盗撮してしまったが、自首をすべきかどうかという相談(盗撮、刑事弁護)
2022年09月21日刑事弁護
※相談事例はすべて架空のものです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
【相談】
Q、先日、駅のエスカレーターで女子高生の下着を盗撮してしまいました。相手は気がついていないかと思ったのですが、エスカレーターを登り切ったところで女子高生が振り返って私のことを見ていたようでした。誰かにメッセージを送っているような雰囲気もあり、盗撮がばれたのではないかと不安になっています。どうすべきでしょうか。
A、弁護士の面談相談を受けて、自首すべきか否か、自首するとしてどのような対応をすべきか検討すべきだと考えます。
【解説】
弁護士ドットコムで頻出の相談ですので、現時点での私の考え方を記載します。最近は、弁護士事務所の広告で、「逮捕されるかもしれない」「職場に来るかもしれない」などといって強く自首を勧める例も見られます。
私も、弁護士の都合だけでいえば、アドバイスは「自首しなさい」の一択だと思います。
その理由としては5つ考えられます。
1 自首しなかった場合に、後日発覚したら弁護士のアドバイスについて責任を問われる危険がある。
2 自首したことで処罰されても本人の責任であり、自首しなければ発覚しなかったかどうかはわからない。
3 自首を勧めておかないと、犯罪の隠蔽に加担したという社会的非難を浴びかねない(積極的に自首を阻止した場合には、犯人隠避罪といわれる危険すらある)。
4 自首同行で弁護士費用をもらえる。
5 (被害者不明の事案では)弁護士が何もしないでも不起訴(不送致)になることもある。
ただ、これらの理由は、あくまで弁護士の都合でしかないです。相談者本人の人生に寄り添ったものではありません。盗撮事件は、刑罰という意味では小さな事件ですが、交通事故などよりはるかに周囲の人からの信用を失わせるものですし、社会的地位を失わせることもあります。身元引受人となる家族の心にも深い傷を残します。様々な検討をした上で、自首をしないという決断をして、そのまま事件とならなかった人もいます。悪いことをしたのだから、とにかく自首すべきだという弁護士もいるようですが、私は自首しないという判断も責められないと思っています。自首すれば、確かに逮捕される可能性は減りますが、他に知られる可能性も出てきますし、人生のかかった判断になります。一方で、逮捕回避・実名報道回避の側面からは自首は大きな意味を持っています。特定される可能性の高い事案では、私も強く自首を勧めています。
盗撮事件は簡単な事件だと考えられる方もいますが、私はそうではないと思っています。性的姿態等撮影罪の解釈、迷惑行為防止条例の解釈について正確に把握した上で、捜査機関がどう動くのか、自首した場合にどういった社会的制裁がありえるのかといったことについても見通しを立てた上で検討しなければいけません。弁護士として出来ることは、経験や知識を踏まえて、考えられる可能性の大小について相談者に判断材料を示すことだけです。その上でどうするかは相談者自身で決めないといけないことです。家族と一緒に追い詰められた表情で来所される方もいます。なるべく親身に対応するように意識しています。
なお、自首の事案で弁護士が事情聴取に立ち会えるという記載をしているホームページも見かけましたが、私の経験上は認められたことはないです。弁護士が別室で話を聞かれたことはあります。もし、立ち会えるという説明をする弁護士がいたら、実際に立ち会えたことがあるのか確認をした方がいいでしょう。
刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045
(自首等)
第四十二条 罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。