新潟県迷惑行為等防止条例第2条(痴漢行為等の禁止)の解説・痴漢・盗撮行為
2025年01月18日刑事弁護
下書きはchatGPTo1 proに作成してもらいました。加筆した部分を赤字にしています。
以下では、新潟県迷惑行為等防止条例第2条(痴漢行為等の禁止)をテーマに、条文の趣旨や規定内容を詳しく解説します。条例が想定している行為態様・場所、また条文の各段落(各項目)ごとの役割や留意点を整理しながら、条文全体の狙いを明らかにしていきます。
1. 第2条が規制する「痴漢行為等」とは
新潟県迷惑行為等防止条例第2条は、公共の場所や乗物にいる人を狙った「痴漢的行為」「のぞき行為」「盗撮」などを広く規制する条文です。いわゆる身体への卑わいな接触(痴漢)や、衣服の下をのぞき見・撮影する行為等、人に深刻な羞恥・不安を与える迷惑行為を取り締まるための規定として設けられています。
1.1 「痴漢行為等」の共通要素
- 「正当な理由がないのに」 行う点
- 「不安を覚えさせる」「羞恥させる」ような方法 である点
- 「公共の場所」や「公共の乗物」にいる人、あるいは特定場所にいる人を対象とする点
本条文は、1項から4項にわたって「具体的な違反行為」を列挙しており、それぞれ対象となる行為態様と適用場所が微妙に異なります。以下では、段落(項)ごとに詳細を見ていきます。
2. 第2条第1項:公共空間での痴漢・のぞき見・盗撮など
第2条第1項
何人も、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場、飲食店その他の公衆が出入りすることができる場所(以下「公共の場所」という。)又は公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)にいる人に対して、正当な理由がないのに、不安を覚えさせ、又は羞恥させるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。
2.1 規制対象となる場所
- 道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場、飲食店等:
不特定多数の人が自由に出入りできる場所。 - 公共の乗物:
汽車(列車)、電車、バス、船舶、航空機など多数が利用する交通手段。
要するに「公衆が利用・出入りしうる空間」が本項の規制対象となります。
2.2 違反行為の態様
- (1) 衣服等の上から、又は直接身体に触れる行為で卑わいなもの
- いわゆる「痴漢行為」。衣服越しであっても卑わいな意図で触れば違反となるし、直接肌に触れる行為は言うまでもなく違反。
- 「卑わい」とは性的な意味で猥褻性をもつ行為を指す。
- この際、「軽く当たる」程度かどうかは問題ではなく、「卑わいな意図での接触」が成立すれば規制対象となり得る。
- (2) 人が通常衣服等で隠している下着又は身体をのぞき見し、又は無断で撮影すること
- スカートや服の中を覗いたり、スマホカメラを足下に向けるなどの盗撮行為が該当。
- 「無断で」撮影する場合や、カメラを仕向ける行為は広く含まれる。
- (3) 前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動
- 性的なからかい、しつような卑わい発言等、公衆に強烈な不快や羞恥を与える発言行動が想定。
- 例えば、電車内などで他人に向かって性的内容を執ように話しかけたり、いやがらせ的な性的ジョークを繰り返すなども当てはまる。
- ただし、第3項に該当する住居内など「公衆が出入りする場所ではない空間」は別項で規制される場合があるため、本項ではあくまで「公共の場所・乗物」で行う卑わいな言動が対象。
2.3 全体の趣旨
- 一般に「公共空間での痴漢・のぞき・盗撮等」を厳しく禁止し、県民が安心して利用できるよう保護する狙い。
- 本項は「まさに被害者がいる公共空間で、その人に対し行われる卑わい行為」を主要な規制対象としている。
3. 第2条第2項:特定かつ多数が利用する空間での「のぞき見・盗撮」
第2条第2項
何人も、集会所、事務所、教室、タクシーその他の特定かつ多数の者が利用するような場所又は乗物にいる人に対し…(略)…第1項第2号に掲げる行為をしてはならない。
3.1 対象空間
- 例示:「集会所」「事務所」「教室」「タクシー」など「特定かつ多数の者」が利用する場所や乗物。
- 公共の場所・公共の乗物と重複しない場所・乗物が念頭。学校の教室や会社の事務所、社用バスやタクシー等が典型。
3.2 禁止行為
- **「第1項第2号に掲げる行為」**とは、「下着・身体をのぞき見、又は無断撮影する」行為。
- ここでは公共空間の規制から更に、半公共的・準公共的空間にいる人へののぞき見・盗撮を禁止。
- 例えば、職場で同僚のスカートの中を盗撮したり、教室で同級生の下着を覗く行為が該当。
3.3 意義
- 学校・会社・タクシー等でも、被害者が出やすい環境。公共の場との境界が曖昧な準公共空間に対する保護を強化。
- 「特定かつ多数の者」が利用することで、不特定多数ほどではないが、大勢が出入りする可能性がある場所を考慮した規定。
4. 第2条第3項:住居・浴場・更衣室等での盗撮・のぞき
第2条第3項
何人も、住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所…(略)…第1項第2号に掲げる行為(のぞき見・撮影)をしてはならない。
4.1 規制場所
- 「住居、浴場、更衣室、便所」など、人が服を脱いだり着替えたりする空間でプライバシー度が非常に高い場所。
- 「通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」とは、風呂場、トイレ、更衣ロッカー等が該当。
4.2 禁止される行為
- 「第1項第2号本文に規定するもの」とは「下着・身体をのぞき見・撮影(無断)」である。
- 結果として、住居(自宅)、銭湯、温泉、トイレ、ロッカー室等で、他人の裸や下着姿を盗撮、のぞき見、撮影準備する行為を禁止。
- 私的空間での「のぞき見」を条例で規制できるかはひとつの論点です。
4.3 趣旨
- これらはプライバシー性が高く、被害者への影響も大きい空間。条例上、一般の盗撮よりも悪質性が高い行為として厳しく規制することにより、被害を広く防止する意図がある。
5. 第2条第4項:撮影準備行為の規制
第2条第4項
何人も、正当な理由がないのに、前3項の場所又は乗物を使用する人の通常衣服等で隠している下着又は身体を無断で撮影する目的で、写真機…(略)…
5.1 趣旨・重点
- 「撮影をまだ完了していなくても、カメラ(写真機等)を向ける・設置する」段階で違反が成立する。
- 人の身体や下着を撮るためにカメラを仕掛ける・狙いを定めるなど、「行為の準備行為」も取り締まることができる条文。
- 被害の「未然防止」を狙いとし、撮影しようとするだけでも罰則を科せる点が重要。
5.2 規制対象
- 前3項(第1項~第3項)で規定される「公共の場所・乗物」「特定の場所・乗物」「住居・浴場等のプライバシー空間」いずれにも適用。
- たとえ撮影が未遂であっても、撮影準備をしていれば違反。
6. 「正当な理由がないのに」とは
第2条の各項では「正当な理由がないのに」との文言が挿入されています。これは以下の例外を想定します。
- 医療行為、救急措置など社会的に必要とされる行為として身体を取り扱う場合。
- 警備や防犯目的での撮影(ただし、被写体の下着を狙うなど過剰な撮影はNG)。
- 本人の同意がある正当な撮影(もちろん卑わいな撮影を本人が認める場合は理論上あるが、実際は極めて限定的)。
要するに「撮影や身体的接触が社会通念上適切」と見なせる状況でなければ、条例違反となりうるということです。
7. 第2条が想定する具体的違反例
- 公共の場所・乗物での痴漢
- 電車内で衣服越しに身体を触る、公共スペースで人の衣服をまくりあげる等。
- のぞき見・盗撮(公衆浴場内、トイレの隙間から、着替えを覗く、スカート内をスマホカメラで…等)
- 第1項・第2項・第3項で規制。
- 衣服を透かして撮影する機器の使用
- 特殊な赤外線カメラ等で下着を透かして撮る(これも第1項で十分取り締まれるが、特に悪質性が認められやすい)。
- 住居・更衣室など極めてプライバシー性の高い場所での盗撮
- 第3項や第4項で規制。
- カメラ設置・カメラを向ける段階(まだ撮っていない)でも違反
- 第4項が該当。
8. 違反時の罰則
- 同条例第14条に定めるところによれば、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科されうる(常習の場合は加重)。
- 「撮影が完了したか否か」を問わず、カメラを向けたり設置した段階で対象となり得るのが特色であり、被害を未然に防ぐ。
9. 条文の意義と留意点
- 痴漢行為や盗撮は、現代において深刻な社会問題。公共空間や公共乗物はもちろん、職場や自宅など準公共・プライベート空間でも起こりうるため、条例が幅広くカバーしている。
- 条文はやや細分化しており、行為態様ごとに分けて規定(1項~4項)している。これは想定しうる迷惑行為の網を漏れなくかける意図がある。
- 「正当な理由がないのに」を明記することで、社会通念上やむを得ない撮影や触れる行為(医療等)は除外。
- 常習犯には刑が重くなるため、再犯を強く抑止する仕組みともいえる。
- 第2条は「被害者に直接接触」または「身体を撮る」行為を中心に、強いプライバシー侵害や性的被害を防ぐのが目的となっている。
10. まとめ
新潟県迷惑行為等防止条例第2条は、痴漢行為やのぞき、盗撮など、被害者に対して強い羞恥や不安を与える迷惑行為を広く禁止する条項です。その特徴は、以下の通りです。
- 規制対象となる場所:
- 公共の場所・乗物(条文の定義による)
- 特定かつ多数が利用する場所・乗物(例:会社、学校、タクシー等)
- 住居、浴場、更衣室、便所等(プライバシーが高い空間)
- 禁止行為:
- 衣服の上・直接の身体への性的接触(痴漢)
- 下着や身体をのぞく、撮影する行為
- カメラを向ける・設置する段階も含む
- 透かし撮りなど技術的手法も等しく規制
- 目的:
- 公衆の性的プライバシー保護
- 公共空間や日常空間での安心確保
- 罰則:
- 条例第14条に基づき、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」(常習で加重)
- 違反行為が多面的なので、状況に応じて他項や刑法などの他法令も併せて適用されることも。
このように第2条は、「公共空間やプライベート空間での性的不快行為」を強力に取り締まる中心条文となっています。撮影・接触の未遂段階でも処罰があり得る点は被害者保護の観点から非常に大きな意義を持ち、県民が安心して生活・移動できる環境づくりを進めるうえで欠かせない規定と言えるでしょう。
新潟県迷惑行為等防止条例
https://www1.g-reiki.net/pref.niigata/reiki_honbun/e401RG00001104.html
(痴漢行為等の禁止)
第2条 何人も、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場、飲食店その他の公衆が出入りすることができる場所(以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公衆が利用することができる乗物(以下「公共の乗物」という。)にいる人に対して、正当な理由がないのに、不安を覚えさせ、又は羞恥させるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 衣服等の上から、又は直接身体に触れる行為で卑わいなもの
(2) 人が通常衣服等で隠している下着又は身体をのぞき見し、又は無断で撮影すること。ただし、第3項に該当するものを除く。
(3) 前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。ただし、第4項に該当するものを除く。
2 何人も、集会所、事務所、教室、タクシーその他の特定かつ多数の者が利用するような場所又は乗物にいる人に対して、正当な理由がないのに、不安を覚えさせ、又は羞恥させるような行為であって、前項第2号に掲げるものをしてはならない。
3 何人も、住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人に対して、正当な理由がないのに、不安を覚えさせ、又は羞恥させるような行為であって、第1項第2号本文に規定するものをしてはならない。
4 何人も、正当な理由がないのに、前3項の場所又は乗物を使用する人の通常衣服等で隠している下着又は身体を無断で撮影する目的で、写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器を向け、又は設置してはならない。
(平29条例29・一部改正)
【参考文献】※情報公開請求で入手した資料は一部マスキングあり
新潟県警察本部生活安全企画課「新潟県迷惑行為防止条例逐条解説(平成29年10月1日施行の一部改正部分)」(2017年10月)※第2条についてのみ取り寄せ(全30頁)