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薬院法律事務所

刑事弁護

自宅に対する捜索差押令状で、同居家族の部屋まで捜索されたという相談(万引き、盗撮、大麻所持等)


2021年07月30日刑事弁護

※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

 

【相談】

 

Q、私は、娘夫婦と二世帯住宅で住んでいます。今回、私が万引きをしてしまったことが理由で家宅捜索を受けたのですが、娘夫婦の寝室まで捜索されました。娘夫婦が怒っているのですが、これは違法ではないでしょうか。

A、仮に、自宅だけの令状であれば、娘夫婦の部屋は別個の管理権があることから違法となる可能性が十分あると思います。

 

【解説】

 

あまり文献が見当たらない論点ですが、警察実務としては別々に令状をとっているようです。従って、ご相談に対する回答は、「同居人の部屋までは捜索できないはずであり、違法できないか」という結論になります。ただ、同居人がいわゆる占有補助者にあたる場合は、独立の管理権がないということで捜索差押ができるでしょう。また、同居人が本人のものを隠しているという疑いがあれば、令状の効力として同居人の部屋まで捜索差押がなされることもあると思います。令状自体は居宅を捜索場所としているのであれば、捜索がなされても違法行為とは言いがたいでしょう。これらは具体的な事情を確認しないといけませんので、弁護士の面談相談が必要です。

 

刑事訴訟法

https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000131#Mp-Pa_1-Ch_9

第百二条 裁判所は、必要があるときは、被告人の身体、物又は住居その他の場所に就き、捜索をすることができる。
②被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができる。

第二百二十二条 第九十九条第一項、第百条、第百二条から第百五条まで、第百十条から第百十二条まで、第百十四条、第百十五条及び第百十八条から第百二十四条までの規定は、検察官、検察事務官又は司法警察職員が第二百十八条、第二百二十条及び前条の規定によつてする押収又は捜索について…(略)…これを準用する。ただし、司法巡査は、第百二十二条から第百二十四条までに規定する処分をすることができない。

 

【参考文献】

 

井上正仁監修『裁判例コンメンタール刑事訴訟法 第1巻〔§1~§188の7〕』(立花書房,2015年4月)440-441頁

【4 被告人の住居等の捜索
「被告人の住居」といえるかについては、客観的な状況から合理的に判断することとなる。この点で、被告人が1週間前まで居住し、荷物も多少残した状態でいなくなった同居人方の住居の捜索が適法とされた判例(最決昭61• 3 • 12 判時1200 • 160) がある。また、被疑者方居室に対する捜索差押許可状により同居室を捜索中に被疑者あてに配達され同人が受領した荷物についても、同許可状により捜索することができる(最決平19 • 2 • 8刑集61 • 1 •1) 。】(和田雅樹)

 

捜査実務研究会編著『4訂版 捜索・押収必携』(東京法令出版,2015年5月)23頁

【3 Aの居宅に対する令状で娘夫婦の居室を捜索することの可否

空間的に単一であっても管理権が異なれば、令状提示や捜査の密行性を考慮し、複数の場所と考えて、別個の令状を求めなければならない。 したがって、同一家屋内にある居室であっても、管理・使用が別人であればあらかじめ令状を別個に得る必要がある。】

 

【参考判例】

 

最決昭和61年3月12日

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=76085

判示事項
捜索場所を被疑者居室とする捜索差押許可状に基づき被疑者転居後に実施された捜索が適法とされた事例

裁判要旨
捜索場所を被疑者居室とする捜索差押許可状に基づいて実施された同居室の捜索は、右捜索時被疑者が同居室から転居していたとしても、本件の事実関係(判文参照)のもとでは適法である。