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薬院法律事務所

刑事弁護

岩手県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例第8条(卑わいな行為の禁止)の解説・痴漢・盗撮行為


2025年01月19日刑事弁護

下書きはchatGPTo1 proに作成してもらいました。加筆した部分を赤字にしています。

以下では、条例第8条(卑わいな行為の禁止)の規定について、その趣旨や具体的な内容、適用される行為の類型、実務上の留意点などを詳細に解説します。本条は、主に痴漢行為盗撮行為等、他者に「著しい羞恥」や「不安・嫌悪の情」を生じさせる卑わいな行為を包括的に取り締まる趣旨の規定であり、公共空間での性的迷惑行為を防止するための中核条項といえます。


1. 本条の目的と位置づけ

  1. 条例全体の目的
    • 本条例は、人に著しく迷惑をかける多様な行為等を防止し、もって県民生活の平穏を保持することを目的としています(第1条)。
    • 第8条はその中でも性的羞恥心や不安を覚えさせる行為(痴漢・盗撮等)を直接的に規制し、これらによる被害を未然に防ぐうえでの重要規定となっています。
  2. 第8条の概要
    • 本条は、「公共の場所又は公共の乗物において」「他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安・嫌悪の情を催させる方法」で行われる卑わいな行為を包括的に禁止しています。
    • 具体的には、
      1. 他人の胸部や臀部、下腹部などにみだりに触れる行為
      2. 着衣で覆われている他人の下着等をのぞき見する行為
      3. 盗撮や透視機能を使った撮影
      • などを広く規制し、痴漢・盗撮行為を抑止するための枠組みを定めています。

2. 規制対象となる場面(場所・行為)

  1. 「公共の場所又は公共の乗物」における行為
    • 「公共の場所」とは、不特定かつ多数の者が自由に出入りできる場所です。例:道路、駅、商業施設、公園、イベント会場、飲食店など。
    • 「公共の乗物」は、不特定かつ多数の者が乗車可能な電車、バス、船、飛行機等を指します。
    • こうした公共空間での痴漢や盗撮行為により、不特定多数の被害者が発生しやすく、また悪質化しやすいという点から、条例による取り締まり対象として明確化されています。
  2. 「著しく羞恥させ、又は不安・嫌悪を催させる方法」
    • 痴漢や盗撮などは、被害者に対して強い羞恥心や恐怖心、嫌悪感を与える行為であることから規制対象となります。
    • 客観的にみても卑わいと評価される性質の行為が広く含まれます。
  3. 正当な理由のない行為
    • 単に偶然軽く当たったなどの不可抗力的な接触は直ちに本条違反とならない場合がありますが、明確な意図が認められたり、行為態様が卑わい・危険であったりすれば本条に抵触する可能性が高いです。
    • 医療行為や救護行為など被害者の同意・必要性が明確な場合は**「正当な理由」**に該当することが考えられますが、そうした例外は極めて限定的です。

3. 条文の各項目の具体的内容

3.1 第1号:みだりに他人の胸部等に触れる行為

  • **「胸部、臀部、下腹部等(胸部等)」**などの他人の身体の一部に触れる行為を規制。
  • ここでいう「みだりに触れる」とは、被害者の意思に反して、性的意図や嫌がらせの意図をもって接触する行為が典型例です。
  • 着衣の上からの接触も含まれており、いわゆる痴漢行為が主要な規制対象です。

3.2 第2号:着衣で覆われている他人の下着等をのぞき見する行為

  • スカートや服の中を覗き込む行為や、小型鏡などを使って下着をのぞく行為全般が該当します。
  • **“のぞき見”**自体に被害者の同意がない限り、「みだりに」の要件に該当し違反となります。

3.3 第3号:盗撮や透視機能を用いた撮影

  • 「着衣で覆われている他人の下着等」を撮影する行為、または撮影目的でカメラ等を向けたり設置したりする行為が禁止されています。
  • 特筆すべきは**“透視機能”**などを使い、服の下を実質的に撮影(赤外線カメラなど)する行為も含まれる点。
  • 盗撮行為(カメラを向ける・未遂行為も含む)を厳しく取り締まる規定です。

4. 行為例と典型的シーン

  1. 満員電車での痴漢
    • 電車内で混雑を利用して、他人の胸部や臀部を意図的に触れる行為は第1号違反。
  2. カメラ・スマートフォンを用いたスカート内盗撮
    • 下着を撮ろうとスマホを差し出す行為が第3号違反。
  3. 衣服を透かす特殊なカメラを使用
    • 透視機能を用いて被写体の下着や体形を撮影する行為も第3号に含まれる。
  4. のぞき行為
    • カバンに鏡や小型カメラを仕込んで、スカート内を覗く行為は第2号違反の典型例。

5. 本条違反時の罰則

  • 第12条以下に罰則規定がまとめられており、痴漢や盗撮などを実際に行った場合6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科され得ます(常習の場合は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。
  • “撮影未遂”の段階(写真機等を向ける・設置する)でも規制対象に含まれ、犯罪の未然防止に大きな効果があります。

6. 実務上の留意点

  1. 刑法犯との重複
    • 痴漢行為が「強制わいせつ罪」(刑法第176条)に該当する場合など、刑法の規定が優先して適用される場合もあります。
    • ただし、刑法上の要件を満たさない程度の行為でも、本条例で処罰できることがあり、軽微でも卑わい行為を取り締まる役割を担っています。
  2. 「正当な理由」の例
    • 医療行為や正当な救護行為、撮影対象の明示的な同意等は考えられますが、迷惑行為と判定されると「正当な理由なし」となります。
  3. 未遂や試みの段階で取り締まり可能
    • 実際にのぞき見・撮影をしなくても、機器を差し向ける行為そのものが違反行為。
    • 盗撮被害の発生を早期に防ぐことができる点が条例の特徴です。
  4. 広範な対象
    • 被写体が特に女性に限らず、男性や子ども等、すべての人を対象に同規定が適用されます。

7. まとめ

  • 第8条は、この条例の中で公共の場所や乗物における痴漢・盗撮行為を中心とした性的な迷惑行為を包括的に禁止する重要な条文です。
  • 行為類型として、
    1. 他人の身体(胸部・臀部・下腹部等)への不当な接触
    2. 下着等ののぞき見
    3. 撮影や透視機能を使った下着・身体の盗撮
    4. その他卑わいな言動
      が規定されています。
  • 違反すれば、懲役刑や罰金刑が科され得るという厳しい罰則が設けられており、県民生活の平穏や被害者の性的プライバシーを保護するための要となっています。

 

下着盗撮事件弁護要領(性的姿態等撮影罪・迷惑防止条例)

不同意わいせつ罪と、痴漢(迷惑行為防止条例違反)との分水嶺(痴漢、刑事弁護)

性的姿態等撮影罪(未遂)と、迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)、軽犯罪法違反(つきまとい)の分水嶺

岩手県公衆に著しく迷惑をかける行為等の防止に関する条例

https://www.pref.iwate.jp/kenkei/anzen/stoker/3000268.html

(卑わいな行為の禁止)

第8条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安を生じさせ、若しくは嫌悪の情を催させる方法で、卑わいな行為であって次に掲げるものをしてはならない。

(1) みだりに他人の胸部、 臀部、下腹部等(以下「胸部等」という。)の身体の一部に触れること(着衣の上からこれらの身体の一部に触れることを含む。)。

(2) みだりに着衣で覆われている他人の下着等(胸部等の身体の一部を含む。以下同じ。)をのぞき見すること。

(3) みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影し、若しくは撮影する目的で当該下着等を撮影することができる位置に写真機等を差し出し、又は写真機等を使用して着衣で覆われている他人の身体を透視する方法により、裸体(その一部を含む。)の映像を見、若しくは撮影すること。

(一部改正〔平成17年条例68号・26年82号〕)

 

【参考文献】※情報公開請求で入手した資料はマスキング有り

 

岩手県警察本部生活安全部「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の逐条解説(全94頁)」(2000年4月)

岩手県警察本部生活安全部生活安全企画課「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部を改正する条例の逐条解説(全30頁)」(2014年6月)