鳥取県迷惑行為防止条例第3条(卑わいな行為の禁止)の解説・痴漢・盗撮行為
2025年01月14日刑事弁護
下書きはchatGPTo1 proに作成してもらいました。加筆した部分を赤字にしています。
以下では、鳥取県迷惑行為防止条例 第3条(卑わいな行為等の禁止)を中心に、これまでの解説スタイルを踏襲しながら詳細かつ分量多めに説明します。痴漢行為、盗撮行為、衣服透かし撮りなど、多様な性犯罪的迷惑行為を広く規制し、県民・滞在者の安心と安全を守るための中心規定として、どのような構造をもって取り締まっているのか、条文構成を順を追って解説していきます。
1. 第3条(卑わいな行為等の禁止)の位置づけと目的
(1) 条例全体との関係
- 鳥取県迷惑行為防止条例(昭和38年3月30日条例第22号)は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等」の防止を狙いとし、県民・滞在者の平穏な生活を保持するために制定されています(第1条)。
- 第3条は、その中でも性犯罪的性質を有する行為、いわゆる「卑わいな行為」に特化して幅広く取り締まる規定であり、痴漢や盗撮、透かし撮影などの多様な迷惑行為を規制する中心的な役割を果たしています。
(2) 保護法益
- 第3条が想定する行為は、被害者に強い羞恥や恐怖・嫌悪感を与え、精神的にも大きな被害をもたらすものです。
- こうした行為を条例で禁止・抑止することで、公共交通機関や商業施設等の公共空間のみならず、学校・事務所・タクシーなど半公共的空間における被害を幅広くカバーし、被害を未然に防止する役割が大きいといえます。
2. 第3条第1項
(第3条第1項)
「何人も、公共の場所若しくは公共の乗物又は集会所、事務所、教室、タクシーその他不特定若しくは多数の者が利用するような場所若しくは乗物において、人に対し、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。」
(1) 規制対象の場所
- 公共の場所: 道路、公園、広場、駅、空港、埠頭、興行場、飲食店など、不特定または多数の者が自由に出入りできる場所。
- 公共の乗物: 汽車、電車、バス、船舶、航空機など、多くの人が利用する乗物。
- さらに、「集会所、事務所、教室、タクシーその他不特定又は多数の者が利用するような場所・乗物」も対象としており、実質的には公共空間+半公共空間を網羅しています。
(2) 禁止行為(第1項各号)
- (1) 他人の身体に接触する行為(公共空間のみ)
- 衣服の上から、あるいは直接に相手の身体を触るいわゆる痴漢行為。
- 条文上「公共の場所又は公共の乗物において行うものに限る」とあり、学校や事務所等での接触行為は別途、他の規定や刑法で対処される場合がありうる。
- (2) 衣服等で覆われている下着や身体の「のぞき見」
- のぞき行為を明確に取り締まる規定。
- スマホや鏡などを使ってスカート内を覗く、相手の衣服の隙間を狙うといった行為が典型例。
- (3) 下着等を写真機等で撮影・録画、またはその目的で差し向け・設置する行為
- 盗撮行為や盗撮準備行為を取り締まる中核規定。
- カバンの中にカメラを仕込み、スカート内を撮影するなどの行為を対象。差し向け・設置行為も含むため、準備段階での摘発が可能。
- (4) 衣服等を透かして見ることのできる写真機等を用いて、下着等の映像を見・撮影・録画する行為
- いわゆる「透かし撮り」対策。赤外線フィルターや特殊カメラで衣服越しに身体・下着を映し出す行為を規制。
- 技術の進歩で新しい盗撮手段が増加している現状に対応するため、多くの自治体で明文化されている。
- (5) 前各号に掲げるもののほか、卑わいな言動
- 接触や撮影以外でも、「みだらな言葉遣い」「公衆の前での猥褻な行為」など、相手に強い羞恥や嫌悪感を与える卑猥なパフォーマンス・発言を包括的に取り締まる。
(3) 「人を著しく羞恥させ、又は人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で」
- いずれの行為も、被害者の視点で「強い羞恥や恐怖・嫌悪」を覚える程度であることが要求され、正当な理由がない限り違反。
- 医療や介助など社会通念上正当と認められる場合は外れるが、痴漢や盗撮には該当しないのが通例。
(4) 典型事例
- 満員バスや電車で臀部・胸を触る痴漢
- 床置きスマホ・鏡を使ったスカート内ののぞき
- スカート内盗撮(準備も含む)
- 透視カメラを用いた衣服透かし撮影
- 公衆での性的侮蔑や猥褻発言
情報公開によって入手した文書によると、鳥取県においては、相手の同意を得ての不特定多数の者が利用するような場所での下着撮影行為については条例違反として取り扱わないことが示唆されています。
鳥取県警察本部生活安全部生活安全企画課?「県からの質疑に対する回答案(全8頁)」(時期不明)
【 第3条関連
「みだりに」も「正当な理由なく」もほぼ同じ意味であるが、「正当な理由がなく」は行為者の動機、目的、認識など主観的色彩が強いのに対し、「みだりに」は行為者の手段、方法、態様、結果など客観的側面から観察した場合の懸念である。
今回の改正で盗撮の規制範囲が広がり、例えば不特定多数の者が利用するような場所で下着を撮影していた場合、相手の同意を取って撮影する場合もあることが考えられることから、その場合「みだり」だと行為を行った時点で動機の有無にかかわらず、条例違反と見なされかねない。
また、当県の現行条例では、し「みだりに」を使用していたごとから、それをそのまま使用することを想定していたため、「みだりに」と「正当な理由がなく」が混在する案となっていた。
しかし、「みだりに」、「正当な理由がなく」が混在すれば、県民に混乱を招くおそれ、条例違反での検挙の際の解釈に支障をきたすおそれがあることから、東京都方式で各盗撮行為を「正当な理由がなく」で括ることを考えている。新たな条文案については、別紙のとおり。】
鳥取県警察本部生活安全部生活安全企画課?「県からの質疑に対する回答案(全1頁)」(2020年4月17日)
【〇卑わい行為規制に関し、「みだりに」を「正当な理由なく」とすることについて、「正当な理由なく」の方が即アウトという印象を受けるが、規制が現行よりも厳しくなるのか。
→ 両者とも、社会的妥当性を欠く方法・内容という意味合いであるが、「みだりに」,...行為者の手段、方法、態様、認識等の客観的側面の概念「正当な理由なく」…行為者の動機、目的、認識等の主観的色彩が強い
と考えている。
ご指摘のとおり、改正案では「正当な理由なく」と変更しており、表面上は規制内容として若干範囲が広がる規制表記となると思われるが、警察の取締りでは、基本的には主観的な要素だけで判断することはなく、客振的な要素を勘案の上、総合的に事件性、立件の可否を判断している。
また、両者とも社会的妥当性を欠く方法、内容という意味合いの下、側面的、補足的な要素として、どちらかといえば、客観的、又は主観的側面が強いことがあげられるものと考えており、表記の違いに大きな問題はないと考えている。
また、相手方の承諾を得ているような場合も想定されること、さらには、「正当な理由なく」の表記が、一般的な理解を得ることにもつながるものと思われる。よって、結論として、「正当な理由なく」に表記変更し、さらに、表記の違いによって、実務上、規制範囲が変更となるものではないと考えている。】
3. 第3条第2項
(第3条第2項)
「何人も、正当な理由がないのに、次に掲げる場所における衣服の全部又は一部を着けない状態にある人の姿態を写真機等を用いて撮影し…(略)」
(1) 衣服を脱ぐ可能性の高い場所
- 公衆浴場、公衆便所、更衣室など、一般の公衆が衣服を脱ぐ状況が想定される場所と、住居・浴場・更衣室・便所その他の私的空間を二分類で列挙。
- 条文上「(1)公衆が使用できる場所」および「(2)私的空間だが衣服を脱ぐ可能性が高い場所」での撮影を規制。
(2) 禁止される行為
- 裸や下着姿でいる人を写真機等で撮影・録画、またはその準備行為(カメラを差し向け・設置)を禁止。
- 正当な理由なく私的プライバシーを侵害する行為を取り締まるため、衣服を脱ぐ場面での盗撮を想定。
- 住居など私的空間での「のぞき見」を条例で規制できるかは一つの論点です。鳥取県はあえて外しています。
(3) 典型事例
- 公衆浴場で隠しカメラを仕掛ける
- 更衣室の隙間から裸を撮影
- トイレの個室上部からスマホを差し込み録画
4. 全体的な特徴
- 公共空間+半公共空間+脱衣空間の三レイヤーを網羅し、痴漢・のぞき見・盗撮・透かし撮りなど幅広い性犯罪的行為を取り締まる。
- **撮影準備行為(カメラ差し向け・設置)**も明確に含まれるため、未然に摘発可能。
- 透かし撮影という新しい技術的手口にも対応し、被害を防ぐ仕組みを整備。
5. 罰則
- 第10条により、「第3条第1項に違反して第2号・第3号・第4号の行為を行った者、または第3条第2項に違反した者」には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる(常習なら2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。
- 第3条第1項第1号・第5号や、第4条違反については、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」(常習なら1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。
- 条例違反でも刑事処分が下され、有罪となれば前科が付くため、社会的影響は非常に大きい。
6. まとめ
- 鳥取県迷惑行為防止条例 第3条は、痴漢・盗撮・のぞき見・透かし撮り・卑猥言動など、多様な性犯罪的迷惑行為を幅広く規制する中心的条文。
- まず公共の場所・乗物はもちろん、半公共的空間(学校、事務所、タクシー等)や衣服を脱ぐ可能性のある場所(浴場、更衣室、トイレ、住居など)まで段階的に取り締まる。
- 撮影準備行為まで包含していることで、盗撮の未然防止にも配慮。また、近年問題化している衣服透かし撮影にも明確に対応している。
- 罰則は最大1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(常習で2年以下)など比較的厳しく、本条例違反でも有罪となれば前科が付くという重大性を持つ。
- 国の刑法や「性的姿態等撮影罪」による処罰を補完する形で、より軽微な事案・未遂段階・特殊な撮影手口などにも対応し、被害を未然に防ぐ狙いが明確に表れている。
こうして、第3条は「公共空間から衣服を脱ぐ私的空間まで」痴漢や盗撮を多面的に規制し、未然摘発を可能にし、被害者の性的プライバシーを強力に守る重要な条文といえます。条例改正を重ねることで、技術の進歩や社会の変化による新手の迷惑行為にも対応し、県民や訪問者の生活安心を維持する仕組みを整備しています。
鳥取県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
https://www1.g-reiki.net/tottori/reiki_honbun/k500RG00000948.html
(卑わいな行為等の禁止)
第3条 何人も、公共の場所若しくは公共の乗物又は集会所、事務所、教室、タクシーその他不特定若しくは多数の者が利用するような場所若しくは乗物において、人に対し、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人の身体に、直接又は衣服その他の身に付ける物(以下「衣服等」という。)の上から触れること(公共の場所又は公共の乗物において行うものに限る。)。
(2) 衣服等で覆われている内側の人の下着又は身体(以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
(3) 下着等を写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を用いて撮影し、若しくは録画し、又は撮影し、若しくは録画する目的で写真機等を差し向け、若しくは設置すること。
(4) 衣服等を透かして見ることのできる写真機等を用いて、下着等の映像を見、又は撮影し、若しくは録画すること。
(5) 前各号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること(公共の場所又は公共の乗物において行うものに限る。)。
2 何人も、正当な理由がないのに、次に掲げる場所における衣服の全部又は一部を着けない状態にある人の姿態を写真機等を用いて撮影し、若しくは録画し、又は撮影し、若しくは録画する目的で写真機等を差し向け、若しくは設置してはならない。
(1) 公衆浴場、公衆便所、公衆が使用できる更衣室その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所
(2) 住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所(前号に該当するものを除く。)
(平17条例40・追加、令2条例66・一部改正)
【参考文献】※情報公開で入手した資料は一部マスキング有
鳥取県警察本部生活安全部生活安全企画課石田「方針伺い(全11頁)」(2019年10月8日)
文書作成者不明「ヒアリング結果(全1頁)」(作成時期不明)
鳥取県警察本部生活安全部生活安全企画課?「県からの質疑に対する回答案(全8頁)」(時期不明)
文書作成者不明「質問です(全1頁)」(作成時期不明)
鳥取県警察本部生活安全部生活安全企画課?「県からの質疑に対する回答案(全2頁)」(時期不明
河藤正隆「条例法制審査D.B]:質問3(全1頁)」(作成時期不明)
鳥取県警察本部生活安全部生活安全企画課?「県からの質疑に対する回答案(全1頁)」(2020年4月17日)
鳥取県政策法務課「迷惑防止条例改正に係る検察庁検討について(全11頁)」(2020年6月26日)
鳥取県警察本部生活安全部生活安全企画課「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(全44頁)」(2021年3月)