山口県迷惑行為防止条例第3条(卑わいな行為の禁止)の解説・痴漢・盗撮行為
2025年01月13日刑事弁護
下書きはchatGPTo1 proに作成してもらいました。加筆した部分を赤字にしています。
以下では、山口県迷惑行為防止条例 第3条(卑わいな行為等の禁止)を中心に、これまでの解説と同様のスタイルで詳細かつ分量多めに解説します。痴漢行為・のぞき見・盗撮など、多様な性犯罪的迷惑行為をカバーし、被害者の身体的・精神的な安全を守る規定として、条文構造や特徴、注意点などを順を追って見ていきます。
1. 第3条(卑わいな行為等の禁止)の位置づけと特徴
(1) 条例全体の中での役割
- 山口県迷惑行為防止条例(以下「本条例」といいます)は、「人に著しく迷惑を及ぼすような方法で行われる行為を防止」(第1条)し、県民の日常生活の平穏を保持することを目的としています。
- その中でも第3条は、卑わいな行為(いわゆる痴漢・盗撮・卑猥言動など)を集中的に取り締まる条文です。公共空間だけでなく、私人の空間に類する場所でも不特定または多数が利用する場面を広くカバーし、被害者を守る仕組みを整えています。
(2) 保護法益
- 第3条が想定する行為は、被害者の性的プライバシーや身体の自由を深刻に侵害し、強い羞恥心や嫌悪の情を抱かせる恐れがあります。
- 痴漢や盗撮などは一見軽微に見えることもありますが、精神的被害が大きく、社会の秩序や安全を脅かす性質を持つため、本条によって強く規制する意義が大きいといえます。
2. 第3条第1項
(第3条第1項)
「何人も、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に著しく嫌悪の情を催させるような方法で、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。」
(1) 規制対象の場所
- 公共の場所: 道路、公園、広場、駅、ふ頭、空港、興行場、飲食店など、「不特定かつ多数の者」が利用可能な空間。
- 公共の乗物: 汽車、電車、乗合自動車、船舶など、多くの人が乗降する交通手段。
条例で特に念頭に置くのは、都市部を中心に人々が利用する公共交通機関や商業施設など、痴漢や盗撮が多発しやすい環境です。
(2) 禁止行為(第1項各号)
- 一号: みだりに他人の身体に接触すること(衣服等の上から含む)
- いわゆる「痴漢行為」。相手が強い羞恥感や嫌悪感を抱くような接触が対象。
- 電車やバスなどで臀部・胸を触る、身体を押し付けるなどが典型。
- 二号: 他人の身体又は下着(衣服等で覆われている部分)を見る目的で、鏡等を使いスカート下を差し出し、のぞき込み、スカートをまくる等
- **「のぞき見」や「覗こうとする準備行為」**に焦点。鏡をスカート下に差し出したり、スカートをまくり上げるなどの動作で相手に嫌悪感や羞恥を与える行為が該当。
- 単に盗撮だけでなく、視覚的な“覗き”に特化した規定とも言える。
- 三号: 他人の身体等を撮影・録画する目的で写真機等を身体等に向け、又は設置する行為
- いわゆる「盗撮準備行為」。実際に撮影が完了していなくても、カメラを向ける段階で規制されるため、未然に被害を防げる仕組み。
- 四号: 写真機等を使用して他人の身体等を撮影・録画する行為
- いわゆる「盗撮行為」本体。スカート内を撮影する、下着を録画するなど。
- 多くの迷惑防止条例で特に問題視される典型的な条項。
- 五号: 他人の身体等を見・撮影する目的で“透視機器”を人に向け、又は設置する行為
- 近年問題化した「赤外線フィルターや特殊レンズを使い、衣服を透かして見る・撮る」行為を想定。
- この段階では、撮影準備行為を規制。
- 六号: 透視機器を用いて他人の身体等を実際に撮影・録画する行為
- いわゆる「透かし撮り」本番行為。赤外線などの特殊撮影機能を使い、本来見えない下着・身体を映し出す行為を特別に取り締まる。
- 七号: 卑わいな言動
- 接触や撮影に該当しなくても、人に強い嫌悪感・羞恥を抱かせる卑猥な言動を包括的に規制。
- 公衆の前で性的な言葉や動作を執拗に見せるなど、様々な行為が該当し得る。
(3) 「人を著しく羞恥させ、又は人に著しく嫌悪の情を催させるような方法で」
- 各行為の前提として、被害者が「強い羞恥心」や「嫌悪感」を覚える程度の行為であるかどうかが判断されます。
- 医療行為や緊急避難など、社会通念上正当とみなされる行為は除外されることが想定されています。
(4) 典型事例
- 満員電車で臀部・胸を触る痴漢(一号)
- 鏡を使ってスカート内を覗こうとする(二号)
- スマホを下着に向けて盗撮準備行為をする(三号)、実際に撮る(四号)
- 赤外線フィルターを用いて透かし撮りする(五号、六号)
- 公衆の面前で卑わいな言葉を叫び、周囲を困惑させる(七号)
3. 第3条第2項
(第3条第2項)
「何人も、事務所、教室、貸切バスその他の特定かつ多数の者の利用に供されている場所又は乗物(公共の場所又は公共の乗物を除く。)において、前項に規定する方法で、同項第二号から第六号までのいずれかに該当する行為をしてはならない。」
(1) 対象空間の拡張(「特定かつ多数の者の利用に供されている場所」)
- 第1項は「公共の場所・公共の乗物」を対象としたが、第2項では、それ以外の場所・乗物でも「特定かつ多数の者が利用する」空間・乗物を追加的に規制。
- 会社の事務所、学校の教室、貸切バス、タクシーなど、不特定ではないにせよ多くの人が出入りする場面をカバーし、盗撮や卑わい行為を抑止する意図がある。
(2) 禁止行為
- 第1項の「二号~六号」:
- (2) のぞき見、撮影、(3) 透視機器使用準備、(4) 盗撮、(5) 透視撮影準備、(6) 透視撮影
- これらを「公共の場所・乗物」以外でも多人数が利用する場所・乗物で行うことを禁止。
(3) 典型事例
- 職場の事務所や学校の教室で他人の身体や下着を盗撮
- 貸切バスの座席で他乗客を透視撮影しようとする
- タクシー車内で乗客の足元を鏡で覗こうとする
4. 第3条第3項
(第3条第3項)
「何人も、正当な理由がなく、第一項に規定する方法で…衣服を着けない状態にある他人の姿態をのぞき見る、撮影・録画する目的で写真機等を向ける、撮影・録画する、…透視機器を向け、又は…撮影・録画する…としてはならない。」
条文上は各号に分かれていますが、要旨をまとめると以下のようになります。
(1) 「衣服の全部又は一部を着けない状態」でいる人への行為
- 住居、浴場、更衣室、便所など、人が通常服を脱ぐ可能性が高い空間を想定。
- 人が裸や下着姿でいるときに、その姿を「のぞき見」や「撮影」する行為、透かし撮りを行う行為を正当な理由なく行ってはならないと規定。
(2) 禁止内容
- 「のぞき見る」「撮影・録画する目的で写真機等を向ける・設置」「実際に撮影・録画する」「透かし撮影準備・本番」など、非常に広範に規制。
- 例えば浴室の窓から中を覗き込む、トイレ個室にスマホを差し向ける、温泉の脱衣所に隠しカメラを仕掛ける等が該当。
- 住居など私的空間での「のぞき見」を条例で規制できるかは一つの論点です。
(3) 典型事例
- 銭湯の脱衣所で盗撮用カメラを仕掛ける
- 温泉やトイレの隙間を覗き、裸を見ようとする
- 更衣室で透かし撮影アプリ等を使う
5. 総合的な特徴
- 多岐にわたる卑わい行為を分解して規制
- 身体接触(痴漢)、のぞき行為、盗撮(カメラ・ビデオ等)、透かし撮り、そして“準備行為”までを細やかに整理。
- 公共空間から半公共空間、さらに衣服を脱ぐ空間まで幅広く適用。
- “性的羞恥心を著しく害し、又は…嫌悪の情を催させるような方法”
- どの行為も被害者の感情面を重要視しており、社会通念上「受け手が強い羞恥や嫌悪感を抱く」状況を念頭に置いています。
- 単なる偶然の接触や正当理由のある行為(医療行為など)は除外されるが、痴漢や盗撮にはほぼ当てはまらない。
- 撮影・録画行為の“準備段階”もカバー
- 第1項や第2項、さらに第3項で、「写真機等を向け、設置する」行為自体を明示的に規制。
- 実際に映像を記録していなくても違反となり、早期摘発が可能です。
- 透視機器対応
- 「衣服を透かして見る」ための赤外線機能や特殊フィルターを念頭に置き、準備行為・実行行為の両面で取り締まる条文が設けられているのが特徴的。
6. 罰則・運用
- 第7条・第8条などにより、「第3条に違反した者」は6月以下の懲役または50万円以下の罰金(常習なら1年以下の懲役または100万円以下の罰金)と規定されている(条例の改正により変動する可能性あり)。
- 条例違反であっても、有罪になれば刑事上の前科が付くため、その社会的影響は大きい。
- 悪質な場合には刑法(強制わいせつ罪など)や「性的姿態等撮影罪」との競合も考えられますが、比較的軽微な事案や未遂段階では本条例の適用が有効に活用されると考えられます。
7. まとめ
- 山口県迷惑行為防止条例 第3条は、痴漢・盗撮・透かし撮り・卑猥言動など、公衆に著しい羞恥や嫌悪感を与える行為を幅広く取り締まる中核規定。
- 場所ごと・行為ごとに細かく設定されており、公共空間から半公共空間、さらに衣服を脱ぐ可能性のある場所(住居・浴場・更衣室等)まで包括し、未然に被害を抑止しようとしている。
- 「撮影準備行為」を明確に規制することで、行為者が実際に撮り始める前に捜査機関が摘発を行える仕組みになっている点が特徴的。
- 条例違反でも法的に刑事事件として扱われ得るため、軽視できない処罰が設けられている。
- 時代の要請や技術進歩(透かし撮影など)に応じて改正が行われ、被害者の性的プライバシー保護を強化している。
こうした構造により、第3条は「公共交通機関や街頭での痴漢や盗撮を防ぐ」「学校や職場など多数が利用する空間での撮影行為を抑止する」「入浴や更衣中の人を対象とした盗撮を阻止する」といった多層的な防止策を整え、山口県内の性犯罪的迷惑行為を幅広く取り締まる基盤となっています。被害者を含む周囲の人が早期通報しやすい未遂段階規制も備えており、実効性の高い制度と言えるでしょう。
山口県迷惑行為防止条例
https://krm401.legal-square.com/HAS-Shohin/jsp/SVDocumentView
(卑わいな行為等の禁止)
第三条 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しく羞恥させ、又は人に著しく嫌悪の情を催させるような方法で、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
一 みだりに他人の身体に接触すること(衣服等の上から接触することを含む。)。
二 他人の身体又は下着(これらのうち現に衣服等で覆われている部分に限る。以下「身体等」という。)を見る目的で、手鏡その他の人の姿態を映すことができる器具を他人のスカートの下に差し出し、他人のスカートの下からのぞき込み、又は他人のスカートをまくり上げること。
三 他人の身体等を撮影し、又は録画する目的で、写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を他人の身体等に向け、又は設置すること。
四 写真機等を使用して他人の身体等を撮影し、又は録画すること。
五 他人の身体等を見、又は撮影し、若しくは録画する目的で、赤外線を利用して衣服等を透かして身体等を見ることができる機器(以下「透視機器」という。)を他人の姿態に向け、又は設置すること。
六 透視機器を使用して他人の身体等を撮影し、又は録画すること。
七 前各号に掲げるもののほか、他人に対し、みだりに卑わいな言動をすること。
2 何人も、事務所、教室、貸切バスその他の特定かつ多数の者の利用に供されている場所若しくは乗物又はタクシーその他の不特定の者の利用に供されている乗物(公共の乗物を除く。)において、前項に規定する方法で、同項第二号から第六号までのいずれかに該当する行為をしてはならない。
3 何人も、正当な理由がなく、第一項に規定する方法で、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。
一 衣服の全部又は一部を着けない状態にある他人(住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常当該状態でいるような場所にいる者に限る。以下この項において同じ。)の姿態をのぞき見ること。
二 前号の状態にある他人の姿態を撮影し、又は録画する目的で、写真機等を他人の姿態に向け、又は設置すること。
三 写真機等を使用して第一号の状態にある他人の姿態を撮影し、又は録画すること。
四 他人の身体等を見、又は撮影し、若しくは録画する目的で、透視機器を他人の姿態に向け、又は設置すること。
五 透視機器を使用して他人の身体等を撮影し、又は録画すること。
(令元条例一九・一部改正)
【参考文献】※情報公開で入手した資料は一部マスキング有
山口県警察本部「学事文書課との協議について(全8頁)」(2018年12月10日)
山口県警察本部「学事文書課との協議について(全3頁)」(2019年1月22日)
山口県警察本部「学事文書課との協議について(全3頁)」(2019年2月14日)
山口県警察本部「学事文書課との協議について(全4頁)」(2019年2月26日)
山口県警察本部「条例改正に伴う検事検討結果(全4頁)」(2019年3月4日)
山口県警察本部生活安全部生活環境下「山口県迷惑行為防止条例逐条解説(全76頁)」(2019年12月)