実務の判断過程を、文章にする。
私は、日々の事件処理と並行して、捜査実務、証拠評価、弁護活動に関する研究と執筆に取り組んでいます。
何を確認し、どのような可能性を検討し、なぜその対応を選ぶのか。大切にしているのは、結論だけでなく、その結論に至る判断の過程を伝えることです。
事件から学んだことを文献と照らして考え、文章に整理する。その過程で得た知識を、再び事件処理に生かす。研究と実務を切り離さず、目の前の依頼者にとって役立つ判断につなげたいと考えています。
警察官向け専門誌『警察公論』で、実務教養小説「涼井警部補の事件簿」を連載しています。
本誌では捜査側、オンライン版では弁護人側の視点から、同じ事件を描いています。警察実務を研究する弁護士として、双方の立場で何が問題になり、どのように対応を考えるのかを文章にしています。
このページの内容
1.『警察公論』の連載
2.専門誌への論考・寄稿
3.書籍・新聞への寄稿
4.研究の進め方と、事件処理への活用
5.ホームページでの実務解説
6.研修・講演、執筆に関するお問い合わせ
1.『警察公論』の連載
実務教養小説「涼井警部補の事件簿」
掲載誌:『警察公論』(立花書房)
連載開始:2026年8月号(2026年7月開始)
著者:鐘ケ江啓司
立花書房編集部からのご依頼を受け、警察官向けに、弁護人の視点も踏まえた捜査について解説する実務教養小説を執筆しています。
本誌では、涼井警部補たちが事件を検討し、捜査を進める過程を描きます。オンライン版のアナザーサイドでは、同じ事件について、弁護人がご本人から何を聞き、証拠や手続のどこを問題と捉え、どのような弁護活動を考えるのかを描いています。
一つの事件を、二つの立場から考える
捜査側から見ると必要だと思われる対応が、弁護人から見ると検討すべき問題を含んでいることがあります。反対に、弁護人の主張を検討することで、捜査側があらかじめ確認すべき事実や証拠が見えてくることもあります。
本連載では、任意捜査、強制捜査、証拠評価、再犯防止、情状弁護などを取り上げています。単に捜査側と弁護側を対立させるのではなく、それぞれの職責の下で、どのように判断を組み立てるのかを伝えたいと考えています。
小説の形式を選んだのは、条文や結論の説明だけでは伝えにくい、事情の聴き取り、資料の読み方、議論の進め方まで描くためです。読者が別の事件に向き合ったときにも、考える手掛かりとして使える作品を目指しています。
第1回「大麻所持の否認(黙秘)事件」
『警察公論』2026年8月号/出版社サイト公開日:2026年7月15日
同じ事件を、捜査側と弁護人側の双方からお読みいただけます。
弁護人側:「涼井警部補の事件簿―弁護士・平野の視点から―」を読む
いずれも、立花書房「警察公論オンライン」の掲載ページです。閲覧条件は、掲載先の案内をご確認ください。
本連載は、実務を考えるための小説です。登場する事件を、私が担当した裁判実績として紹介するものではありません。
2.専門誌への論考・寄稿
警察の報道発表回避(実名報道回避)のための弁護活動
『季刊刑事弁護』121号(現代人文社、2025年1月)
著者:鐘ケ江啓司
警察が報道機関に被疑者・被告人の実名などを発表することについて、警察の内部基準を踏まえ、報道発表の回避に向けて弁護人が行う活動を解説した論考です。
私がこの問題を研究しているのは、依頼者が心配していることが、刑事処分だけではないからです。仕事、ご家族との暮らし、事件後の生活への影響も踏まえ、報道発表について、どの段階で何を確認し、どのような意見を述べるかを考えています。
捜査機関の運用を調べることを、依頼者のための具体的な弁護活動につなげる取組みです。報道を必ず防げるという趣旨ではなく、個別の事情に応じて検討する活動を紹介しています。
オービス画像をもとにした鑑定に疑義を示し高裁で逆転無罪判決を得た事例
『季刊刑事弁護』101号(現代人文社、2020年1月)
共同執筆:市原史雄・鐘ケ江啓司
福岡高等裁判所令和元年11月14日判決で無罪となった速度違反事件について、担当弁護人としての活動を報告したものです。私は控訴審から弁護人として参加しました。
オービス画像を基にした顔画像鑑定の評価が問題となった事件です。鑑定の結論だけを見るのではなく、どのような根拠と方法で判断され、その証拠から何が言えるのかを検討するという問題に向き合いました。
実際に担当した事件での検討を、ほかの実務家が参照できる報告にする。そのような執筆にも取り組んでいます。
ひと筆 私が古い法律書を買い集める理由
『自由と正義』2021年9月号(日本弁護士連合会)
著者:鐘ケ江啓司
師である春山九州男弁護士との思い出や、古い法律書を収集している理由について執筆しました。
日々の事件処理を支える学びを、どのように積み重ねていくのか。私の研究姿勢や、弁護士としての仕事の背景をご覧いただける寄稿です。
3.書籍・新聞への寄稿
先輩弁護士のアドバイスから学ぶ弁護士キャリア失敗事例集
北周士編『気をつけよう!!同じ轍は踏ませない!先輩弁護士のアドバイスから学ぶ弁護士キャリア失敗事例集』
第一法規、2025年9月
匿名の執筆者として、経験談に基づいたコラムを寄稿しました。弁護士のキャリアや仕事における失敗・災難から学ぶための書籍への、分担執筆です。
コラム「修習生の時に出会いたかった本」
伊藤建・國富さとみ監修『新版 司法試験に受かったら――司法修習って何だろう?』
現代人文社、2024年8月発売
担当:コラム「修習生の時に出会いたかった本」
司法修習生に向けて、お勧めの法律書や漫画を紹介しました。書籍全体の執筆ではなく、コラムの寄稿として参加しています。
書籍の紹介・目次を見る(版元ドットコム・出版社提供の書誌情報)
西日本新聞「ほう!な話」
労働問題について、一般の読者に向けた新聞コラムも執筆しました。
| 2013年10月 | 西日本新聞朝刊「ほう!な話」 「パワハラ、労災認定の件数増加」 |
|---|---|
| 2013年7月 | 西日本新聞朝刊「ほう!な話」 「パワハラ、労働相談を利用して」 |
4.研究の進め方と、事件処理への活用
警察官・検察官向けの文献も読み、判断の前提を調べる
私は、一般に流通している法律書や法律雑誌に加え、警察官・検察官向けの文献、絶版となった書籍、雑誌のバックナンバーも収集・研究しています。
調べたいのは、手続の名称や最終的な結論だけではありません。現場で何を確認し、誰がどの段階で判断し、その判断にどのような事情が影響するのか。そうした実務の過程を理解することで、弁護士として確認すべきことや、意見を伝える時期を考えます。
古い文献にも、判断の背景や考え方が詳しく説明されていることがあります。ただし、過去の記述を現在の運用と同一視せず、法改正や後の裁判例などとの関係を確かめながら参照します。
収集した文献を、必要な場面で参照できるようにする
収集した法律書や法律雑誌は、自ら裁断・スキャンしてデータ化し、独自の文献データベースを作成しています。
事務所の書棚に置いておくだけでなく、外出先でも資料を確認し、市販のデータベースに収録されていない文献にも当たれるようにするためです。何を持っているかだけでなく、必要なときに、必要な資料を使えるかを重視しています。
収集している雑誌の例として、『警察公論』『警察学論集』『捜査研究』『月刊交通』『研修』『季刊刑事弁護』などがあります。刑事分野以外の法律雑誌も含め、収集とデータベース化について、次の記事で紹介しています。
私が収集している法律雑誌のリストと、データベースの構築について
警察実務への理解と、弁護士としての独立した判断を両立させる
警察の考え方を理解することと、警察と同じ判断をすることは別です。
捜査機関の立場や判断基準を知ることは、必要な説明や交渉を行うためにも、その判断の問題点を指摘するためにも役立ちます。研究した文献を権威として掲げるだけでなく、その考え方が目の前の事件にも当てはまるのかを検討します。
事実認定、証拠、手続に問題があれば、弁護人として必要な主張をする。事件の処理方法や時期によって生活への影響が変わるのであれば、その点も考える。研究の目的は、独立した弁護士として、依頼者のために判断することにあります。
経験を、自分だけの勘で終わらせない。
何を見て、なぜその方法を選んだのかを言葉にすることで、別の事件でも検討できる知識にしていく。その作業は、自分の判断に見落としがないかを確かめることにもつながります。
文献で調べ、事件で考え、文章にして見直す。その積み重ねを、研究と執筆の中心に置いています。
5.ホームページでの実務解説
当サイトでは、専門誌への寄稿とは別に、捜査手続や弁護活動についての解説も公開しています。法律の結論だけでなく、どの段階で何が問題になり、弁護士としてどのような対応を考えるかを紹介しています。
交通行政処分を回避するためには~違反等登録までの2ステップ~
交通違反・交通事故について、警察署等での違反等登録票の作成と、警察本部での登録の審査に着目した記事です。免許停止・取消しの通知を受ける前の段階から、何を検討するかを解説しています。
逮捕回避のために、弁護士がどのような意見を述べるか
逮捕の回避に向けた働きかけについて、意見書のサンプルを交えて説明しています。希望を伝えるだけでなく、個別の事情と実務上の判断基準をどのように結び付けて主張するかを紹介しています。
弁護士に依頼した場合、逮捕が回避できるかという相談(意見書サンプルあり)
交通犯罪弁護要領(救護義務・報告義務違反の例)
救護義務・報告義務違反が疑われる事件について、犯罪の成否、事実関係と証拠、逮捕の可能性、行政処分など、検討する事項を整理しています。刑事処分と運転免許への影響を、どちらも視野に入れて考えるための解説です。
実際のご依頼後に、どのように研究を生かすか
在宅事件と身柄拘束事件については、事情の聴き取り、資料の準備、意見書の提出、検察官との交渉など、当事務所の対応の流れを別のページで説明しています。
書籍・論考やウェブ記事は、それぞれの執筆・更新時点での法令、裁判例、実務資料などを踏まえたものです。個別の事件については、現在の法令と具体的な事情を確認して判断する必要があります。掲載内容は、特定の処分や結果を保証するものではありません。
6.研修・講演、執筆に関するお問い合わせ
弁護士向け研修などでも、経験と考え方を伝えています
執筆に加え、福岡県弁護士会の新人研修や、弁護士向けの労働法ゼミなどで講師を担当してきました。
2024年6月には、新規登録研修「若手弁護士の心構え」で、若手弁護士の守るべき倫理や技術の磨き方について講演しました。新人ゼミ研修や、一般向けの労働教育講座、大学の教職員研修での講師経験もあります。
詳しい講演・研修歴、取材・メディア掲載歴は、弁護士紹介ページをご覧ください。
執筆・取材・講演をご検討の方へ
執筆、取材、講演等に関するお問い合わせは、お問い合わせフォームからご連絡ください。
媒体名・主催団体名、ご担当者名、企画の趣旨、想定する読者・対象者、ご希望のテーマ、掲載時期や開催日時、分量や所要時間、ご予算などを、決まっている範囲でお知らせください。
企画内容と日程、業務の状況を確認し、対応の可否をご案内します。個別の依頼者や事件に関する非公開の情報は、お話しできません。
警察実務を知る。依頼者の立場で考える。
知識を集めるだけでなく、必要な場面で使い、判断の理由を説明できるようにする。そして、得られた知見を、ほかの人も考える手掛かりにできる形で残す。研究、事件処理、執筆を通じて、その仕事を続けていきます。
薬院法律事務所
弁護士 鐘ケ江 啓司(福岡県弁護士会)


