言動”全般を扱うのに対し、第2項では**“撮影行為や機器の設置”**に焦点を当てる。
- “公共の場所”や“公共の乗物”に加え、“事務所、教室、貸切バス”等の“特定かつ多数の人が集まる場所又は乗物”も規制対象に含めることで、私的な空間でも多数が利用する場合には盗撮禁止の適用を広げている。
3.2 規制対象となる行為
- 下着等の撮影
- スマートフォンや小型カメラでの盗撮が該当。
- 撮影未遂の場合でも、「撮影しようとして機器を人に向ける・設置する」行為自体がアウト。
- 特定かつ多数の人が利用しうる場所・乗物
- 会社の事務所、学校の教室や学習塾の教室、社員バス、貸切バスなど。
- 完全に不特定多数とは言えないが、多数が出入り可能であれば規制される。
3.3 ポイント
- 第1項と合わせて読むと、のぞき行為の段階で規制されるが、第2項は特に「撮影」や「機器の設置行為」を厳しく取り締まる。
- この規定は、盗撮行為への対策として大きな意味を持つ。
4. 第4条第3項
「何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所において当該状態でいる人を撮影し、又は撮影しようとして写真機等を向け、若しくは設置してはならない。」
4.1 趣旨と位置づけ
- 住居、浴場、更衣室、トイレ等、人が通常衣服をつけていない可能性が高い空間での無断撮影を禁止。
- プライバシー保護の必要性が最も高い空間ゆえ、のぞきや盗撮が行われると被害者が深刻な精神的被害を受ける可能性が高い。
4.2 禁止行為
- 撮影そのもの、及び撮影しようとしてカメラを向ける/設置する行為。
- 実際にカメラが稼働したかを問わず、“設置”や“差し向ける”行為も取り締まり対象。
- 秋田県の条例は「のぞき見」を条例の規制から排除しています。私的空間での「のぞき見」を条例で規制できるかは一つの論点です。
4.3 実務上のポイント
- 風呂場や更衣室への隠しカメラを仕掛ける事例、トイレの個室内へのカメラ設置等がここで規制される。
- 一般的に被害者が最も羞恥心を害される場所での盗撮行為は、極めて悪質とされるため、条例でも厳重な規定となっている。
5. 「正当な理由がないのに」の意味
第4条全般に共通して、「正当な理由がないのに」という文言がある。これには、
- 医療行為や救護行為など、本人の承諾や緊急性などによってやむを得ない場合は除外される。
- また、芸術写真や報道目的など、撮影の必要性が客観的に立証される場合でも、被写体の人権保護や犯罪性の有無との兼ね合いを慎重に判断する。
- 単なる趣味や興味で無断撮影を行うのは、明らかに「正当な理由がない」と認められる。
6. 違反した場合の罰則
本条例の罰則規定（第17条以降）では、第4条に違反した場合、**「公共の場所等においてたかり行為の禁止」**とは別の項…おっと、本文見ると…
第4条に関しては**「卑わいな行為の禁止」**。
具体的罰則は第20条（第二十条の各号）などで定められている。
- 罰金または拘留若しくは科料 が科される可能性が高い。
- 常習性 が認められると刑罰が加重される（「常習として…」という規定あり）。
実際には、
- 第20条第1項「第三条の規定に違反した者」の並びに「第四条…の規定に違反した者」と列挙されており、違反すれば50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料、常習であれば6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が規定されていることが多い。
- より悪質な場合には刑法上の強制わいせつ等に該当するケースもあるため、条例違反か刑法犯かを警察が判断する。
7. 本条の実務上の意味
- 痴漢行為や盗撮行為を早期に取り締まるための条例規定。
- 刑法上の強制わいせつ罪や迷惑防止条例違反など、類似の規定とのかね合いで、軽微な行為でも本条例で取り締まることが可能。
- 携帯電話や小型カメラ等を使った盗撮被害が増加している現代において、特に撮影目的でカメラ等を差し向ける・設置する時点で処罰できる点が被害防止に大きい。
8. 本条と他条との関係
- 第3条（公共の場所等における粗暴行為） ：暴力的・粗暴な行為が対象
- 第4条（本条：卑わいな行為の禁止） ：性的迷惑行為、痴漢や盗撮等
- 第6条など：客引き、たかり行為等
条例全体で多様な迷惑行為を幅広く規制するが、その中でも第4条は性的嫌がらせやプライバシー侵害を扱う中心的な規定である。
9. まとめ
秋田県迷惑行為防止条例 第4条は、**卑わいな行為（痴漢、のぞき見、盗撮等）**を幅広く禁止し、被害者の性的羞恥心やプライバシーを守ることを狙いとした重要な条文です。
- 衣服の上からの身体接触、直接の身体接触 いずれも規制。
- のぞき行為、撮影行為 は、撮影機器を向けただけでも違法となりうる。
- 公共の場所以外でも、多数が利用する場所や撮影対象が着衣なしの状態である場所を含め、広範囲に規制。
- 「正当な理由がない」範囲を厳格に限定することで、あらゆる不必要で卑わいな行為を排除する。
- 違反すれば罰金や拘留等の制裁が科され、常習性があるとより重い罰則を科せられる。
こうして、本条は、痴漢や盗撮による被害が多発している現代社会において、県民の生活の安心と安全を確保するために欠かせない規定となっていると言えます。
秋田県迷惑行為等防止条例
https://www1.g-reiki.net/pref_akita/reiki_honbun/u600RG00000909.html
(卑わいな行為の禁止)
第四条 何人も、正当な理由がないのに、公共の場所又は公共の乗物において、人の性的羞恥心を著しく害し、又は人に不安を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
一 人の身体に、衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から接触し、又は直接接触すること。
二 衣服等で覆われている人の下着又は身体(以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
三 前二号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2 何人も、正当な理由がないのに、次に掲げる場所又は乗物において、下着等を撮影し、又は撮影しようとして写真機その他の機器を人に向け、若しくは設置してはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物
二 事務所、教室、貸切バスその他の特定かつ多数の人が集まる場所又は利用する乗物
3 何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所において当該状態でいる人を撮影し、又は撮影しようとして写真機その他の機器を当該状態でいる人に向け、若しくは設置してはならない。
(平二一条例八九・追加、令元条例四二・令三条例三九・一部改正)
【参考文献】※情報公開請求で入手した資料はマスキング有り
秋田県警察本部「秋田県公衆に著しく迷惑をかける暴力的な不良行為等の防止に関する条例逐条解説(全117頁)」(2010年2月)
秋田県警察本部「秋田県公衆に著しく迷惑をかける暴力的な不良行為等の防止に関する条例逐条解説(全125頁)」(2020年4月)※入手は逐条解説がある15頁以後