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薬院法律事務所

刑事弁護

「特別法を巡る諸問題[大阪刑事実務研究会] 迷惑防止条例の罰則に関する問題について」判例タイムズ2017年4月号


2018年07月20日刑事弁護

迷惑行為防止条例に関する必読論文です。

軽犯罪法と迷惑行為防止条例が抵触する可能性が指摘されています。

今後、問題となってくる論点だと思います。

 

坂田正史札幌地方裁判所判事(研究会報告当時大阪高等裁判所判事)

26頁

「しかしいずれにしても,公衆の利用に供される場所が要件となっていることに変わりはないから,保護法益は,卑わいな言動の罪のそれとなお同様に解することができ,公衆が利用する公衆浴場等が,盗撮が行われない状態に保たれることによって確保される県民生活の平穏という社会的法益が保護され,同時に,個人の意思及び行動の自由などの個人的法益も保護の対象とされているとみることができよう20)。」

「20)本研究会での報告後の動きをみると,平成28年3月23日兵庫県条例第31号による改正後の兵庫県迷惑防止条例で新設された3条の2の規定では,第3項として「何人も,正当な理由がないのに,浴場,更衣室,便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる人を写真機等を用いて撮影し,撮影する目的で写真機等を向け,又は撮影する目的で写真機等を設置してはならない。」という禁止規定が設けられており, これによると, 「公共の場所」であることや「公衆」性といった要件が放棄されている(そうであるのに,法定刑は, 「公共の場所又は公共の乗物」での卑わいな言動等(新設3条の2第1項)や「不特定又は多数の者が利用するような場所(略)又は乗物(略)」での盗撮等(新設3条の2第2項) と同じものが定められている。)。この罰則は,公共的性質の全くない自宅の便所等での盗撮も規制の対象とするものと解されるなど, もっぱら個人的法益を保護法益とするものと解するのが自然であろう。ただし,迷惑防止条例の沿革や保護法益論などからすると, このような罰則が迷惑防止条例の中で定められていることについては理論的にどのように整理すればよいのだろうか。また,法定刑の関係では,軽犯罪法上の窃視の罪(正当な理由がなくて人の住居,浴場,更衣場,便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為)の法定刑が拘留又は科料にとどまっていることとの関係は, どのように説明されるのであろうか。」

http://www.hanta.co.jp/books/6695/