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薬院法律事務所

刑事弁護

論文紹介 坂田正史「迷惑防止条例の罰則に関する問題について」(判例タイムズ1433号21頁)


2018年07月20日刑事弁護

迷惑行為防止条例に関する必読論文ですので紹介します。

迷惑行為防止条例は特殊な条例で、過去は「ぐれん隊防止条例」と呼ばれていることもありました。東京における暴力的不良行為を取り締まることを目的として制定されましたが、当時は軽犯罪法が存在していたので、軽犯罪法を越える処罰をどうやって実現するのか激しい議論がなされていました。現在においてはその議論は知らない人が多くなっていますが、この当時の議論は今の迷惑行為防止条例の解釈にあたっても参考にされています。特に、何故迷惑行為防止条例が「公共の場所」における行為を規制しているのかということは、歴史的な経緯と憲法上の問題(憲法94条)がある論点であり、このことが私的空間において盗撮行為を規制できるかという論点につながりました。

保護法益や、「公共の場所」の解釈、県をまたいだ犯罪の場合の罪数の問題など、迷惑防止条例に関する論点を網羅的に検討しています。迷惑防止条例が制定された歴史的経緯にも踏み込んだ内容で、本論文を読まずに迷惑行為防止条例の事件に取り組むことはできないでしょう。

 

※日本国憲法

https://laws.e-gov.go.jp/law/321CONSTITUTION

第九十四条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

 

坂田正史「迷惑防止条例の罰則に関する問題について」(判例タイムズ1433号21頁)

26頁

「しかしいずれにしても,公衆の利用に供される場所が要件となっていることに変わりはないから,保護法益は,卑わいな言動の罪のそれとなお同様に解することができ,公衆が利用する公衆浴場等が,盗撮が行われない状態に保たれることによって確保される県民生活の平穏という社会的法益が保護され,同時に,個人の意思及び行動の自由などの個人的法益も保護の対象とされているとみることができよう20)。」

 

判例タイムズ 1433号 4月号 (2017年3月24日発売)

性的姿態等撮影罪(未遂)と、迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)、軽犯罪法違反(つきまとい)の分水嶺