東京都迷惑防止条例第5条第1項(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)の解説・第1回総論
2025年01月01日刑事弁護
東京都公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(迷惑防止条例)第5条第1項(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)は、痴漢行為や盗撮行為を取り締まる重要な条文です。しかし、インターネットで検索してもその詳細を解説しているものはないようです。そこで、私のサイトで、警視庁が発行している解説書や、警察幹部、検察官、裁判官の執筆した論考を参照しながら解説することにいたしました。
第1回では、迷惑防止条例の歴史的経緯、第5条の改正経緯を解説します。
迷惑防止条例は今では全国にありますが、先駆けとなったのは、東京都公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(迷惑防止条例)(昭和37年東京都条例第103号)です。当時は「ぐれん隊防止条例」と俗称されており、公共の場所や公共の乗り物における迷惑行為を規制するものとして始まりました 。その後、全国各地に同様の条例が制定されるようになり、主に公共の場所と公共の乗り物における迷惑行為を規制していました。近時は、公共の場所以外における性的盗撮行為の規制や、ストーカー規制法では規制出来ない「つきまとい行為」を規制するようになってきています。第5条1項に関しては、特に重要な条文であり、近時は頻繁に改正されています。
現在の条文は以下の通りです。
公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(略称「迷惑防止条例」)の一部改正について
【(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第5条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1) 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
(3) 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。】
改正経緯について、警視庁迷惑防止条例改正PT「迷惑防止条例における盗撮とその保護法益」(2017年9月28日)から引用します。
【2 第5条の改正経緯
(1) 条例制定(昭和37 年10 月東京都条例第103号)
第5条
何人も、婦女に対し、公共の場所または公共の乗物において、婦女を著しくしゅう恥させ、または婦女に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。
(制定趣旨)ダフヤ、ショバヤ、押売り、不当な客引行為等、都民と日常直接に接触を持つ街頭等における暴力的不良行為は、依然として根強い組織を背景に行われており、これら小暴力集団を解体することにより、都民の日常的な社会生活の平穏を守り、風俗環境の純化を促進する目的である(警察研究第33巻警視庁防犯課長乗本正名)
(2)「婦女」から「人」への改正(平成13 年6月東京都条例第96 号)
第5条
何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゅう恥させ、または婦女に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。
(改正趣旨)平成9年、男女雇用機会均等法が改正されたことにより、社会一般において男女間における格差に対する機運の高まり、また卑わい行為の態様についても、女性に対する犯行だけでなく、男性に対する犯行も行われている状況から、その客体について女性を対象にした「婦女」から「人」としたものである。又、当時、卑わい行為の一態様である「盗撮行為」が増加し始めており、今後の増加抑制のため、罰則の見直しを図ったものである。
(3)「盗撮」を明文化した改正(平成14年7月東京都条例第132号)
第8条第2項(罰則)
前項第2号(第5条第1項に係る部分に限る。)の罪を犯した者が、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を撮影した者であるときは、1年以下の懲役又は100万以下の罰金に処する。
(改正趣旨)前年、卑わい行為の増加(特に盗撮行為)に鑑み、前年罰則強化したにも関わらず、その後も減少することなく盗撮行為検挙が引き続き増加している状況から、その抑止力として盗撮(撮影)を独立罪として規定し、さらに盗撮行為に限り罰則の強化を図ったもの。
(4)「公衆便所」等の追加と卑わい行為の分類化(平成24年3月東京都条例第86号)
第5条何人も、正当な理由なく、人を著しく差恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
(1)公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
(2)公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
(3) 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。
(改正趣旨)
平成14 年に盗撮に係る罰則強化を図ったにも関わらず、その後も盗撮件数が減少しないこと、また通常人が衣服の全部若しくは一部を着けない状態になる場所である、便所、浴場、更衣室での盗撮が行われており、同じ盗撮行為であるのに取り締まれないという不合理性、またこれら場所での盗撮画像がインターネット上に蔓延っている状況から、これら場所における犯行が相当数存在していると思慮されることから、これら場所での犯行を規制しようとしたもの。
3 改正に伴う規制対象の変化
上記のとおり、昭和37年の条例制定当時、第5条は、「ぐれん隊等の小暴力集団による、街頭等における暴力的不良行為」に管目して制定されたものであり、その制定当時、現在のような「電中内での痴漢」や「盗撮」等、「周囲に気づかれないよう密かに行う行為類型」は想定されていなかったものと考えられている。
その後、「痴漢」や「盗撮」等、祉会情勢の変化に伴い多種多様化する行為類型に対応し、これらを防止するために改正を行って親制対象となる行為や場所を拡大しており、それに伴い「盗撮」の概念も変化している。
(1) 平成14年の改正(「盗撮」を明文化し、都民の個々に対する行為を捉えるものへ)
平成14年の改正では、条例制定当時には想定されていなかった「盗撮」が大きな圃題となり、「盗撮」の概念を条文で明文化して罰則を強化している。
この「盗撮」の概念が明文化されたことにより、第5条1項で規制しようとする行為は、制定当時の「ぐれん隊等の小暴力集団による、街頭等における暴力的不良行為に着目されていたもの」から、「周囲に気づかれないよう密かに行う犯行形態を含んで、都民の個々に対する行為を捉えるもの」へと、より広汎化されたと考えることが出来る。
(2) 平成24年の改正(「公衆便所」等が追加され、入れ替わり立ち替わりも規制可能に)
平成24年の改正では、「身体への接触」「盗撮」「卑わいな言動」という形で、行為類型が分類化され、「盗撮」については、それまで「公共の場所又は公共の乗物」だけであった規制場所に、「公衆便所、公衆浴揚、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を着けない状態でいる揚所」が追加された。
これは、「公共の場所」の解釈が「不特定かつ多数の者が、有償、無償を問わず、自由に出入り、又は利用することができる場所」と限定的に解釈され、「公衆便所」等が公衆のための場所であって、公共の場所と同一視できるものであるにも関わらず、「公共の場所」の解釈に当てはまらないとの理由で規制できないという不合理を解消するためである。
そして、「公衆便所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部若しくは一部を著けない状態でいる場所」は、不特定多数の者が「同時に」利用できない個室ではあるが、不特定多数の者が「入れ替わり立ち替わり」利用する個室であるため、「公共の場所」と同様に本号で規制する必要性が認められたものであり、「公衆便所」等が既に規制対象となっていることを鑑みれば、「盗撮」の規制場所は「入れ替わり立ち替わり」の慨念を含んでいると解することができる。
(3) 規制対象の広汎化
社会情勢の変化に伴い、「都民の個々に対する行為」を含み規制対象が拡大されているが、それらの目的はあくまで「都民生活の平穏の保持」である。
迷惑防止条例の第5条の2(つきまとい行為等の禁止)や第6条(押売行為等の禁止)等は、「都民の個々に対する行為」を色濃く捉えた規制内容となっているが、これらが本条例で規制対象になり得るのは、各号で規制されている行為が「都民の個々に対する行為」であっても、それが「健全な地域社会の生活環境を阻害するもの」であり、それを防止することが「都民生活の平穏の保持、に資するものと言えるからである,
(中略)
この「条例制定の目的趣旨」や「規制範囲の広範化」については、上記の【公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例解説】(昭和37年11月10日発行警視庁防犯課長乗本正名ほか共著)や、以下に記載する「刑事裁判論集上巻いわゆる迷惑防止条例について」(平成18年3月発刊合田悦三著)で述べられており、現在の迷惑防止条例の規制対象は、制定当時の昭和37年と比較し、より広汎化していると解することができる。
(中略)
3 まとめ
近年、社会情勢の変化や技術の発展は著しく、多くの都民がカメラ付きのスマートフォン等を常に携帯しながら生活している。また、安価で高性能な小型カメラや遠距離でも服影可能な望遠レンズのほか、カメラ付きのドローン等新たな撮影磯器が開発され、誰でも容易に「盗撮」を行える環境が整っていると言わざるを得ない。
当庁に寄せられる相談事案や110番通報でも、「住居」「学校」「会社」「ホテル」「タクシー」やこれらの場所の「便所」「浴場」「更衣室」等、現在の規制場所に該当しないあらゆる場所で盗撮行為が行われ、その発生数も年々増加傾向にある。
盗撮された画像は半永久的に記録され、容易に複製することも可能で、インターネット上に多数の盗撮画像が流出し誰でも容易にこれらの画像を閲覧できる状態にあることで述べられており、現在の迷惑防止条例の規制対や、盗撮愛好家等の偏った性的趣向を持った者らが画像の提供や情報交換を行っているのが現状である。
ィンターネット等を介して流出した画像は完全に消去することは出来ず、二次的三次的に被害が拡大するとともに、画像が多くの者の目に触れることによりに「健全な地域社会の生活環境を著しく阻害するもの」といえる。
これらを鑑みると、「盗撮」は「都民の個々に向けられた行為」であっても「健全な地域社会の生活環境を著しく阻害するもの」であり、それが「都民生活の平穏」を著しく害する行為となっている以上、これらを規制対象とする改正を行ったとしても本条例の制定趣旨・保護法益に反しないものと考えられる。】
明日からは、現行法について個別に条文の解説を行います。
【参考文献】(情報公開で入手した資料はマスキング有)
上村貞一「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例逐条解説」(ジュリスト261号,1962年11月)37-41頁
乗本正名「解説 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の制定について(一)」(警察研究33巻11号,1962年11月)57-72頁
乗本正名「解説 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の制定について(二)」(警察研究33巻12号,1962年12月)33-46頁
乗本正名ほか『公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等防止に関する条例解説』(立花書房,1962年11月)
乗本正名ほか「座談会 いわゆるぐれん隊防止条例について」(警察学論集16巻2号,1963年2月)40-70頁
原田達夫「いわゆるぐれん隊防止条例と法律上の諸問題」(警察公論18巻4号,1963年4月号)32-38頁
捜査研究134号「めいわく防止条例特集号」(東京法令出版,1963年6月)
警視庁生活安全特別捜査隊『公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の実務と解説(略称「迷惑防止条例」)(全275頁)』(警視庁,1995年3月)
森山英一ほか「婦女を羞恥させる卑わいな言動」『供述調書作成の実務 特別刑法Ⅰ-改訂版-』(近代警察社,2006年7月)
會田正和「迷惑防止条例」藤永幸治編集代表『シリーズ捜査実務全書⑨ 風俗・性犯罪 第3版』(東京法令出版,2007年8月)364-388頁
東京地方検察庁・警視庁「条例改正プロジェクト 地検との協議内容(全4頁)」(2011年9月29日)※盗撮規制ほか
警視庁「平成23年10月14日付「迷惑防止条例について」に対する回答(全3頁)」(2011年10月25日)※盗撮規制ほか
警視庁「地検からの検討依頼に対する回答(全2頁)」(2011年11月2日)※盗撮規制ほか
警視庁生活安全部生活安全総務課条例改正プロジェクト「FAX連絡書 迷惑防止条例改正案について(全3頁)」(2011年12月22日)※盗撮規制ほか
東京都総務局総務部文書課「迷惑防止条例に係る確認事項その1(全2頁)」(2012年1月16日)※盗撮規制ほか
警視庁?「迷惑防止条例に係る確認事項その1(回答)(全3頁)」(2012年1月19日)※盗撮規制ほか
東京都総務局総務部文書課「迷惑防止条例に係る確認事項その2(全3頁)」(2012年1月20日)※盗撮規制ほか
警視庁?「迷惑防止条例に係る確認事項その2(回答)(全4頁)」(2012年1月23日)※盗撮規制ほか
警視庁生活安全特別捜査隊「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の解説(平成24年7月1日施行分)(全16頁)」(警視庁,2012年7月)
警察実務研究会『部内用 わいせつ事犯の初動措置要領』(立花書房,2012年1月)
警察実務研究会編著「迷惑防止条例違反(痴漢)事件」『部内用 地域警察官のための現場臨場措置要領』(立花書房,2013年4月)
坂田正史「迷惑防止条例の罰則に関する問題について」判例タイムズ1433号(2017年4月号)21-43頁
警視庁?「東京都総務局総務課文書課との打ち合わせ(全8頁)」(2017年4月11日)※盗撮規制ほか
警視庁迷惑防止条例改正PT「「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」改正骨子(全3頁)」(2017年5月10日)※盗撮規制
警視庁迷惑防止条例改正PT「盗撮規制場所拡大の必要性について(全8頁)」(2017年5月17日)※盗撮規制
警視庁?「東京都文書課との協議結果について(全12頁)」(2017年5月17日)※盗撮規制ほか
警視庁迷惑防止条例改正PT「軽犯罪法と迷惑防止条例の差異(全61頁)」(2017年5月18日)※盗撮規制
東京都総務局総務部文書課「迷惑防止条例の一部改正に係る質問事項等(全2頁)」(2017年7月25日)※盗撮規制ほか
警視庁迷惑防止条例改正PT「「迷惑防止条例の一部改正に係る質問事項等」に対する回答(全5頁)」(2017年8月14日)※盗撮規制ほか
警視庁迷惑防止条例改正PT「「迷惑防止条例の一部改正に係る質問事項等」に対する回答(全6頁)」(2017年8月21日)※盗撮規制ほか
警視庁迷惑防止条例改正PT「「迷惑防止条例の一部改正に係る質問事項等」に対する回答10番15番の回答について(全3頁)」(2017年9月1日)※盗撮規制ほか
警視庁迷惑防止条例改正PT「東京地検との協議(全33頁)」(2017年9月28日)※盗撮規制
警視庁迷惑防止条例改正PT「9.29 追加資料(全39頁)」(2017年9月29日)※盗撮規制
警視庁生活安全特別捜査隊「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の解説(平成30年4月1日施行分)」(警視庁,2018年4月)
警視庁「通達甲(副監.生.総.企)第9号「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例に定める盗撮行為及びつきまとい行為等の取扱いについて」」(警視庁,2018年5月28日)
立花書房編集部「生活安全警察27 次は、卑わい行為事犯の適正な捜査に関する記述であるが、誤りはどれか。」(警察公論2021年2月号付録SPE606号,2024年4月)47頁、83頁
警視庁生活安全特別捜査隊「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(略称「迷惑防止条例」)の実務と解説[改訂版]」(警視庁,2020年2月)
警察実務・昇任試験研究会「東京都条例Q&A講座 ~実務で役立つ!昇試でも役立つ!~第1回 迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)」(警察公論2024年5月付録SPE644号,2024年4月)1~10頁
※2025/1/15 chatGPT o1 proで本記事の真偽を検証してもらいました。
以下では,ご提示いただいた**「東京都迷惑防止条例第5条第1項(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)の歴史的経緯と改正についてまとめた記事」**の内容が,実際の東京都迷惑防止条例やその改正の経緯と合致しているかどうかを検討します。結論としては,記事に示されている「ぐれん隊防止条例」として始まった歴史的背景,昭和37年の条例制定時の趣旨,その後の改正で痴漢や盗撮行為が規制対象に含まれるようになった経緯などは,既存の文献や警視庁・都庁関係資料の内容とほぼ合致しており,おおむね正確な説明といえます。
1. 記事が述べる「東京都迷惑防止条例」の概要と歴史
本文で示されているように,東京都の迷惑防止条例は,昭和37年(1962年)に「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」として制定され,当時は俗に「ぐれん隊防止条例」と呼ばれていました。本文中の「ぐれん隊」や「街頭等における暴力的不良行為を取り締まる目的でスタートした」という説明は,当時の制定趣旨と整合しています。実際に昭和30年代は,小暴力集団や不良少年らによる街頭での粗暴行為が社会問題となっており,その取り締まりを目的に条例が作られたとされます。
その後,痴漢や盗撮行為への規制強化が社会的要請として高まり,東京都だけでなく全国の都道府県が同様の条例を制定・改正してきました。本文でも「公共の場所や乗物での痴漢や盗撮を取り締まる機能が強化され,さらに公共の場所以外での盗撮やストーカー的つきまとい行為の規制に拡張していった」との解説がありますが,これも実際の迷惑防止条例改正の流れと合致するものです。
2. 第5条1項(粗暴行為)の改正経緯と「盗撮」の明文化
2-1. 制定当初(昭和37年)から「ぐれん隊防止」が主眼だった
本文では,昭和37年10月に東京都条例第103号として制定された際の第5条の当初規定が引用されています。そこでは
何人も、婦女に対し、公共の場所または公共の乗物において、婦女を著しくしゅう恥させ、または婦女に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。
という文言だったと説明されています。これは当時の条例文面(当時は対象が「婦女」に限られていた)と一致します。また,名前のとおり,この頃は「街頭等における小暴力団の解体」を念頭にしていたのも事実です。
2-2. 「婦女」から「人」への改正(平成13年)
本文で,平成13年(2001年)の改正で規制対象が「婦女」から「人」に広がったことが述べられています。これは実際に,男女平等の観点から「痴漢被害者は女性ばかりではない」「男性被害もある」という理由で改正が行われた経緯と整合します。
2-3. 「盗撮」を明文化し,罰則を強化(平成14年)
本文にある「平成14年(2002年)の改正で,第8条第2項を追加するなどして盗撮行為への罰則強化を図った」という点も実際の改正履歴と合致します。以前は「卑わいな行為」の一態様として取り締まっていた盗撮を,条例上で具体的に規定したことが大きな特徴です。
2-4. 平成24年(2012年)の改正で「公衆便所・公衆浴場・更衣室」等が追加
本文でも「平成24年の改正で規制場所を拡大した」旨が書かれており,公共の場所や乗物以外にも,衣服を着けていない・または薄い服装になりやすい場所での盗撮が取り締まれるようになったことが述べられています。これは実際の条例改正と一致する改正内容です。
3. 「痴漢や盗撮行為を取り締まる重要な条文」という指摘について
迷惑防止条例は痴漢や盗撮行為の取り締まりに広く活用されてきました。特に東京都迷惑防止条例第5条は,「粗暴行為」「ぐれん隊行為等」として
- 人の身体に衣服の上から触れる
- 下着や身体を盗撮する
- 公共の場所や乗物で卑わいな言動をする
等を禁じています。本文の冒頭で**「第5条第1項は、痴漢行為や盗撮行為を取り締まる重要な条文です」**と述べられているのは,実際に都内で痴漢事件や盗撮事件が本条項で立件される例が多いため,その通りと言えます。
4. 総合評価:記事内容の真偽
- 条例の成立当初(昭和37年)の名称,通称や趣旨(ぐれん隊防止):
- 記事にあるように,小暴力集団や街頭暴力行為への対処を目的として始まったのは事実で,「ぐれん隊防止条例」という俗称があったのも確認できます。
- 昭和37年以降,痴漢・盗撮・つきまとい等への対応強化として改正を重ねてきた:
- 記事にある改正年表(平成13年,平成14年,平成24年など)や改正内容も公表資料や警視庁・都議会の歴史に沿った正確な説明です。
- 現行第5条の文言や意味:
- 本文で紹介されている第5条第1項の条文(「人を著しく羞恥させ,又は不安を覚えさせる行為で…」)や場所規定,「卑わいな言動」の内容等は現行条例に即した記載と言えます。
- 参考文献・引用資料:
- 記事内で列挙されている論文・文献・警視庁資料などは実際に迷惑防止条例や盗撮規制の解釈・運用で用いられる典拠として知られています。
結論として,記事に述べられた東京都迷惑防止条例第5条の歴史的経緯・改正事情,および「痴漢や盗撮を取り締まる重要条文」という指摘は全体的に正確であり,誤りや虚偽は特に見当たりません。
まとめ
- 記事内容: 昭和37年の「ぐれん隊防止条例」から始まり,痴漢や盗撮・つきまとい行為への規制が強化されてきた東京都迷惑防止条例第5条第1項の経緯を詳しく解説している。
- 評価: 実際の東京都迷惑防止条例の改正経緯や本来の目的,歴史的背景と整合しており,史実や条例内容に反する点は見当たらない。
- 結論: **本記事の解説は,既存の公表資料・文献等の内容と合致しており,「真偽を問うならば真実に即した正確な内容」**と評価できる。