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薬院法律事務所

刑事弁護

和歌山県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例第4条(卑わいな行為の禁止)の解説・痴漢・盗撮行為


2025年01月14日刑事弁護

下書きはchatGPTo1 proに作成してもらいました。加筆した部分を赤字にしています。

以下では、和歌山県「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」第4条(卑わいな行為の禁止)について、これまでの条例解説スタイルを踏襲しつつ詳細かつ分量多めに説明します。本条は、痴漢行為(身体接触)、下着や身体ののぞき見、盗撮や透かし撮りなど、性犯罪的要素を有する迷惑行為を幅広く取り締まる中心的な規定となっています。


1. 第4条(卑わいな行為の禁止)の位置づけと目的

(1) 条例全体における意義

  • 本条例(昭和38年10月10日条例第28号)は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等」を防止し、県民・滞在者等の平穏な生活を保持することを目的としています(第1条)。
  • その中でも第4条は、いわゆる性犯罪的な迷惑行為──具体的には痴漢や盗撮など──を広く規制し、公共空間から半公共空間、さらには衣服を脱ぐ場面など多様なシチュエーションで被害を防ぐ要といえる規定です。

(2) 保護法益

  • 第4条が想定する行為は、被害者に強い羞恥・不安・嫌悪感をもたらし、身体的・精神的に大きな影響を与えます。
  • 公共交通機関や商業施設など不特定多数が利用する場面で起こりがちな痴漢や盗撮行為を抑止し、ひいては県民全体の安全・安心な生活環境を守る役割を担っています。

2. 第4条第1項

(第4条第1項)
「何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安を覚えさせるような方法で、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
(1) 着衣等の上から、又は直接他人の身体に触れること。
(2) 着衣等で覆われている他人の下着又は身体…をのぞき見ること。
(3) 着衣等で覆われている他人の下着等を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置すること。
(4) 前3号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。」

(1) 規制対象となる場所

  • 公共の場所: 道路、公園、広場、駅、興行場、飲食店など、不特定または多数の人が利用できる空間。
  • 公共の乗物: 汽車、電車、乗合自動車、船舶等、多数の人が乗降する乗物。

条例はこうした公共空間で発生する痴漢行為や盗撮行為、卑猥言動を重点的に取り締まります。

(2) 禁止される行為(第1項各号)

  1. (1) 他人の身体に触れる(痴漢行為)
    • いわゆる満員電車やバスなどでの臀部・胸等を触るなど。衣服の上からでも直接でも禁止されます。
    • 被害者に羞恥・恐怖を与える行為を規制。
  2. (2) 着衣等で覆われている他人の下着や身体をのぞき見る行為
    • のぞき見行為を取り締まり。鏡やスマホを差し込んでのぞくなど、相手が気付かないまま覗くケースを想定。
  3. (3) 他人の下着等を撮影、または撮影目的でカメラ等を向け・設置
    • 盗撮行為、さらには盗撮準備行為(カメラを差し向ける、設置する)を規制。
    • 満員電車でスカート内を撮る、バッグにカメラを忍ばせるなどが典型例。
  4. (4) 前3号に掲げるもののほか、卑わいな言動
    • 接触や撮影以外でも、相手に深い羞恥や嫌悪感を与える卑猥な発言や行動を包括的に規制。
    • 公衆の面前での性的侮辱や卑猥なジェスチャーなど。

(3) 「他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安を覚えさせるような方法で」

  • 条例は行為態様を広く捉え、「相手が強い羞恥や不安を抱くか」を社会通念上判断。
  • 医療・介助など正当な理由がある場合を除くが、痴漢や盗撮は正当化できないと解される。

(4) 典型事例

  • 電車での痴漢
  • 鏡やスマホを使って下着のぞき見
  • スカート内盗撮(差し向け、設置含む)
  • 公共の場での卑猥な言動

3. 第4条第2項

(第4条第2項)
「何人も、公共の場所又は公共の乗物において、写真機等を使用して着衣等を透かして見る方法により、みだりに着衣等で覆われている他人の下着等の映像を見、又は撮影してはならない。」

(1) 透かし撮りへの対応

  • 「着衣等を透かして見る方法により」下着の映像を見・撮影する行為を禁ずる。
  • 赤外線フィルターなど、衣服越しに身体を映し出す特殊撮影技術(透かし撮り)を想定し、新たな盗撮手段への対応としている。

(2) 典型事例

  • 赤外線モードのビデオカメラで衣服越しに下着を透視
  • 透かし撮りアプリやフィルターを使って撮影

(3) 意義

  • 近年問題化しているテクノロジーを用いた新しい盗撮手口にも対応するための条項。
  • 被害を未然に抑止するため、こうした行為をみだりに行うことを禁じています。

4. 第4条第3項

(第4条第3項)
「何人も、次に掲げる場所又は乗物において、…他人の下着等を撮影し…又は写真機等を差し向け、若しくは設置してはならない。
(1) 集会場、事務所、教室その他の特定かつ多数の者が利用するような場所
(2) バスその他の特定かつ多数の者が利用するような乗物
(3) タクシーその他の不特定の者が利用するような乗物(公共の乗物を除く。)」

(1) 半公共空間・乗物への規制

  • 公共の場所・乗物ではなくとも、「特定多数の者が利用する空間や乗物」「不特定者が乗車するタクシー等」においても盗撮行為を規制。
  • 会社オフィスや学校の教室、タクシーなどの場面での盗撮被害が多発している社会実情を反映。

(2) 禁止内容

  • 下着等を撮影、または撮影準備行為(カメラを向け・設置)を「著しく羞恥や不安を与える方法」で行うことを禁止。
  • 接触(痴漢)に該当しない場合でも規制できるようになっている。

(3) 典型事例

  • 職場の事務所で同僚の下着を撮影
  • 学校の教室で他生徒を盗撮
  • タクシー車内で乗客を狙った撮影

5. 第4条第4項

(第4条第4項)
「何人も、浴場、更衣室、便所その他の人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所にいる人に対し、みだりに、次の各号に掲げる行為をしてはならない…(1)姿態をのぞき見る…(2)姿態を撮影…(3)前2号のほか、卑わいな言動をすること。」

(1) 衣服を脱ぐ可能性が高い場所での規制

  • 浴場、更衣室、便所など、人が裸・半裸になる可能性がある空間での「のぞき見」「撮影」「卑わいな言動」を禁止。
  • 被害者のプライバシー度合いが非常に高いため、厳しく規制する必要があると考えられます。
  • 住居など私的空間での「のぞき見」を条例で規制できるかは一つの論点です。

軽犯罪法違反事件の弁護要領・第23回 軽犯罪法1条23号(軽犯罪法、刑事弁護)

【判例時報賞応募論文】「性的盗撮規制の最前線-軽犯罪法の窃視罪と,迷惑防止条例の相克-」(2019年2月)

(2) 典型事例

  • 更衣室の隙間から裸をのぞく
  • 銭湯の脱衣所で隠しカメラを設置
  • 公衆トイレで上からスマホを差し込み録画
  • 浴場などで卑猥な言葉を発し、周囲を困惑させる

6. 全体的な特色と評価

  1. 公共空間→半公共空間→衣服脱場面という段階的な規制により、多様な性犯罪的行為を広範にカバー。
  2. 盗撮の準備行為も明示的に対象とし、未然に摘発可能。
  3. 透かし撮りという技術的な新しい盗撮手口を盛り込み、被害を抑止しようとしている。

7. 罰則

  • 第18条により、第4条の違反行為には、
    • 着衣等で覆われている他人を「撮影」した場合には1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(常習で2年以下)など、比較的重い罰則が定められています。
    • 撮影行為以外の卑わいな行為(接触、のぞき見、卑猥言動)については「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」が基本(常習で1年以下の懲役または100万円以下の罰金)。
  • 条例違反でも刑事処分があり得るため、前科が付く可能性があるなど、社会的影響は大きいものといえます。

8. まとめ

  1. 和歌山県迷惑行為防止条例 第4条は、痴漢・盗撮・のぞき見・透かし撮り・卑猥言動などを多角的に規制する重要条文。
  2. 公共の場所・乗物だけでなく、学校・事務所・タクシーなど、半公共的空間や、浴場・更衣室など衣服を脱ぐ可能性の高い空間にも適用し、幅広く被害をカバー。
  3. 撮影(盗撮)行為のみならず、その準備行為(カメラを差し向け、設置)も規制対象であり、未然に摘発を可能としている。
  4. 透かし撮り(赤外線フィルター等)にも対応し、技術発展に合わせた規定が設けられている。
  5. 罰則は「撮影行為」で最大1年以下の懲役または100万円以下の罰金(常習で2年以下)など、条例違反でも前科が付き得る重大な処罰が用意されている。

不同意わいせつ罪と、痴漢(迷惑行為防止条例違反)との分水嶺(痴漢、刑事弁護)

性的姿態等撮影罪(未遂)と、迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)、軽犯罪法違反(つきまとい)の分水嶺

下着盗撮事件弁護要領(性的姿態等撮影罪・迷惑防止条例)

以上のように、第4条は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止」を目指す条例の中で、性犯罪的要素を持つ迷惑行為を最も広範に規制する条文となっており、犯罪の未然防止・被害抑止に大きく寄与しています。周囲の人が早めに発見・通報することで被害拡大を防ぐ仕組みとして機能し、県内における安心で安全な社会生活環境を維持する役割を担っています。

 

和歌山県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例

https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/010100/reiki/reiki_honbun/k501RG00001267.html

(卑わいな行為の禁止)

第4条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安を覚えさせるような方法で、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

(1) 着衣等の上から、又は直接他人の身体に触れること。

(2) 着衣等で覆われている他人の下着又は身体(以下「下着等」という。)をのぞき見ること。

(3) 着衣等で覆われている他人の下着等を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置すること。

(4) 前3号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。

2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、写真機等を使用して着衣等を透かして見る方法により、みだりに着衣等で覆われている他人の下着等の映像を見、又は撮影してはならない。

3 何人も、次に掲げる場所又は乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安を覚えさせるような方法で、着衣等で覆われている他人の下着等を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置してはならない。

(1) 集会場、事務所、教室その他の特定かつ多数の者が利用するような場所

(2) バスその他の特定かつ多数の者が利用するような乗物

(3) タクシーその他の不特定の者が利用するような乗物(公共の乗物を除く。)

4 何人も、浴場、更衣室、便所その他の人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所にいる人に対し、みだりに、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

(1) 姿態をのぞき見ること。

(2) 姿態を撮影し、又は撮影する目的で写真機等を向け、若しくは設置すること。

(3) 前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。

(平15条例70・追加、平24条例34・平29条例38・一部改正)

 

※2025/1/14現在改正作業中ですが、第4条の解説は予定されていません。

https://www.police.pref.wakayama.lg.jp/05_kenkei/tyuumoku/meibou_pabcome/index.html

 

【参考文献】※情報公開で入手した資料は一部マスキング有

和歌山県警察本部「和歌山県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 条例解説等(平成29年7月1日一部改正)(全53頁)」(2017年7月)