徳島県迷惑行為防止条例第4条(卑わいな行為の禁止)の解説・痴漢・盗撮行為
2025年01月12日刑事弁護
下書きはchatGPTo1 proに作成してもらいました。加筆した部分を赤字にしています。
以下では、徳島県迷惑行為防止条例 第4条（卑わいな行為の禁止）を中心に、これまでと同様の解説スタイルで詳細かつ分量多めに説明します。痴漢や盗撮行為をはじめとした公衆に対する卑わいな迷惑行為をどのように取り締まり、県民や滞在者の生活を守る狙いがあるのか、条文の構造や適用範囲を順を追って見ていきましょう。
1. 第4条（卑わいな行為の禁止）の位置づけと目的
(1) 条例全体との関係
- 本条例は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等」を防止する目的で制定され（第1条）、不当な金品要求や暴力団的威力示威行為など、広範な迷惑行為を規制しています。
- その中で第4条は、**性犯罪的要素を有する“卑わいな行為”**をピンポイントで取り締まる中心条文。いわゆる痴漢・盗撮行為から、卑猥な言動まで含め、被害者の性的プライバシーや安心を守るための重要な規定となっています。
(2) 保護法益
- 第4条が想定する行為はいずれも、被害者の身体的プライバシーや性的羞恥心を著しく侵害するおそれが高い行為です。
- 公共の場所や乗物でこれらが行われると、多数の人が被害や不快感・恐怖感を抱く可能性があり、社会秩序を乱す大きな要因になります。本条はこうした行為を取り締まり、公共空間を含む社会全体の安全・安心を確保しようとする狙いをもっています。
2. 第4条第1項
（第4条第1項）
「何人も、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗つている人に対し、その性的羞恥心を著しく害し、又はその人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。」
(1) 「公共の場所」「公共の乗物」
- 公共の場所: 道路、公園、駅、興行場、飲食店等、不特定多数の人が出入りする空間。
- 公共の乗物: 汽車、乗合自動車、船舶など、多数の人が利用する交通手段。
いわゆる公共空間での行為をまず広く規制することで、被害者が多発しがちな満員電車や観光地、イベント会場などでの性犯罪的行為を抑止します。
(2) 禁止行為（第1項各号）
- 一号：衣服等の上から、又は直接身体に触れること
- いわゆる痴漢行為の典型。
- 満員電車・バスで臀部や胸を触るなど、不意打ち的に相手の身体に触れて性的羞恥や恐怖を与える行為を狙い撃ちにした規定。
- 二号：通常衣服等で覆われている下着又は身体（下着等）をのぞき見し、又は撮影すること
- のぞき・盗撮行為を包括的に規制。鏡などを用いて下着部分を覗く行為や、スマホやカメラで撮影する行為を想定。
- ただし、「ただし、第三項に該当するものを除く」とあるように、後述の第3項（人が衣服を脱ぐ可能性が高い場所）の規定が優先的に適用されるケースもある。
- 三号：衣服等を透かして下着等の映像を表示する機能を有する機器で、下着等を見、又は撮影する行為
- 近年問題化した**「透け撮り」**（赤外線・特殊フィルター使用など）への対応条文。
- 透かし撮りによって本来見えない下着・身体を映し出し、被害者のプライバシーを甚大に侵害する行為を禁止。
- 四号：前三号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること
- いわゆる「卑猥な言動」を広く包括的に取り締まる規定。
- たとえば公共の場で露骨な性的発言を執拗に繰り返し、人に強い嫌悪感や羞恥・不安を与える行為を念頭に置く。
(3) 「その性的羞恥心を著しく害し、又は…不安を覚えさせるような方法で」
- すべての禁止行為には、「行為者の故意」「被害者が覚える強い羞恥や恐怖感」が重要。
- 医療や介助などの「正当な理由」があれば該当しない場合もあるが、痴漢や盗撮などには認められにくい。
(4) 典型事例
- 公共交通機関内での痴漢（臀部・胸への接触）
- 駅や観光地などでのスカート内盗撮
- 赤外線フィルター等による衣服透かし撮影
- 公衆の面前で卑猥な言葉を大声で発し、周囲を困惑させる
3. 第4条第2項
（第4条第2項）
「何人も、…教室、事務所、タクシーその他の不特定又は多数の人が出入り…(公共の場所又は公共の乗物を除く。)…にいる人の衣服で覆われている下着又は身体を撮影してはならない。」
(1) 適用範囲の拡張
- 第1項では「公共の場所・乗物」に限定していましたが、第2項は「教室、事務所、タクシーなど特定かつ多数が利用する場・乗物」にまで規制対象を広げています。
- 会社オフィスや学校の教室、タクシー、貸切バスなどが典型例。「公共空間」ではないものの、多数が利用し、盗撮被害が起こり得る状況をカバーします。
(2) 禁止行為
- **「衣服で覆われている下着や身体を撮影する」**行為を禁止。
- のぞき見や接触（痴漢）については含まず、あくまで撮影に特化して規制している点が特徴。
(3) 典型事例
- 職場の休憩室で他人の下着をスマホで撮影
- 学校の教室で隣の生徒の身体を盗撮
- タクシー車内でドライバーや乗客を狙って撮影する
4. 第4条第3項
（第4条第3項）
「何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し…(第1項第2号本文の行為)をしてはならない。」
(1) 規制対象となる場所
- 住居、浴場、便所、更衣室など、人が服を脱ぐ場面が多いプライベート性の高い空間。
- 「その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない場所」という文言で、広く裸・半裸の可能性のある場所を含む。
(2) 禁止される行為
- 第1項第2号「下着や身体をのぞき見し、又は撮影する行為」(本文)をここに準用。つまり衣服を脱いだ状態の人の下着や身体を見たり撮影したりする行為を禁止。
- 銭湯・温泉などの入浴場所やトイレ、更衣室などでののぞき・盗撮を念頭においています。
- 住居など私的空間での「のぞき見」を条例で規制できるかは一つの論点です。
- 徳島県警察本部少年女性安全対策課「徳島県迷惑行為防止条例【第4条解説】「盗撮.のぞき見行為」の規制範囲拡大(全20頁)」(2018年4月)17頁【6 他法令との関係
軽犯罪法第1条第23号では、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を処罰の対象とし、その客体は場所であり、「場所」をひそかにのぞき見る行為を禁止しているが、本項では、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で、現に当該状態にある人を客体としている。
なお、改正前は、悪質性の高い撮影行為に限定していたが、改正後は、のぞき見行為についても違反とした。
このように本項と軽犯罪法違反との関係は、制定趣旨、行為、保護法益の点で罪質が異なるため両罪が成立し、観念的競合の関係になる場合がある。】
(3) 典型事例
- 個人宅の浴室を外から覗き込む
- 更衣室で着替え中の人物をスマホで盗撮
- 公衆トイレの個室を上や下から覗く・撮影する
5. 第4条第4項
（第4条第4項）
「何人も、正当な理由がないのに…(第1項第2号若しくは第3号、又は第2項の規定により禁止される撮影)のために…写真機等を向け、又は設置してはならない。」
(1) 撮影“準備行為”の規制
- 第1項第2号（下着や身体の撮影）、第1項第3号（透かし撮影）、第2項（特定多数が利用する空間での撮影）で禁止される行為を行おうとして写真機等を向けたり、仕掛けたりする準備段階を規制。
- 実際に撮影ボタンを押していなくても、カメラを向けるだけで違反となるため、未然に被害を防ぐ仕組みになっています。
(2) 効果と意味
- 行為者の不審行為を周囲が早期発見して通報すれば、警察が駆けつけた時点で条例違反の可能性が認められる。
- “撮れ高”を得る前に摘発でき、被害が拡大しないという意義が大きい。
6. 全体的な構造・評価
- 公共空間～半公共空間～衣服を脱いだ状態の空間まで、場所ごとに異なる状況を網羅。
- 痴漢行為（身体接触）、のぞき見、撮影（盗撮、透かし撮り）、撮影準備行為、卑わいな言動といった多様な行為を区分しながら規制。
- 正当な理由（医療行為など）を除く事例であれば、広く適用されるため、性犯罪的迷惑行為の抑止効果が期待できる。
(1) 罰則
- 第16条で「第4条の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」と定められており、常習の場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」。
- 条例違反でも刑事処分があり得るため、前科が付く可能性が高く、その社会的影響は小さくありません。
(2) 他法令との関係
- 「性的姿態等撮影罪」（令和5年施行）をはじめ、刑法の強制わいせつ罪等が適用されるケースもありますが、本条例がより軽微あるいは準備行為段階までカバーし、幅広い保護を図る点が大きな特徴。
- 透かし撮り等、技術的に新しい手口にも対応した形で改正が行われてきたことがうかがえます。
7. まとめ
- 徳島県迷惑行為防止条例 第4条は、公共の場所や乗物、さらには半公共空間や裸になりうる場所での「痴漢・盗撮・透かし撮り・卑猥言動」などを包括的に禁止し、被害者の性的自由・プライバシーを守る中心的条文。
- 第1項では公共空間での身体接触・盗撮・卑猥言動を規制し、第2項では公共外でも多数が利用する場所（教室・事務所・タクシー等）での撮影行為を禁止。第3項では衣服を脱ぐ可能性が高い場所（浴場・更衣室等）での撮影を取り締まり、第4項ではこれら禁止撮影の準備行為を取り締まって未遂段階で摘発可能とする。
- 罰則は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金であり、常習ならば1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に加重されるため、条例違反でも重い刑事責任を負い得る。
- 性犯罪の多様化に合わせ、技術進歩による「透視撮影」やカメラ設置行為も明示的に禁止することで、県内での性犯罪的迷惑行為を未然に防ぎ、県民・訪問者の生活の平穏を保持しようという狙いがはっきり示されています。
このように、第4条は徳島県における性犯罪的迷惑行為の抑止力として大きな役割を果たしており、公共交通機関や商業施設など、多数が集まる場所での痴漢・盗撮から、私的空間の更衣室や浴場での撮影行為まで、広範に取り締まりを可能にしています。
徳島県迷惑行為防止条例
https://reiki.pref.tokushima.lg.jp/reiki_honbun/o001RG00000830.html
(卑わいな行為の禁止)
第四条 何人も、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗つている人に対し、その性的羞恥心を著しく害し、又はその人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
一 衣服等の上から、又は直接身体に触れること。
二 通常衣服等で覆われている下着又は身体(以下「下着等」という。)をのぞき見し、又は撮影すること。ただし、第三項に該当するものを除く。
三 衣服等を透かして下着等の映像を表示する機能を有する機器の当該機能を使用して、下着等の映像を見、又は下着等を撮影すること。
四 前三号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2 何人も、集会場、事務所、教室、貸切バス、タクシーその他の不特定又は多数の人が利用するような場所(公共の場所を除く。)にいる人又は乗物(公共の乗物を除く。)に乗つている人に対し、その性的羞恥心を著しく害し、又はその人に不安を覚えさせるような方法で、前項第二号に規定する行為をしてはならない。
3 何人も、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し、正当な理由がないのに、第一項第二号本文に規定する行為をしてはならない。
4 何人も、正当な理由がないのに、第一項及び第二項に規定する場所にいる人若しくは乗物に乗つている人又は前項に規定する場所における同項に規定する状態にある人の下着等を撮影(第一項第二号本文に規定する行為に限る。)する目的で、写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器を向け、又は設置してはならない。
(平三〇条例三四・全改)
【参考文献】※情報公開で入手した資料は一部マスキング有
徳島県警察本部生活安全企画課「徳島県迷惑行為防止条例逐条解説 平成16年4月版(全131頁)」(2004年4月)
徳島県警察本部少年女性安全対策課「徳島県迷惑行為防止条例【第4条解説】「盗撮.のぞき見行為」の規制範囲拡大(全20頁)」(2018年4月)